優しさの連鎖

いじめの連鎖、って嫌な言葉ですよね。
だから私は、優しさの連鎖。

Kさんのこと

2018-02-12 09:08:46 | 日記
介護の仕事を始めたころ定年は60歳だった。
それが人手不足のためいつの間にか65歳になり、非常勤であれば70歳過ぎてもいいことになり、実際73歳で働いている仲間が二人いる。自分もいつまで働けばいいのか悩みどころだが、目標の60歳は過ぎたのであとは無理せず行こうかなと思っている。
そんな中でいくつか忘れられない思い出があるので書いておこうと思う。


Kさんのこと

十年も前の話になるが、自宅で最期を看取りたいという息子さんの希望で、一時入院していたkさんが退院し今まで通り自宅でヘルパーの介護を受けながら生活することになった。近所に住む息子さんが憎まれ口を利きながらもかいがいしく面倒を見ていた。

ある朝、デイサービスへ送り出しをするために訪問すると、何やら険悪な雰囲気・・・。
どうやら、親子喧嘩の最中だったらしい。

息子「そんなに死にたければ、死ねばいいべ!」
母 「死ねるんなら、とっとと死んでる!!」

この親子はどちらも竹を割ったような性格。
物の無い時代に育って、夫を戦争で亡くし、寝たきりになった舅姑の世話をし、小姑の面倒を見、苦労して三人の子供を育ててきたが、長男を小さい頃に事故で亡くしたという母。
そしてその母の苦労を一番わかってるのだが、自分のこと(何年にもわたる離婚問題がお金がらみでこじれている)やら介護のストレスやらで、いっぱいいっぱいになっている息子(次男)。

私にはその、身体が不自由になった高齢の母親の気持ちもわかるし、これまた若くはなくなった介護者である息子の気持ちもわかる。

「だって、親子だもの」
と私が、相田みつをさんばりの名言ならぬ迷言を言いながら間に割って入る。
「いいねぇ、忌憚なくぽんぽん言い合えるなんて」
普段は親子漫才のようなその掛け合いを面白おかしく聞いている私だが、さすがにこの場はまずいだろ。

母 「何か言うとすぐ怒るんだから!物も言えない!こんな身体になって情けない、ほんとうに・・」
息子「ひとこと言うと、死にたいだの死んだ方がましだの、とっとと死ねばいいべ、くそばばぁ」
私 「あ~、はいはい、今日のところは引き分けね。デイの送迎車が来る前に着替えてもらうからね~」

なんだかすごく茶化しているように聞こえるかもしれないけれど、実はこの人たちの喧嘩言葉は、ここでは表現できないくらいもっとすさまじいのである。若いころ荒くれた人夫を何十人も使って商売をやってきた親子だから。初めて耳にする人はびっくりするかもしれない。
でも私には、その言葉の陰にある優しさがちゃんと見えるのだ。なんだかんだ言ってもやっぱり似たもの親子なんですね 。

そしてその数年後Kさんは息子さんに看取られて自宅で最期を迎えることができた。





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