優しさの連鎖

いじめの連鎖、って嫌な言葉ですよね。
だから私は、優しさの連鎖。

本当の孤独

2017-08-28 16:59:35 | 日記
彼がまだ大学生の頃からだったから、もう10年以上になる。
あるサイトを通じてメールをくれるようになったのは彼の心が荒んで周囲の人と打ち解けず、恩師や両親を恨んでいたころだった。
カウンセラーでもないのに私にその都度メールをくれた。多いときは日に何度も。
もちろん本当のカウンセリングを受けたりしたこともあったそうだが、私に聞いてもらう方がいいから止めたと言っていた。

自分の居場所がない。孤独だ。寂しい。
そう彼は言い続けた。

あれから10年にもなるんだなぁ。と驚いている。

今の彼は専門の知識を生かした職場で仲間からも一目置かれている。
彼の深い知識が必要とされ喜ばれているようだ。

メールの数は少なくなったが今でも時々近況報告をしてくれる。
職場の仲間に恵まれている。
営利追及の仕事ではないので残業もない。
子供からお年寄りまで喜んでもらえる。


居場所ができたね。
私は喜んだ。

けれども彼は今でも
「寂しい」
「孤独だ」
という言葉を繰り返す。

彼には本当の「寂しさ」や「孤独」はまだわからない。


昨日仕事で訪れた高齢の男性。
その人は1年前に妻が亡くなりしばらく一人で頑張ってみたが、寂しくてたまらずケアハウスに入居したそうだ。
ホールに出れば他の入居者と話はできる。困ったことがあれば職員に相談できる。
でも寂しさは募るばかりだと言っていた。
そして、一人になってこんなに寂しいものなら長生きなんてするもんじゃないな…と言っていたので私ははっとした。
私が仕事の決められた1時間で話し相手をしてあげたところでその寂しさは無くなるものではないのだが、その人は帰り際何度もありがとうと言ってくれた。

人間は孤独な生き物だ。
寂しさを纏って、それでも生きる。


2017-08-20 10:19:17 | 日記

父は生前、趣味で水彩画を描いていた。

絵を描き始めたころ、完成するたびに家族に見せていたので母や妹と酷評していたのを覚えている。
「構図が変」
「遠近感がない」
「ガラスの透明感が出ていない」
「樹木や草の色が人工的で自然な感じがしない」等々…
父はそんなひどい言われように屈することなく描き続けた。

私が家を建てたときにはお祝いに額に入れた花の絵をくれた。それは(立派な額のせいもあって)なかなかいい感じだったので玄関に飾った。お客さんに「いい絵ですね」と褒められたことが何度かあった。

父が亡くなってから整理した物を見たら、書き溜めた絵が沢山出てきた。
それはもう私たちが酷評していたころの絵とは違って、玄人はだしともいえるような作品となっていた。
父の名前のサインなんかもしてあって、作品が完成したときに画家の気分でも味わっていたのかもしれないなと、ちょっぴり微笑ましくなった。

そういえば、父の描いた絵は主に花の絵で、それから風景画が多かった。
絵が上手いとか下手とかいう以前に私も絵を描くなら美しい対象の方がいいと思っている。

ところがある絵画展を観に行った時不思議に思った事がある。多くの画家(アマチュアだったりセミプロだったり)が題材に選んでいるのが、一般的に決して美しいとは言えないような物だったのだ。例えば朽ちている木材だったり、萎れかかった花だったり、食べかけて放置された果物だったり、しわくちゃな老人だったりと。確かにその皴の一本一本が深く刻まれた顔はまるでその人の人生をすべて写し取ったようにリアルに迫ってくる。ということは作者が描こうとしたテーマを観る側に訴えるくらいすばらしいということは理解できる。ただ、私はそういった絵を観たいとは思わない。

父の描いた絵は咲き誇る花、可憐な花、のどかな田園風景、木漏れ日の林…、どれも美しい。
当時酷評はしたけど、その後こんなに上手になっていたんだ。結局私は父の絵を褒めたことがなかったかもしれないなと、今にして思う。


恐れ入りました

2017-08-02 17:55:25 | 日記
去年、意を決してして水着を買った。
この年になると水着売り場に行く事も抵抗があり、第一に体型も気になり、かなり恥ずかしいのでもう何年も前から水着売り場の前を行ったり来たりしていたのだが、今の水着は優れもので、恥ずかしい部分を上手い具合にカバーしてくれているではないか。これなら何とかなると何年越しの希望がやっと叶って水着を買うことができたのだった。

そして去年から頑張ってプールに通おうと思ったが結局4回しか行けなかった。
値段の分は使わないと損だし、今年は頑張ろうと思っていたのだが、すっかり忘れていてスタートが7月末になってしまった。
リゾート施設のプールは混雑するし、大きなプールは敷居が高いので、私が利用するのは中高年のためのスポーツセンターの中にあるプールだ。
プールと言っても泳ぐのが半分、歩くのが半分といったところで、利用している人たちも大体そんな感じで私にとってもちょうどいい。
でもその中でも本格的な人が何人かいる。
今日は更衣室で、「あ~、気持ちよかった。泳ぐとすっきりしますね」と声をかけてくれた人がいた。私が
「ここの利用は長いんですか?」と尋ねたら随分来ているとのことだった。話を聞くと
「ここに泳ぎ方を習いに来て、自分は今82歳よ」と言うではないか。週三回泳いで、毎日1万歩歩くのだという。たまにはテニスもやるし、歩いた距離をパソコンの地図に入力して楽しんでいるとも言っていた。
そして私に
「若者はこれからだね」
と言うのでポカンとしてしまった。まず、若者では無いし、もし若者だったとしてもそれだけの運動している人はなかなかいないと思う。
そしてその人は
「私は82歳お姉さん、あなたも頑張りなさいよ」
と言って帰って行った。