優しさの連鎖

いじめの連鎖、って嫌な言葉ですよね。
だから私は、優しさの連鎖。

私はネタバレOKだけど友人はNOです

2021-06-23 10:19:39 | 日記
知人が「瀬尾まいこ」のファンなので次々に本を買って、読み終わると貸してくれる。そして私が読み終わるともう一人の友人へと回されるのだが、昨日その友人が「『その扉をたたく音』読み終わった!面白かった~」と言うので感想を述べ合った。

「あのおばあさんの言葉、泣けてきたよね。年老いて記憶も定かでなくなる、って身につまされるよね~」
「宮路くんがお葬式に行かないって言ったのを、渡部君が僕を一人で行かせないで、って言うのよね。ジーンとくるよね~」
そしてその友人「渡部君の思い人がまさかあの先生だったとはね~」
私もそこは驚いたので、うんうんと同意。
「でもさぁ、渡部君の中学の時の先生だよね。ってことは年の差何歳よ」
「…10歳近く?」
するとその友人
「…ってことは、そうか、私にも希望があるってことか(笑)」

友人はこの春パートナーと別れたのだが、なんとなく男女の関係って男性の年齢が上のほうを想像してしまいがちだけど必ずしもそうとは限らないわけだ。
友人より年上だと高齢者の中から選ぶことになるのでそれはちょっと…。だけど10歳下を想定したらまだ40代50代とお付き合いできるということだ。彼女はバリバリ仕事をしていて年齢より若く見える。
まあ、彼女も冗談で言ったのだろうけど私も「そうだよ、頑張って」と笑った。

「その扉をたたく音」 渡部君は介護士になったんだね

2021-06-12 11:55:16 | 日記
グリーン・デイというバンド、知らなかったのでアレクサで聞いてみた。
曲は「ウェイク ミー アップ ホウェン セプテンバー エンズ」
うん、なかなかいい曲。他の曲も聞いてみたら気に入ったのでシャッフル再生で流して聞く。あ、聞いたことあるのもあった。
それもそのはずグリーン・デイはグラミー賞の最優秀レコード賞を受賞したアメリカの有名なバンドで1987年に結成されている。

きっかけは瀬尾まいこの小説「その扉をたたく音」に登場する曲の中で唯一知らない曲だったから。そして主人公宮路くんが好きだというその曲は重要な意味があったから。

ひょんなことから毎週金曜日に老人ホームを訪れることになった29歳無職の宮路くんと入所者の91歳のおばあさんとの会話。
水木というおばあさんは、ミュージシャンを夢見て怠惰な生活を送っていた宮路くんをぼんくらと呼んでいた。

「ぼんくら、今日は九月の二十五日だ」
「ああ、そうだな。それが?」
「来週の金曜日は十月だ」
「まあそうなるな」
「だから九月は終わりってことだよ」
「早いな一年は」
「本当にお前はぼんくらだね。九月が終わるんだ。起きるときだろう」
「起きるとき?」
「ウェイク ミー アップ ホウェン セプテンバー エンズだ」

そして何の話をされているのかわからずきょとんとする宮路くんに水木ばあさんが
「もうここに来なくていい。ぼんくらも私も起きる時がやってきたんだから」と言う。

「ぼんくらがあの日歌った曲、あのあと聞いてみたんだよ。年寄りが洋楽を聴かないなんて偏見もいいところだな」

私がおおっ!と思ったのがここなんです。90歳過ぎても、そうよ、洋楽だろうがパンクだろうが、何聴いたっていいのよね。
グリーン・デイはパンクバンドとしては史上初のグラミー賞の最高賞「最優秀レコード賞」を獲得し、パンク史において重要な地位に位置づけられる そうだ。この曲はバラード調の曲だけど、おばあさんになってもパンク聞いたっていいんだよね。

水木おばあさんはこの曲を引き合いにして宮路くんに伝えたかったのだろう。もう無邪気でいるのは終わりだ。起きる時なんだ。

瀬尾まいこさんの小説は会話文が軽妙だ。どんな人物が登場してもそのひととなりが会話を通して伝わってくる。投げやりな言い方だけど本当はとっても優しい人だとか、とぼけた風な言い方だけど繊細な心の持ち主だとか。そして最後にはあったかい気持ちになれる。実はこの小説にはもう一人の主人公がいる。
この本は友人が
「渡部君が介護の仕事してるんだよ」
と言って貸してくれたものだ。
前作の「あと少し、もう少し」では、吹奏楽部でサックスを吹いていた渡部君が駅伝大会に駆り出される話が書かれていたが、この作品では介護士として働く渡部君が描かれている。
中学生の渡部君が(その頃もクールだったけど)大人になって介護の現場で働く姿に感無量だった。