優しさの連鎖

いじめの連鎖、って嫌な言葉ですよね。
だから私は、優しさの連鎖。

「銀河鉄道の父」について ⑴ 

2018-02-06 15:56:26 | 日記
2017年(下半期)直木賞 門井慶喜「銀河鉄道の父」を読む。


作者の門井慶喜さんは全く存じ上げない方だったが、賢治の父を描いているとあらばもうこれは読まなければならない。
ちょっと特異な文体ではあったが、それがまた時代の雰囲気を醸し出している。

賢治作品には必ずと言っていいほど巻末に年譜が付されているし賢治研究者は数多く、えらい大学の先生だけではなく素人のファンによる解説も数多ある。そのようなものを目にして賢治の妹トシや父政次郎 のイメージも私なりにあったわけだが、この本を読んで意外に思ったことやそうだったのかと納得したことがあった。

まず意外だったのは、賢治が6歳の時赤痢に罹り大きな病院へ入院することになるのだが、父政次郎が周りの反対を押し切って「看護婦ごときに任せられぬ」と隔離病棟で泊まり込んで付き添いをしたこと。親だから心配なのは分かるが明治時代、一家の長たる男がである。

  (こんなのが出せるか)
  と内心びっくりするような優しい声で、
  「よしよし、いい子だ。何にも心配ない。私がずっと見ていてやる」

と政次郎が言うと賢治が

  「ありがとがんす」

と答える場面があるが、実際そんな会話が為されたのかは確かめることができないが、普段は男なら弱音を吐くなと言いながら(父親ならだれでもそうしつけてきたと思うが)家の仕事(質屋)を投げ打って看病したのだから想像に難くない。
しかも眠れないでいる賢治に歌を歌ってやるという場面もある。

その父の看病もあって賢治は回復し元気になったのだが、案の定その政次郎が今度は病気になったのだ。政次郎の父親が見舞いに来て「赤痢が伝染した」というのを本人はあくまで赤痢ではなく腸カタルだと言い張ったようだが。そして、賢治が元気になってよかったという政次郎に、その父喜助が言った言葉

「お前は、父でありすぎる」

ぐっときましたね…
銀河鉄道の父はその言葉に尽くされるのではないかと思った。