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書体銘と作者銘問題、その2

2021-09-01 12:45:18 | 文章

9月1日(水)、曇り。

先に問題提起した「書体銘と作者銘問題」について、3人の方からコメントをいただきました。

それぞれ私の考えと大きな隔たりは無く、さぞかしと思います。
そこで先ず触れておきたいこととして、「書体銘」や「作者銘」は、
駒にとって必ずしも必須ではない、ということです。
自虐を含めて言うならば、商業主義がもたらしたものであるということ。
商業主義が希薄であった時代、具体的には400年前の水無瀬駒。特に水無瀬兼成作の駒には、作者銘はおろか、ご自分の筆跡で書いた駒だし、書体銘も書き記す必要性も無かったわけです。
「作者銘」が記されるようになったのは、兼成さんの次の時代以降であり、そのころから商業主義が派生して、江戸時代後期、あるいは明治時代からは商業主義ありきの時代になり、今日に至っているわけです。
近年は、服やショーツなどの服飾品に、これ見よがしのごとく「ブランド名」を見せびらかせている例が多くみられますが、これは悪趣味な最たる商業主義であります。

ところで、それぞれの方がおっしゃっているように、駒の作者は駒文字のオリジナル者にリスペクトして書体銘を上位の方に使ってもらい、一方の作者銘はへりくだって下位者に、という思いがあると思います。
そこで具体的に、それらの銘を「王将・玉将」のどちらに入れるかですが、ここで、ややこしい問題にぶち当たります。

現在のタイトル戦などでは、上位者は「王将」の駒。下位者が「玉将」の駒を持つのが慣習化されて、それが当たり前のようになっています。
であれば「王将に書体銘」を、「玉将に作者銘」を入れるのが当然なわけですが、果たして「王将」が上位者が持つことについて、かねてから、私は疑義を抱いています。

その理由の一つは、歴史的に見て「王将」は比較的新しい種類の駒であり、それ以前は「双玉」、すなわち、二枚とも「玉将」であったわけです。

そして、「玉」は唯一無二の天皇を意味し、「王」は何人もいる天皇の弟や子、孫、甥っ子。そして地方の豪族の長を指しています。
ですから、上位者がいわば新参者の「王将の駒」を持つなどというのは、理にかなってはいないということを申し上げねばなりません。その不思議な慣習が生まれたのはいつの頃かわかりませんが、おそらくは、明治時代ではなかったかと思う次第です。

とは言え、「長いモノには巻かれろ」という言葉もあり、「上位者が王将の駒」を持つ慣習が定着している現実を思うと、結局は「王将に書体銘」、「玉将には作者銘」を入れるケースが多いのではないかと思うのです。

 

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