熊澤良尊の将棋駒三昧

只今、生涯2冊目の本「駒と歩む」。只今、配本中。
駒に関心ある方、コメントでどうぞ。

目次

作品 文章 写真 販売品

続き3

2010-09-23 06:44:36 | 文章
3.Kimuさんへの質問の続きです。

kimuさんは「職人が中途半端なものを作ったとは思えない」とおっしゃっています。
その通りだと思います。
全く中途半端なものではありません。素晴らしいものです。

「それがどうして・・」と言うことなんでしょうが、「キリガネ」以外で作られている紋や唐草には、ほとんど痛みはありません。
出来上がって、少なくとも何十年か100年くらいはその状態が保たれていたということでしょう。
ところで、盤の上面、つまり升目のある面には、駒の傷跡が無数に残っています。
今、会所などでよく使われている盤にも細かな傷跡が無数についているものを見かけますが、この盤の傷跡は、少し掘れ痕がキツイいような気がします。
今度、写真に撮る機会があれば、接写しておこうと思っていますが、どうやらこれは、駒に関係があるようです。即ち、凹み傷は普通のツゲの駒による傷ではなく、はるかに硬く重い象牙駒が使われていた証拠ではないかと思うのです。

誰がこの盤で遊んだのかは分かりません。
婚礼道具は、所蔵者(お姫様)が亡くなったりすると、形見分けで近しい人に渡されると聞きます。あるいは生存中にも恩賞的に渡されることもよくあるそうです。
貰った方は、有り難く大事にしたのでしょうが、遊びの道具だから、実際に使われる事はあったわけで、この盤と駒はそのケースでしょう。
象牙の駒の文字が、あれだけすり減っているのですから、よく遊ばれた事は確かです。
飛車角や銀将の裏の文字が特に磨滅が激しいのは、周り将棋などではなく、いわゆる「将棋」そのものが指された証拠でもあります。
対して、「香車」の裏はまだしっかりと残っています。「香車」は余り使われなかったということで、ヘボ将棋だった。そう思われます。

この婚礼道具のデザインをプロデュースした人は、この盤のように毎日(?)ショッチュウ繰り返して使われる事は、余り頭には無かったのではないでしょうか。「キリガネ」が傷つきやすい事は知ってはいても、100年先150年先にこれほどになるとは思いつかなかったと思われます。
婚礼調度は大きい道具から、「化粧道具箱」など小さいものまで100点を超える貌大なものであり、重くて持つときに大きな力がかかる「盤」のことをどこまで考えたのか、ということです。

なお、「キリガネ」以外の「蒔絵」部分は、全くびくともしていません。
美しい当初の姿と輝きを保っています。
蛇足ながら、そのことを述べておきます。
普通、その婚礼調度は同じデザインで統一されるので、同じ模様の碁盤や、広蓋などがどこかで見つかる可能性もあるわけで、小生はそれを期待しています。

(長くなりました。この続きはまた書きます。ではまた)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

駒の写真集

リンク先はこちら」 http://blog.goo.ne.jp/photo/11726