花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

在原業平の末裔

2014-12-14 | 日記・エッセイ


かつて関西で言うところの「ええしのぼん」と同席させて頂いた時のことである。傍らで窺っていたら、一見傍若無人で空気を読まない。見方を変えれば、脇が甘くて隙だらけとも言える。当初、合わせ所を探れないままに途方に暮れていたが、こちらの言ったことを文字通りに受け取って下さり、こいつは口ではこう言っているがそうではあるまいという風に、痛くない腹をさぐってくるということがない。言うことにわざとらしく含みをもたせるという、屈折して勿体ぶった物言いもない。自らの内なる必然性に従って、真っ直ぐにぽんぽんと言葉がこちらに飛んでくる。つられて打ち返したラリーの応酬の後で、なるほどなあと心の内で唸ってしまっていた。相手の言うことを忖度して出方や対応をかえねばならぬというのは、もしかしたら私の様な下々の立場の者の発想と行動なのかもしれない。体貌閑麗、放縦不拘、略無才学、善作倭歌の在原業平とは、このような男でいらしたのかもと思った。

「自分が今何を求められていて何を果たすべきなのか」、「何が出来て何が出来ないか」が絶えず問われる世界では、その機能的価値に基づいて値踏みされた値札が何時も背中にペタペタと貼られる。そして機能的側面を要求されることが習い性となると、いつしか次第に心が荒んで青黒く萎縮してくる。色々と張り付けるのは人様の勝手である。しかし、張り付けられた値札など片端から破るのもまた、張られた人の勝手なのである。