花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

春江│花信

2024-02-22 | アート・文化


  春江夜泊   田能村竹田
沢国春風暮  沢国 春風の暮
山低水渺然  山低く 水渺然たり
卸帆深草際  帆を卸す 深草の際
打杙落花辺  杙(くい)を打つ 落花の辺
村店人看月  村店 人は月を看
隣舟客隔烟  隣舟 客は烟(もや)を隔つ
何処送更鼓  何処よりか更鼓(こうこ)を送る
餘声遠遠伝  餘声 遠遠として伝ふ

揖斐高編訳:「江戸漢詩選 下」, p170-172, 岩波書店, 2021

熊野│日本花図絵

2024-02-18 | アート・文化

い可尓世ん都能春も於し介れと馴しあつまの花や散留らん 熊野│尾形月耕「日本花圖繪」明治卅一年

由ありげ奈る言葉の種取り上げ見れば。いかにせん都の春も惜しけれど馴れし東の花や散るらん。げに道理なり哀れ奈り。はや\/暇取らするぞ東に下り候へ。なに御暇と候や。なか\/乃事とく\/下り給ふべし。あら嬉しや尊やな。これ観音乃御利生なり。
(「熊野」, 十四)

あれこそ八島の大臣殿(おほいどの、平宗盛)の当国の守でわたらせ給ひ候ひし時、召され参らせて御最愛にて候ひしが。老母を是に留めおき、頻りに暇を申せど給はらざりければ、ころはやよひのはじめなりけるに、
 いかにせむみやこの春も惜しけれどなれしあづまの花や散るらむ
と仕ッて、暇を給はッてくだりて候ひし、海道一の名人にて候へとぞ申しける。
(巻第十 海道下│「平家物語」, p285)

参考資料:
廿四世観世左近著:観世流謡本「熊野」, 檜書店, 2020
市古貞次校注・訳:日本古典文学全集「平家物語②」, 小学館, 2015