花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

何年ぶりかの国立国会図書館関西館

2023-11-23 | 日記・エッセイ


時折、曇天から降り来る驟雨に見舞われながら、先日、関西文化学術研究都市にある国立国会図書館関西館に参上した。入館時に荷物はロッカーに預け、館内に持ち込みを許された私物は全て透明の袋に入れるのが決まりである。準備万端、入館カードとともに透明袋を持参したのだが、何時からか貸し出し用のビニール袋が入り口に備えられていた。
 広大な館内は人の声一つ聞こえず静まり返っている。デジタル資料の閲覧や検索をする御方、蔵書を紐解いている御方など、皆々黙黙と作業に勤しんでおられる。天井までのガラス壁の向こうには雑木林の中庭が広がり樹々の梢が音もなく揺れている。まさに其の中に坐すれば百年の愁いを忘却す。その後、端末の一台に向かい、自宅から図書館経由のCAJであらかじめ選出した原著論文の閲覧を試みたところ、DL後の印刷申込過程でエラーが出て前に進めない。前回同様に係の御方に御教示を頂き、お蔭様で数十枚の印刷出力が恙なく完了した。
 来年五月末、第74回日本東洋医学会総会・学術講演会が地元畿内の大阪国際会議場で開催される。

早食好 中食飽 晚食少

2023-11-17 | 日記・エッセイ


先の新潟への学会旅行にて、数年ぶりにホテルの朝食バイキングを堪能した。その場で調理しテーブルまで運んでくださるオムレツあり、和食、洋食から中華にわたり提供される種類が豊富である。普段の朝食でこれだけの品数を揃えることは不可能で、何よりも上げ膳据え膳の贅沢な朝食が有難い。早朝開始のモーニングセミナーの為に早起きしたが、朝食会場入り口は既に長蛇の列であった。
 考えるまでもなく、食養生を含む生活養生の御高説を垂れる漢方医が自ら不養生では格好がつかない。その昔、中医学の講義で御教示頂いた食事に関する格言を改めて反芻した。

早食好、中食飽、晚食少。早食像公主、午食像国王、夜食像乞丐。
  朝は皇女の如く、量は多くなくとも良質で栄養あるものを食べる。
  昼は皇帝の如く、持粱歯肥で腹一杯になる様に食べる。
  夜は〇〇の如く、あたかも貧しい様に少量の食淡にとどめる。

  *《卒都婆小町》「これなる乞丐人、おことの腰かけたるは忝くも佛體色相の卒都婆にてはなきか。」


照葉を生ける・其三│花信

2023-11-11 | アート・文化


  山居 道元禅師 
在山漸覚山声色  山に在って漸く覚ゆ山の声色
結菓開花疑脱空  結菓開花脱空を疑う
且問以何爲本色  且問す何を以ってか本色と爲す
青黄赤白画図中  青黄赤白画図の中

大谷哲夫訳注:「道元「永平広録 真賛・自賛・偈頌」」, p300-302, 講談社, 2014

照葉を生ける・其二│花信

2023-11-07 | アート・文化


  題画
誰氏幽居愜我心  誰が氏の幽居ぞ 我が心に愜(かな)ふ
更能剪錦作長林  更に能く錦を剪りて長林と作す
欲携書剣相従去  書剣を携へて相従ひ去かんと欲すれば
小径紅埋莫可尋  小径 紅の埋めて尋ね可き莫(な)し

揖斐高訳注:東洋文庫「柏木如亭詩集2」, p237, 平凡社, 2017

新潟への学会旅行│日本めまい平衡医学会2023

2023-11-05 | 日記・エッセイ


 やまと には かの いかるが の おほてら に
 みほとけ たち の まちて いまさむ
    自註鹿鳴集・観仏三昧  會津八一

第82回日本めまい平衡医学会•学術講演会の隙間を縫って「會津八一記念館」「旧齋藤家別邸」に伺った。新潟市古町が御生誕地である會津八一先生の記念館では特別展、棟方志功生誕120年《會津八一と棟方志功 ―知性と感性―》が開催中であった。二十二歳年が離れた希代の両巨匠の御親交は昭和十年に遡り、終生続いたことを館内表示と図録を拝読して知った。巻頭のポスターに掲載された画は記念館所蔵双幅の内の普賢菩薩像で、棟方志功画伯の板画、秋艸道人先生の書からなる。
 次いで訪れた新潟の豪商、齋藤喜十郎家が風趣を尽くした別邸では、回遊式庭園を一望できる二階座敷で薄茶を一服頂いた。晩秋であるが楓樹の紅葉には未だ早く、緑豊かな砂防の松樹が池泉に影を落とす庭園をそぞろ歩きしていたら、何やら遠雷が轟き始めた。その後、別邸を辞して間もなく一天俄かにかき曇り土砂降りの雷雨となり、地理不案内の新潟市内を濡れ鼠で右往左往。ようやくの事で連絡がついた迎えのタクシーに拾って頂き、這々の体でホテルに帰った。北方文化博物館にも当初伺う予定であったが、今回はどうも御縁がないらしい。学会会場に出戻った後はまた大人しく殊勝に講演を拝聴した。





リアル学会とWEB学会

2023-11-04 | 日記・エッセイ


四年ぶりに遠方に出向きリアル学会に出席した。新幹線を乗り継ぎ約四時間、第82回日本めまい平衡医学会•学術講演会が開催の新潟市に到着した。本年のテーマは「めまい診療の標準化」である。COVID-19の影響で2020年以降、医学関係の学術集会、講演会や研究会はオンライン配信、オンデマンド配信のWEB学会となった。そして本年度5月の5類移行からは、従来通り現地参加も行われるハイブリット形式での開催が主流となり、今後もこの傾向は続くのであろう。homeを離れることなく参加可能で、専門医更新に必要な点数も取得できる、加えて自由な時間にオンデマンド配信で数多くの講演を拝聴できるWEB学会は、参加者にとって有難い利点が多い。一方、私の様な生粋のアナログ人間にとり、学術集会や研究会で拝聴する医学情報や知識をより有効に消化吸収し自家薬籠中のものとする上で、リアル学会ならではの臨場感が必要条件となることを今回のリアル参加で痛感した。
 振り返れば、《本棚・其一│紙本と電子書籍」》(2022/10/1)に記した様に、紙本それぞれの嵩、厚みや質感、纏う装丁の意匠など、読み手の五感にからむ強調因子を欠く電子書籍(これはあくまで私の感慨である)と紙本との対比に、WEB学会VSリアル学会は何処か似ている様に思えてならない。

霜降に頂いた花を生ける・続

2023-11-03 | アート・文化


  信宿
凄々秋雨裡  凄々たり秋雨の裡
信宿白衣家  信宿す 白衣の家
一衲与一鉢  一衲と一鉢と
蕭灑此生涯  蕭灑(しょうさい)たり 此の生涯

入谷義高訳注:東洋文庫「良寛詩集」, p232-233, 平凡社, 2006