令和三年大晦日│歳寒の松柏 2021-12-31 | 日記・エッセイ 寛平御時后の宮の歌合の歌 雪降りて年の暮れぬる時にこそ つひにもみぢぬ松も見えけれ 古今和歌集・巻第六 冬歌 読人しらず 本年賜りました御厚情に謹んで御礼申し上げます。 どうぞよいお年をお迎えください。
暗香│花便り 2021-12-29 | アート・文化 渓上 渓(たにがわ)の上(ほとり) 渓流浅碧浄無塵 渓流 浅碧 浄(きよ)くして塵無し 月照疎林始有痕 月は疎林を照らして始めて痕有り 一樹梅花成両樹 一樹の梅花 両樹と成る 岸頭水面正黄昏 岸頭 水面 正に黄昏(こうこん) 揖斐高訳注:東洋文庫「柏木如亭詩集1」, p197, 平凡社, 2017
渚にて 2021-12-12 | 日記・エッセイ 海岸に打ち寄せる波が作る水際の線は、引いては返しの繰り返しで絶え間なく変わりゆく。人との距離を測るということは、その水際を追い掛ける様に他ならない。為手と見所、芸人と観客、演者と聴衆等々、医療現場もまた然りである。海の深遠ではなく、渚にこそ人と人とが関わり合う有為転変の醍醐味がある。そして記憶の渚に跡を残すのは、寄せ波ではなく引き波である。
花に思う 2021-12-09 | 日記・エッセイ 素人も素人なりに時分の花がある筈だが、来た道を振り返ればついぞ花開いていたという記憶がない。それとも何処かで気が付かぬまま、ちっぽけな花のひとつくらいは咲いていたのだろうか。 ところで上手下手に関係なく、生け花作品には人柄が出る。いや人柄などという生半可なものではない。本人も意識しない稟賦や基調がもろに現れる。生けた花をお見せするということは裸形の自分を曝け出すことに他ならない。
時代の掌 2021-12-07 | 日記・エッセイ 御釈迦様ならぬ時代が提供するインフラの掌中で、今や物のみならず情報も便宜も求めるものが容易に入手可能となり、根拠なき万能感が止め処なく膨らみ続ける。しかし足元の基盤が何らかの事情で機能停止の状況に陥れば、ただ泣きわめくしか為す術がない。わたしに快適な環境を与えるのはあんたの役目と、今や他者から貪ることしか頭にない現代の我等人間は、この先何処に向かうのだろう。
山の景色│大和未生流の稽古 2021-12-04 | アート・文化 閑自訪高僧 閑自(のびやか)に高僧を訪ぬるに 烟山萬萬層 烟山 万万層 師親指歸路 師親しく帰路を指させば 月掛一輪燈 月 一輪の灯を掛く 入江義高注:中国詩人選集5「寒山」, p146, 岩波書店, 1990