杜若（かきつばた）・其十│花便り

宵々の雨に音なし杜若　　　　　落日庵句帳　蕪村　

山に添うて小舟漕ゆく若ば哉　　　そのしをり

杜若（かきつばた）・其九│花便り

　　　大坂にて、ある人のもとにて、
杜若語るも旅のひとつかな　　　笈の小文　芭蕉

杜若花あるうちは降れ曇れ　　　続別座敷　杉風



4月25日本日、東京、京都、大阪、兵庫の四都府県で三度目の緊急事態宣言が発令されました。
何卒くれぐれも御身をお大切になさって下さい。

杜若（かきつばた）・其八│花便り

柳河風俗詩　かきつばた│北原白秋：「抒情小曲集　思ひ出」復刻, 財団法人北原白秋生家保存会, 1997

杜若（かきつばた）・其七│花便り

　　十六年の四月五日に、独り平城の故宅に居りて作る歌六首の内
かきつはた　衣に摺り付け　ますらをの　着襲ひ猟する　月は来にけり
　　　　　万葉集・巻第十七　大伴宿禰家持

杜若（かきつばた）・其六│花便り

　　寄物陳思
かきつはた　左紀沢に生ふる　菅の根の　絶ゆとや君が　見えぬこのころ
　　　　　万葉集・巻第十二

杜若（かきつばた）・其五│花便り

　　問答
かきつはた　佐紀沼の菅を　笠に縫ひ　着む日を待つに　年ぞ経にける

おしてる　難波菅笠　置き古し　後は誰が着む　笠ならなくに　
　　　　　万葉集・巻第十一

杜若（かきつばた）・其四│花便り

　　正述心緒
かきつはた　丹つらふ妹を　いささめに　思ひ出でつつ　嘆きつるかも　
　　　　　万葉集・巻第十一　

杜若（かきつばた）・其三│花便り

　　　草に寄する
我のみや　かく恋すらむ　かきつはた　丹つらふ妹は　いかにかあるらむ　
　　　　　万葉集・巻第十

杜若（かきつばた）・其二│花便り

　　　花に寄する
住吉（すみのえ）の　浅沢小野の　かきつはた　衣に摺り付け　着む日知らずも　
　　　　　万葉集・巻第七　

杜若（かきつばた）・其一│花便り

　　　草に寄する
常ならぬ　人国山の　秋津野の　かきつはたをし　夢に見しかも
　　　　　万葉集・巻第七