花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

隠逸│花信

2023-05-31 | アート・文化


   山居雑詩 其二   仁科白谷
凡物之累  凡そ物の累は
害人之性  人の性を害す
忘其物累  其の物累(ぶつるい)を忘るるは
在於無営  営むこと無きに在り
維此茅舎  維れ此の茅舎
実適我情  実に我が情に適う
樵漁来往  樵漁(しょうぎょ) 来往し
水白山青  水白く 山青し

徳田武注:江戸漢詩選 第一巻「文人」, p207-209, 岩波書店, 1996

驟雨│花信

2023-05-28 | アート・文化


   瀬田橋看驟雨   北条霞亭
浮雲一片暗天台  浮雲一片 天台暗
颯々風生荻葦隈  颯々(さつさつ)として風は生ず 荻葦(てきい)の隈
植杖勢田橋上見  杖を植きて勢田の橋上より見れば
波頭忽躍万珠来  波頭 忽ち万珠を躍らせ来る

揖斐高編訳:「江戸漢詩選 下」, p212-222, 岩波書店, 2021

廃園│花信

2023-05-20 | アート・文化


  廃園   柏木如亭
草合幽蹊絶往還  草は幽蹊を合して 往還を絶す
空看花石作孱顔  空しく看る 花石の孱顔(せんがん)を作すを
千金費尽人何在  千金 費し尽くして 人 何にか在る
亦是人間万歳山  亦た是れ人間の万歳山(ばんざいさん)

揖斐高訳注:東洋文庫「柏木如亭詩集1」, p214-215, 平凡社, 2017

大和未生流研究会の花│2023年5月

2023-05-17 | アート・文化

研究主題:花菖蒲、前人株分の表現

  五首歌人々によませ侍りける時
  夏歌とてよみ侍りける
うちしめりあやめぞかをる時鳥 鳴くや五月の雨の夕暮
     新古今和歌集・巻第三 夏歌   摂政太政大臣

器のこと

2023-05-14 | 日記・エッセイ


花器という名を冠するも花を挿すことを拒む器がある。外に開いた口はあるが、挿した花を鎮めず浮き上がらせる器がある。そうかと思えば、拙い手に委ねられた花を恬然と容れて自ずから定まる器がある。
 “器の大きさ”の違いは外物の受容性にある。貪着で塞がれた、あるいは取捨の分別に縛られた器がある。反対に、来り寄るものを泰然と擁し、また其の去るを止めず、無尽の空(うろ)を蔵することも忘れた器がある。