A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ビッグバンドは、演奏の場を提供するClubと、そこに集まる熱いファンがあってからこそ長続きする・・・

2014-09-22 | MY FAVORITE ALBUM
WKRC-TV &The Blue Wisp Jazz Club Present The Blue Wisp Big Band of Cincinnati

「ビッグバンドのライブを毎日やるという新しいライブハウスができた」というニュースを聞いて、先日早速出かけてみた。

名前は、

TN Swing Jazz




場所は、東京TUCに近い神田岩本町。
ビルの地下に下りていくと、ジャズクラブとしては広い作り。ビッグバンドが入ってもゆったりとした雰囲気で聴ける店だ。

その日は、一部はグレンミラー、ベニーグッドマンナンバーといったスイング系の曲が中心、第二部はベイシーレパートリーを中心に、最後はハーマンのアップルハニーで締める。
その名のとおり、基本は4ビートのスイングするビッグバンドだった。

メンバーは、ベテランから新人までビッグバンドではお馴染みのメンバーばかり。とにかく毎日やるというのが凄い。毎日ということで、メンバーは日々入れ替わりがあるようだが、トラといわれるサブのメンバーも皆一流揃い。メンバーの違いを楽しむのも通のビッグバンドファンかも。

ライブハウスを丹念に探すと、毎週のようにどこかでビッグバンドは出演しているが、個々のバンドがライブハウスに出演するのは年に数回。予定が合わずその機会を逃すとなかなか聴く機会がないのが現実だ。
とにかく、気が向いた時にいつでも行けるというのが、ビッグバンドファンには嬉しいものだ。特に、このようなスイング系のビッグバンドには年配の根強いファンが多いので、早く認知されてファンの溜まり場になるといいと思う。

洋の東西を問わずビッグバンドはまずは演奏をする場の確保が大変なようだ。
サドメルの流れを汲むバンガードジャズオーケストラのように、毎週月曜日と定期的に出演する場所が決まると、ファンも訪れやすいが。
先日紹介した、スウェーデンのMonday Night Big Bandもそのひとつだ。スウェーデンのマルメという地方都市で毎週水曜日に出演し続けられるというのも、バンドのメンバー達の努力に加え、場を提供する店のオーナー、そして毎週演奏に駆けつけるファンが三位一体にならないと実現できない事だ。
このTN Swing Jazzもそのように育っていってほしい。

ジャズの歴史を辿ると、その歴史の中に必ず登場する都市がある。ニューオリンズに始まり、セントルイス、シカゴ、カンサスシティーそしてニューヨーク、ロス。デトロイトやフィラデルフィアも多くのジャズマンを生んだ都市として有名だ。

中西部にシンシナティーという都市がある。コンコルドレーベルに良く登場したギタリストのカルコリンズはこのシンシナティーの出身だが、他にはあまり聞いた事がない。ジャズとは少し縁遠い街に感じる。このコリンズもギターを弾く前は、ブルーグラスのマンドリンを弾いていたというので、このシンシナティーはジャズよりはカントリー&ウェスタンがポピュラーなのかもしれない。
歴史を辿れば、1920年代にはミシシッピー川の支流が流れるこの地は、海運、鉄道の要所であり、ミュージシャンの行き来も多く、それなりのジャズの拠点であったこともあったようだが。



1978年にこの地にBlue Wisp Jazz Clubというジャズクラブが生まれた。
カルコリンズも地元では、この場を活動拠点にしていたようだ。
このクラブに、専属のビッグバンドが生まれたのが1980年。地元のプレーヤー達を集めて新たに立ち上がった。
80年代と言えば、ロックの時代を過ぎ、フュージョンの全盛期、エレキも8ビートもやらないオーソドックスなビッグバンドは珍しかった。
このThe Blue Wisp Big BandはドラムのJohn Von OhlenとトランペットのDon Johnsonが他のメンバーに声がけをし、このクラブのオーナーPaul Wisbyの後押しで誕生した、基本は、良くスイングするピュアーなストレートジャズをやるビッグバンドだ。
こおアルバムではビルホルマンのアレンジもあるが、新人アレンジャーのCaroll DeCampが中心に、メンバー達のアレンジも加わる、すべて自分達で立ち上げたビッグバンドであった。

最初のデビュー時は、メンバー達に他の仕事の心配をさせないように一か月間ブッキングしてとにかく連日演奏を続けた。評判を聞きつけて地元シンシナティーだけでなく、近隣のインディアナポリス、コロンバス、ルイスビルなどからも続々ファンが駆けつけた。

そして、この立上げライブを終えて、2人のリーダーとオーナーのWisbyは「これからも毎週水曜日に続けてやろうと決断した」。
時代は替わり、オーナーのWisbyが亡くなり夫人のMarjean Wisbyが意志を継いで引き継ぐ。100人足らずのキャパだった小さいクラブからスタートしたが、場所も新しい場所に移る。そして、2006年今度はWisby夫人が亡くなると、借財の返済のためにこの店も売りに出たが、3人の篤志家が店を引き継ぎ、今でも店もビッグバンドも続いているという。



このアルバムの1曲目のBasietown USAはアレンジャーで参加したDeCampのオリジナル、いきなりアップテンポのベイシーサウンドで始まる。スタンダードナンバー中心の正統派ビッグバンドの演奏が続くが、一曲だけ、ジョーヘンダーソンのRecorda Meだけが少しモダンな感じのアレンジだ。

このバンドも、設立から30年以上、時代と共にメンバーも入れ替わったと思うが、地元のミュージシャン達が、熱いファンに支えられ伝統を支え続けている。それも演奏の場を提供している、Blue Wisp Jazz Clubがあっての事、神田に生まれたTN Swing Jazzも是非30年後まで続いてほしいものだ。

1. Basietown USA             Carroll DeCamp 4:46
2. Don’t Get Around Much Anymore      D.Ellington 4:53
3. Recorda- Me               Joe Henderson 5:10
4. Amyable                 Jack Willson 5:35
5. Walkin’                  Carpenter 7:25
6. I Remenber You       V.Schertzinger & J.Mercer 2:45
7. Sweet Lorraine          M.Parish & C.Burwell 3:37
8. Take The A Train            Billy Strayhorn 6:32

Don Johnson (tp)
Al Nori (tp)
Rick Savage (tp.flh)
Kevin Moore (tp)
Jeff Fokens (tp)
Paul Piller (tb)
Clarence Pawn (tb)
Lirk Sheilds (tb)
Gary Langhorst (btb)
Mike Andres (ss,as)
Jim Sherrick (as)
Joe Gaudio (ts)
Herb Aronoff (ts)
Larry Dickson (bs)
John Von Ohlen (ds)
Steve Schmidt (p)
Lynn Seeton (b)

Produced by Nick Bolton & Dan Johnson
Recording Engineer : Ric Probst
Recorded on May 12 and 19 1981 at OCA Recording Studio, Chincinnati, Ohio

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