A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

大事件が起こるとよくイベントが中止になるが、このアルバムもあわやの所で生まれなかったかも・・・

2016-03-13 | MY FAVORITE ALBUM
Larry Bunker Quartette Featuring Gary Burton Live at Sherry’s Manne-Hole



3月12日はチャーリーパーカーの命日だった。チャーリーパーカーの信奉者である澤田一範は、この日、そしてパーカーの誕生日である8月29日に合わせるように、その頃with stringsのライブを毎年行っている。パーカーの名アルバムwith Stringsのレパートリーを生で聴ける貴重なライブだ。
今年も11日に行われたが、残念ながら用事があって出向くことはできなかった。今年は3・11の大震災から5年目にあたる。5年前もそのライブは3月11日に行われた。外は電車も止まってライブどころでは無かったが、その日ライブは予定通り行われたという。

大きな事件が起こると、その影響で予定されていたイベントが中止になることは多々ある。
1963年11月22日、アメリカ大統領であったケネディが暗殺された。この影響で中止、延期されたイベントは全米中で数え切れないほどあったであろう。

この日、ハリウッドのジャズクラブ”Shelly’s Manne Hole”でも予定されていたライブ録音があった。出演を予定していたのは、ラリーバンカーのカルテット。デビュー間もないゲイリーバートンも参加していた。

ラリーバンカーとゲイリーバートンが出会ったのは、その年の夏ソルトレイクシティ―で行われたジャズクリニックであった。ゲストのジョージシアリングのグループに参加していたバートンの演奏を聴いた時が初めてであった。ラリーバンカーはドラムだけでなく、ヴァイブの演奏も得意だ。スタジオワークではマルチパーカッショニストとして活躍していた。同じ楽器を弾く者として、プレーぶりを目の当たりにして、バートンのテクニック、そしてコンセプトも深く印象付けられた。20歳そこそこで、ここまでやるとはといった感じか?・・・。その後すぐに、バートンのアルバム"Something’s Coming”に参加し、実際に演奏することで更に手応えを感じた。

数か月後に2人はロスで再会を果たす。バートンはシアリングのグループを離れたばかりであった。バンカーは早速バートンとの演奏の機会を設けた。
3年前にハリウッドに誕生したシェリーズマンホールは、週末のオーナーのグループ、そしてロスを訪れるビッグネームのスケジュールを除けば、他の日は様々な地元のミュージシャンのライブに解放されていた。バンカーは早速、バートンを加えたカルテットを編成しブッキングした。

ピアノには若手マイクウォフォード。その頃はまだサンディエゴにいた。ロスでの活動を本格化させたばかりで、まだまだ無名の新人であった。そしてベースにはこれも若手のボブウェストを起用。バンカーはゲイリーのヴァイブを中心に、新しい感覚の若手3人のプレーを引き出そうと考えた。

何日か一緒にプレーするたびに呼吸も合い熱を帯びてくる3人との演奏であったが、ライブの日程も残り数日になった時、「これは残して置かなければ」という衝動に駆られた。
早速、エンジニアに録音の段取りを手配した。機器のセッティング終え、スタッフもアサインし、後は夜の演奏を待つだけという時にケネディ事件が起きた。このニュースが流れた時、誰もがプレーをする気にはなれなかったという。

しかし、バンカーの「この演奏をどうしても残して置きたい」という情熱が消えた訳ではなかった。その晩、演奏を強行したのか、それとも翌日仕切り直しをしたのかは定かではないが、残された少ないチャンスの間で無事このグループの演奏は録音された。

といっても、バンカーの自主録音のようなもの、すぐに陽の目を見ることはなかった。
1967年になってからVaultというマイナーレーベルからリリースされたが、目立つことなく話題になる事もなかった。その後、他の未発表曲も発掘され再リリースされたようだが、ラリーバンカーの唯一ともいえるリーダーアルバムがこのような形で発掘されるのは、ゲイリーバートンの若い頃のプレーを聴けるだけでなく意味があることだ。

この頃、東海岸では若手の小遣い欲しさもあって数多くのセッションが録音された。一方、西海岸ではストレートアヘッドなジャズは、演奏する機会もアルバムを制作する機会も減っていた。お金には不自由していないスタジオミュージシャンは、このような本気モードの演奏は自ら録音に残して置くことが多かったようだ。シェリーマンテリーギブスルイベルソンなどのこのような音源には素晴らしい演奏が多い。

そして、前回のシェリーマンのアルバム紹介でたまたまエンジニアのWally Heiderの名前を出したが、この録音のセッティングをしたのはそのハイダーであった。昨今未発表ライブの音源が数多くアルバム化されるが、放送局による録音を除けば大部分アマチュア録音の域を出ない。中身の演奏の記録としての価値は高くとも、音を楽しみむという点では物足りないものが多い。

ところがこれはプライベート録音と言っても、ハイダーの手掛けた録音。この名演をハイダーの名録音で聴けるというのも価値があるアルバムだと思う。シェリーズマンホールでのライブアルバムというのも何枚かあるが、ジャケットの写真でもこれはシェリーズマンホールでのライブ録音の代表作といってもいいだろう。

この頃ラリーバンカーはビルエバンスのトリオのメンバーでもあった。このビルエバンスのトリオでもシェリーズマンホールに出演していた。その影響もあるのか、このカルテットもエバンスの影響を受けたプレーを繰り広げている。ゲイリーバートンとビルエバンという組み合わせも面白そうだが、そんなアルバムは無かったような・・・。

1. I Love You                   Cole Porter 7:31
2. Sweet Rain                  Mike Gibbs 4;46
3. Waltz For A Lovely Wife              Phil Woods 4:35
4. Panther Pause                  Mike Gibbs 5:07
5. All The Things You Are    O. Harmmerstein / Jerome Kern 7:32
6. My Foolish Heart        Ned Washington / Victor Young 5:04
7. Israel                      John Carisi 6:59

Gary Burton (vib)
Larry Bunker (ds)
Mike Wofford (p)
Bob West (b)

Produced by Larry Bunker
Recorded live at The Sherry’s Manne Hole, November 1963

Live at Shelly's Manne-Hole
クリエーター情報なし
Essential Media Afw

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