A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

出会いがあれば別れがある・・・必ずいつかは訪れるものだ。

2008-01-30 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
THE THAD JONES MEL LEWIS QUARTET

誰もが長い人生の中では何度も経験していることではある。
しかし、同じ想いで日々を伴にして長年連れ添ったパートナーとの別れには格別な意味がある。その関係が、夫婦であれ、仕事仲間であれ、遊び友達であろうと。
一方が死を迎えた時のようにその理由が明確な場合、そのショックは大きいものの、双方ともにその別れには納得がいく。そして、お互いに過ごした日々が良き思い出としていつまでも記憶に留まるものである。例え実際にはその中が楽しいことばかりではなく、いくつかの諍いがあろうとも。

しかし、一方的に別れを告げ、遠くへ去って行ってしまった時、残され相手は一瞬「なぜ?」と当惑する。もちろんその直前、お互い一緒にいることに対して何かストレスを感じているのであれば、それはそれで納得がいくものではあるが。

サド・ジョーンズとメル・ルイスの2人。
二人の何度かの出会いの中で、一緒にバンドを作ろうと誓ったのは20年近く前。お互いいくつかの経緯を経て、夢が叶って一緒にオーケストラを立ち上げることになった。お披露目をしたのは、1966年2月7日のことであった
それからすでに10年の月日が経っていた。週一回のリハーサルバンドでスタートしたオーケストラは、レギュラーバンドの様相を呈して世界中を股にかけて活躍をするようになっていた。
10年間のバンドの変遷を集大成したようなアルバムも続けざまに発表した。特にサドはその中でアレンジャーとしても頂点を極めたような作品をいくつも提供していた。
絶頂期を迎えたオーケストラであったが、一方のリーダーのサドが突然バンドを去る。
長年連れ添ったメルに一言も理由を告げずに。その理由は最後までサドの口からは語られなかったといわれている。

多分このアルバムは2人で一緒に録音した最後のアルバムだと思う。
それは、オーケストラではなく2人が加わったカルテットでの演奏であった。
2人はオーケストラの録音の合間にも小編成のセッションを時々行っていた。そこにはオーケストラのメンバーの何人かを誘うことが多かったが、2人が加わったサドのワンホーンのカルテットの演奏の録音はこれが始めてだ。

オーケストラでは、アレンジャーとしての役割が徐々に大きくなり、サドのプレーはだんだん少なくなっていた。しかし、このアルバムはサドのコルネットプレーヤーとしての側面に再度スポットライトを当てたものだ。曲は一曲だけサドのオリジナルだが、他の3曲は有名なスタンダード。完全にプレー中心であることが明らかである。

マイアミのラウンジでの演奏。オーケストラの旗揚げ時と同様、ライブでの演奏だ。
サド・メルの原点であり良さはライブのステージにある。私の持論だが、このアルバムもそのライブでの演奏。
そして、「ここで繰り広げられる演奏は?」というと、忘れられようとしていたサド・メルのオーケストラの良さの原点の演奏が4人で始まる。
プレーヤー同士の位置づけが対等であり、各人の演奏自体の自由度が高い。
4人のお互いを意識したそれぞれのインプロビゼーションの絡み合いが実に見事だ。
4ビートにのったスタンダードのワンホーンアルバムとはまったく性格が異なる演奏だ。決してフリーではないが、それぞれの自由度と相互の関連のバランスを微妙にとりながらの演奏が続く。

結果として、これが本当に2人のラストアルバムであるならば、見事に2人揃ってサド・メルオーケストラの出発点に戻ってきたということになる。それも、編曲に凝った一面ではなく、ソリストに対して自由度の高い演奏が行える場としての原点に。

曲や他の2人には特に触れる必要もないであろう。曲や後の2人はサドとメルの最後の会話に必要な話材であったのだ。もちろん、2人の会話にぴったりの話材であることは間違いないが、この会話の中に「なぜ別れなければならなかったのか」の答えは見当たらない。

1. But Not For Me
2. This Ca’nt Be Love
3. Autumn Leaves
4. What Is This Things

Thad Jones (Cor)
Mel Lewis (ds)
Harold Danko (p)
Rufus Reid (b)

Recorded at the Airliner Lounge,Maiami,Florida,September 24,1977


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