A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

いきなり集められて、何の段取りも行われていないセッションとなると・・・

2016-01-24 | PEPPER ADAMS
Be-Bop ? / Pepper Adams & Barry Altschul

現役時代は毎日のように会議があった。自分が議長をすることもあれば、参加しなくても裏方で段取りをすることも。もちろんメンバーとして参加する時も。会議の主旨と目的をよく理解して積極的に発言を求められることがあるかと思えば、代理でとにかく出てこいと言われて出席したこともある。いずれにしても、その会議の進行と結果に責任を負う場合はかなり気を遣ったものだ。
ジャズミュージシャンの場合も毎日同じメンバーで同じ曲を演奏するわけではない。毎日行われるセッションがどのようなものなのかは事前に確認して参加はしていると思うが、中には・・・・・?

ペッパーアダムスは、ソロプレヤーとして独立してからもよくヨーロッパを訪れていた。サドメルから独立して3年目に入った1979年も年明けすぐにロンドンに飛ぶが、2月にはヘレンメリルとの共演アルバムを作るため一旦帰国する。
このメリルとのセッションは一ケ月以上をかけて、リハーサルも重ねて行われた。アダムスの関わったレコーディングとしては、念入りに作られた一枚だ。単に歌伴に参加した以上の意味があるが、その甲斐もあってかメリルのボーカルもアダムスのプレーもグラミー賞にノミネートできた。

ジャズは一発勝負、一期一会の楽しみがあるとはいえ、どのような場合でも呼吸を合わせることは大事。単純に回数だけではないとは思うが、いい演奏をするにはその呼吸合わせの機会や時間は惜しんではいけないということだろう。

そのレコーディングを終えた後も、ニューヨークとヨーロッパを行き来する生活を送ることになるが、6月21日にはこの年3度目の渡欧となり、翌日にロンドン経由でパリ入りした。
早速23日はパリでgigに参加したアダムスは、翌24日にレコーディングに招かれた。これは当初から予定されていたものではなく、アダムスがパリにいる事を知ったプロデューサーから急に声を掛けられたものであった。クレジットを見ると、Artistic managerとして、Gerald Terronesという名前がある。きっとこの人物がメンバー集めに一役買ったのであろう。

前日に参加したgigのリーダー、テナーのDebarbatと一緒に、気軽にサイドメンとして参加するつもりで行ったら、ビックリ。その日の主役であったトラムのアリトシュルもたまたまパリにいたので声が掛かったという寄せ集めセッションであった。
アダムスに言わせると、過去にあったブリグノラとのバリトンマッドネスのセッション同様、このレコーディングはレコード会社とプロデューサーの思いつきであったようだ。
したがって、レコーディングもアレンジはおろか曲も用意されていない状態でのジャムセッションとなった。

このアルバムのタイトルは「Be-Bop ?」となっている。これが何を意味するのか?
解説も何も無いアルバムなので真相は分からないが、これがプロデューサーからの唯一のお題であったのかもしれない。
結果的にアダムスと一緒にリーダー格となったバリーアルトシュルというと、自分はチックコリアのアルバム位しか知らないので、どちらかというとBopというよりもフリーなスタイルをイメージしてしまう。2人の共演も楽しみなセッションにはなったが。

取り敢えず、ガレスピーのWood’n Youからスタートする。アダムスがソロの先発となる。これがペースメーカーとなり、ソロも一回りしてとりあえず一曲が終わる。決してフリーな演奏ではなく、アダムスが得意とするバップスタイルとは少し色合いが違うが、時代に合ったストレートアヘッドな演奏でまずまず。

他のBopに相応しい曲が続くのかと思ったら、次はテナーのDebarbatの曲となる。全く知らない名前なので、キャリアを確認すると、テナー奏者だけなく、その後現代音楽の世界の作曲家でも活躍している。そんなDebarbatの曲なのでバップスタイルというよりモダンな感じの曲だが、曲想に合わせてテナーの演奏もモダンとなる。彼のソロが先行するが、続くアダムスのソロはとりあえずは流れに合わせるが、「どう吹けばいいのかな」と言った感じを受ける。

次はアリトシュルの曲。この曲でアルバムも作っていたようなので、彼としても十八番な曲を選んだのだろう。これはアリトシュルのペースにならざるを得ない。
そして、次はアダムスの曲の番となり、アダムスのオリジナルのJulianとなる。これは、以前にもレコーディングもしているし、いつもやっている曲なので、これはアダムスペースで。最後はアダムスの新曲となる。
結局、一曲目を除けば、各自のオリジナルを演奏しあった顔見世、自己紹介的な演奏だ。さてこれからウォーミングアップも終わって、これから本番という所で、このセッションは終わってアルバムとなった。

アダムスも、このようなセッションはライブでのジャムセッションであれば仕方がないが、「レコードに残すには演奏の内容を全くコントロールできないセッションであった」と言っている。
とはいうものの、演奏のレベルをそれなりに仕上げるのがアダムスの実力だが、このような演奏を、勝手にリーダーアルバムにされてしまうのは余計に腹が立つという。それなりに名の通ったアダムスなので、自分の名前を冠したアルバムがこのような作り方をされ世に出ることになるのには、プライドが許さないのだろう。多分名前だけを勝手に使われて、ギャラや印税もいい加減に仕切られていたのだと思う。

結局Be-Bop?は意味不明。
?をとって、徹底的にBe-Bopを意識したアルバムにすれば面白いアルバムになったと思う。
初顔合わせであっても、それなりの段取りを踏んで意識合わせは不可欠だということだろう。ブルーノートに駄作が少ない理由と、アルフレッドライオンのプロデュース力が優れていたのが良く分かる。

1. Wood’n You             Dizzy Gillespie 7:05
2. Neuffemps             Jean-Pierre Debarbat 11;04
3. You Can’t Name Your Own Tune       Barry Altschul 8:47
4. Julian                   Pepper Adams 4:45
5. Valse Celtique               Pepper Adams 5:02

Pepper Adams (bs)
Jean-Pierre Debarbat (ts)
Siegfried Kessler (p)
Jacqes Vidal (b)
Barry Altschul (ds)

Produced by Sebastien Bernard
Engineer : L.Payron
Recorded at Studio Ramses, Paris on June 24, 1979


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