A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ペッパーアダムスを相手に単なるガーシュインソングブックにならないところがヘレンメリルの凄い所・・・

2014-12-31 | PEPPER ADAMS


Chasin’ The Bird sings Gershwin / Helen Merrill

日本で一番人気があるジャズボーカリストは?というと、ひょっとするとヘレンメリルかもしれない。いわゆる本格派御三家(エラ、サラ、マクレー)と比較すると、あのハスキーでたよりない歌い方だが、それがかえって良いのかもしれない。
彼女は有名なクリフォードプラウンとのアルバムがそうであるように、有名ジャズプレーヤーとの共演アルバムも多い。いずれも、彼女の歌のバックを務めているというよりも、歌と一緒にプレーをしているといった感じだ。彼女の歌が楽器的なのかも。

今年も来日して、トランペットプレーヤーを日替わりで替えるという面白い企画のライブ予定があったが、残念ながら病気でキャンセルとなってしまった。ベニーゴルソン同様、クリフォードブラウンとの共演を私事として語れるミュジシャンも数少なくなったが、彼女もその一人だ。1930年生まれ(ペッパーアダムスと同い年であった)なので、今年で84歳。まだまだ、元気に活躍してもらいたいものだ。

彼女は、1960年代に結婚して日本に長く住んでいた時期がある。それもあって大の日本贔屓である。その後、ニューヨークで復帰をしたが、日本のトリオレーベルがアルバム制作を行っていた。その頃、60年代から70年代にかけての彼女のアルバムは、ピアニストのディックカッツと組んだものが多い。単なるボーカルアルバムというより、彼女も演奏者の一人としてのジャズアルバムを作るのには、このカッツが良き相談者であったのだろう。
このアルバムもその中の一枚となる。

このアルバムのテーマは、「メリルsingsガーシュイン」であるが、単なるガーシュインソングブックとはなっていない点がこのアルバムを特徴だ。それは、このアルバムタイトルの’Chasin’ The Bird”の意味するところでもある。

パーカーやガレスピーなどがビバップの全盛期にバップの名曲を多く生み出したが、それらはスタンダード曲といわれるミュージカルなどのヒット曲のコード進行に新たな曲を作ったものが多い。

このアルバムでは、メリルが歌うガーシュインの原曲に、バックがそれを元曲にしたジャズの有名曲をバックで演奏するというチャレンジをしている。この大役を務めたのがペッパーアダムスであった。パーカーの好んだ曲というとアルトサックスが良さそうだが、ハスキーなメリルの歌にはアダムスのバリトンの低音が良く似合う。それに、加えてバップスタイルでゴリゴリ吹くとなるというとアダムスはこの企画には適任あった。この試みの2曲以外でもアダムスの出番は多く、ソロで他の曲のメロディーを引用することも多い。

このアルバムの制作にあたっては録音の前に、録音当日以外にもリハーサルが一か月前から何日も行われてた。かなり曲の構成にも配慮すべき点が多かったということだろう。
肝心のアダムスは、実は1月の始めからにヨーロッパに出掛けていた。2月6日この録音の為にニューヨークに戻り、3月9日の最後の録音が終わると、またヨーロッパに旅立った。

実は、このアルバムが先日紹介したアダムスのアルバム”Reflectory”がグラミー賞にノミネートされた翌年ノミネートされたヘレンメリルのアルバムだった。
アダムスのこのアルバムへの関わり方も、単なるバックのバンドに加わったというのではなく、完全にメリルの共演者であった。アダムスはこのアルバムがノミネートされた時、メリルのボーカルと共に自分のプレーも選ばれた二重の喜びを感じていただろう。

残念ながらこのアルバムも、最終選考ではエラのアルバムに敗れ、アダムスのプレーも Bill Evans - I Will Say Goodbyeに敗れたが、メリルのファンが多い日本であったら、多分このアルバムが選ばれていただろう。メリルの特徴が生かされ、バックとのコラボレーションも上手く計算され、それが上手く噛み合ったジャズボーカルアルバムだと思う。



1. It Ain’t Necessarily So
2. Embraceable You (Cuasimodo)
3. I Can’t Be Bothered Now
4. Summertime
5. I Got Rhythm (Casin’ The Bird)
6. I Love You, Porgy
7. My One And Only Love
8. Someone To Watch Over Me

Helen Merrill (vol)
Pepper Adams (bs)
Dick Katz (p)
Joe Puma (g)
Rufus Reid (b)
Mel Lewis (ds)

Produced by Spicewood Enterprises
Musical Direction by Helen Merrill & Dick Katz
Recording Engineer : Paul Goodman
Recorded at RCA Studio, NYC, March 6 & 9 1979

チェイジン・ザ・バード(HQCD)
Helen Merrill
SOLID

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