A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ペッパーアダムス亡き後は、皆で「ペッパー」を演じ合い・・・

2015-10-21 | PEPPER ADAMS
More Pepper / Denny Christianson Big Band

自分は辛い食べ物は嫌いではない。本場四川の麻婆豆腐でもかなりの辛口で大丈夫だ。辛さに加えて花椒の痺れが加わると尚更たまらない。中華で唐辛子が丸ごと入っている料理でもいつもは残すことなく平らげる。一度、鶏肉の唐辛子炒めを頼んだら、鶏肉と赤唐辛子の量が半々位であった。流石これには閉口したが・・。
赤い唐辛子は見た目にも食べる前に準備ができるが、始末に悪いには緑の小さい唐辛子。タイ料理などに時々入っているが、これは不意を突かれて一瞬怯むこともある。いずれにしても、自分にとっては、美味しい料理に香辛料は不可欠だ。

ビッグバンドにおけるバリサク、ベーストロンボーンはある種の香辛料。これが無いときっと味気ないサウンドになると思う。いつもは隠し味のように低音域を支え、時にはアクセントを付けたり、一人皆と違ったフレーズを歩むことが多いが、たまには図太いサウンドのソロで脚光を浴びることがある。

バリトン一本の人生を送ったペッパーアダムスは、その名の通りどのような編成でも味わい深い「香辛料役」を果たしていた。しかし、いつもの脇役から一度メインとして起用されるとなると、他を圧倒するゴリゴリサウンドで主役の座に座る。香辛料が料理のメインの食材になるような感じだ。どちらかというと目立たないバリトンサウンドであるが、このペッパーサウンドは多くの後輩たちに引き継がれていった。



ペッパーアダムスの最後のアルバムは、Denny Christiansonのビッグバンドへのゲストとして参加したアルバム。全編ビッグバンドをバックにしてアダムスをフィーチャーし、ミンガスに因んだ組曲を演奏するという意欲的なアルバムだった。このアルバムは以前記事にしたので、このアルバムが生まれた経緯はそちらを参照して欲しい。

この”Suite Mingus”は、アダムスが亡くなる前の8月に無事世に出ることができた。
リリース直後の9月10日にアダムスはこの世を去ってしまったが、アダムスの最後の演奏活動で行動を供にすることが多かったクリスチャンセンは、当然のようにアダムスに対して追悼のアルバムを考えた。

最後に一緒に録音したセッションにはまだアルバムに収められていない曲もあった。それらを世に出すだけでは物足りなかったのか、残されたメンバー達でアダムスに捧げる曲を新たに加えて一枚のアルバムに仕上げた。

アダムスの加わった曲は、前のアルバムの選曲から漏れた残りだが、それなりの訳アリの曲もあった。
例えば、一曲目のArlequinはデニーがアダムスとの共演の為に書き下ろした曲だが、これはエレキベースがガンガン効いた8ビート。アダムスがこの手の曲は珍しいと思ったが、案の定取り敢えずは演奏したものの、アダムスの「8ビートは好きじゃない」の一言で没になった曲だった。
アップテンポのAutumn Leavesや、Alf Clausenのアレンジの残り曲Captain Perfectでのアダムスのプレーは決して悪くはない。

そして、アダムス抜きで新たに録音した曲が2曲。
一曲は、エリントンナンバーのSophisticated Lady.。これはアダムスの録音の時にも用意された曲だった。しかし、その時アダムスはアレンジが気に入らなく没となった。アレンジにも手が加えられ、クリスチャンセンのバンドのバリトン奏者Jean Fréchetteがアダムスに代わって演奏している。

そして、もう一曲がこのアルバムのハイライト。アルバムのタイトル曲でもあるクリスチャンセンが新たな書いた曲More Pepperだ。
ここでは、バンドのサックス奏者が全員バリトンに持ち替えてそれぞれのバリトンの技を披露する。重厚なバリトン5本のアンサンブルにそれぞれのソロが続く。サックスセクションが皆揃って、皆にとっては師ともいえるペッパーアダムスを悼み、More Pepperの競演となった。

1. Arlequin                 Danny Christianson 7:45
2. Sophisticated Lady            Ellington,Oarish,Mills 6:44
3. Autumn Leaves             Kosma,Prevert,Mercer 7:28
4. Captain Perfect                  Alf Clausen 6:28
5. More Pepper                Denny Christian 8:22
6. Osage Autumn                Kim Richmond 6:38

Denny Christianson (tp,flh)
Pepper Adams (bs)  #1,3,4,6

Roger Walls  (tp)
Ron DiLauro  (tp)
Laflèche Doré  (tp)
Jocelyn Lapointe  (tp)
Patrice DuFour  (tb)
Muhammad Abdul Al-Khabyyr  (tb)
André Verreault  (tb)
Bob Ellis  (btb)
Richard Beaudet  (ts,cl.fl,bs)
Jean Lebrun  (ts,ss,fl,Piccolo,bs)
Patrick Vetier  (as,cl.fl,bs)
Joe Christie, Jr.  (as,ss,cl,fl,Piccolo,bs)
Jean Fréchette  (bs,bcl)
Kenny Alexander  (p)
Vic Angelillo  (b,eb)
Paul Picard  (per)
Richard Ring  (g)
Pierre Pilon  (ds)

Produced by Jim West, Denny Christianson, Ian Terry
Engineer : Ian Terry
Recorded on February 24 & 25, 1986 at Studio Victor, Montreal, Canada (#1,3,4,6)
& on May 3, 1987 at Studio Tempo (#2,5)

More Pepper
クリエーター情報なし
Justin Time Records

コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ポールゴンザルベスのテナー... | トップ | 天気と同じで、いい時もあれ... »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ヒロヤス)
2015-11-01 11:26:17
はじめまして。Pepper Adams を集め始めてまだ半年くらいですが、きっかけはあのすごい Joy Road というブログでした。バリトンサックスは何となく地味な、あまり話題にされない楽器ですし、ペッパーも昔から「幼稚園の校長先生みたいな顔をした人だなー。」と思っていた程度で、真面目に聞いたことはありませんでした。そして徐々に手持ちのレコードでペッパーの入っているものを聞き始めると、段々、この人はすげーと思うようになった次第です。
コルトレーンの Bahia というアルバムには、ペッパーとセシルペインが入ってますが、音が断然ペッパーが圧倒しています。これで、決まり。あとはとにかく片っ端から買っています。
他のバリトンサックス奏者も勿論買ってます。(ただしジェリーマリガン以外!)
結構いい人が沢山いますね。Cecil Payne, Sahib Shihab, Pepper が3巨頭でしょうか。
これからもブログを楽しみにしています!


返信する
Unknown (ヒロヤス)
2015-11-01 12:45:59
さきほど書いた中で、コルトレーンの Bahia ではなく、Dakar の間違いでした。失礼しました。
返信する
バリトンフリーク (YAN)
2015-11-02 10:09:56
ヒロヤスさん

はじめまして。
コメントありがとうございます。
バリトンファン、ペッパーアダムスファンが増えるのは嬉しいものです。

自分は、ジェリーマリガンでバリトンファンになりました。ペッパーアダムスは同じようにあまり意識していませんでしたが、サドジョーンズ・メルルイスオーケストラでの演奏を生で聴いて、好きになりました。

おっしゃるようにバリトンはあまりソロ楽器として登場することは少ないですが、ビッグバンドファンという事もあり、バリトンにはついつい耳が傾いてしまいます。

他のバリトンプレーヤーのアルバムも紹介するようにします。今後とも、よろしくお願いします。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。