A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

オールマイティープレーヤーが本当にやりたいことは何・・・?

2015-07-13 | CONCORD
A Beautiful Friendship / The Don Thompson Quartet

カナダ出身のジャズミュージシャンをあまり意識して聴いてこなかった。オスカーピーターソンやメイナードファーガソンなどの著名なミュージシャンは、本場アメリカの第一線で活躍し続けたので、カナダ出身と聞いても地続きのカナダはアメリカの一つの州のような感じを受けていた。それにプレーぶりも迫力満点、特にカナダらしさを感じる事も無かった。

コンコルドのアルバムを棚卸しているが、その中でカナダ出身のミュージシャンというと、テナーのフレイザーマクファーソンとか、エドビケットというギタリストが登場している。
そして、ペッパーアダムスの活動歴を追いかけていると、アダムスは若い頃からモントリオールに良く出掛け、地元のミュージシャン達と交友を深めていたのが分かる。そういえばアダムスのラストレコーディングも、モントリオールでダニークリスチャンビッグバンドとの共演であった。

そのカナダ出身のミュージシャンの一人にベースのドントンプソンがいる。ベースだけでなく、ピアノやヴァイブも弾くマルチプレーヤーだ。
出身地のバンクーバーで演奏活動を始めたが、アメリカでのデビューはジョンハンディーのグループに加わってサンフランシスコを拠点に活動した時であった。ここで西海岸在住のミュージシャンと交友を広めることに。その時の縁がきっかけで、フランクロソリーノをカナダに招いて一緒にプレーすることもあった

その後、カナダに戻ったトンプソンは東海岸のトロントを拠点とし、地元のBourbon Street Jazz Clubのハウスベーシストを務めだ。そこでアメリカから訪れる多くのミュージシャンと共演する機会を得ることになる。
これがジムホールやポールデスモンドなどのグループに加わるきっかけになったようだが、共演したミュージシャンはメインストリーマーに加え、サラボーンのような歌手のバックや、スイング系のジェイマクシャンンやバディーテイトなどオールラウンドであった。

経歴を見る限り、このように色々な楽器を演奏するだけでなく、スタイルもオールマイティーでこなすミュージシャンであった。
このようなマルチな才能を持つ人間の本質は?何が一番やりたいのか?あるいは何が得意なのか? というと、器用な人ほどなかなか分からないのが世の常だが・・・・。

コンコルドのアルバムを辿ると、80年代の前半、そのトンプソンはジョージシアリングとコンビを組んでいた時期がある。シアリングがベースのブライアントーフとのコンビでグラミー賞を得たアルバムがあるが、その後釜としてのシアリンググループへの参加であった。
あくまでもメルトーメのヴォーカルとシアリングのピアノが主役とはいえ、デュオ編成では相方のベースの役割はかなり重要となるが、立派にグラミーコンビの後任としての役割を果たした

丁度その頃、コンコルドはミュージシャン自身のプロデュースによるアルバムを続けて何枚も作っている。此の所それらのアルバムを紹介しているが、それまでのコンコルドの味付けを全く感じさせない内容ばかりで、どれも興味を惹く内容だ。それらと同じように、このドントンプソンが自らリーダーとなり、自由にプロデュースしたアルバムがこのアルバムとなる。

その時トンプソンは何を考え、何に興味を持っていたか?の答えとなる内容であった。

まずは、メンバーが興味深い。
自らはベースがメインで世に知れ渡っていたが、このセッションにはもう一人ベースの名人、デイブホランドを加えている。そしてギターにはコンテンポラリー派のジョンアーバンクロンビーが加わる。ECMサウンドの代表選手の一人だ。ドラムにはワシントンローカルで活動していたというミシェルスミス。
メンバーから大体想像できるが、コンコルドでお馴染みの、ちょっと古さを感じる温かい4ビートが似合うサウンドではなく、いわゆるクールで研ぎ澄まされたサウンドだ。

ここでトンプソン自身がベースを弾いているのは5曲、後の3曲はピアノでの参加となる。
さらには、スタンダード曲に交えて自作曲が3曲。作曲家としての一面もアピールしている。
特に、その中のFor Scott La Faroではホランドとベースの共演を繰り広げている。メロディー楽器のベースとリズム楽器のベースを2人で弾き分けているのだが、これも面白いアプローチだ。まさにタイトル通り、スコットラファロがベースをリズム楽器から解放された先駆性を2人で称えるような演奏となっている。

トンプソンは今でもカナダのジャズ界の重鎮として活躍しているようだが、最近の演奏、アルバムは聴いていない。きっと何でも演奏できるトンプソンであっても、自分の音楽に対する拘りはいまでも持ち合わせているように思う。

このアルバムに参加したメンバー達との出会いは、数年前にバンフで行われたワークショップで一緒になったのかきっかけだそうだ。お祭りになりがちなジャズフェスフェスティバルや一夜限りのギグでの出会いとは違って、このような教育を目的としたワークショップでは自分の音楽観について意見を戦わせることも多いであろう。このような本音で語り合う場での出会いや付き合いの仲間達が、いざ自分の音楽を具現化しようという時には大事な友となるのかもしれない。

アルバムタイトルのビューティフルフレンドシップ。曲もいい曲だが、このような演奏ができる仲間との関係も、ミュージシャンにとってはビューティフルフレンドシップなのだろう。

1. Even Steven               John Aberncrombe 5:16
2. My One and Only Love       Robert Mellin / Guy Wood 6:30
3. Blues for Jim-San               Don Thompson 7;15
4. I've Never Been in Love Before         Frank Loesser 4:33
5. A Beautiful Friendship      Donald Kahn / Stanley Styne 5:58
6. For Scott la Faro               Don Thomson 5:06
7. Ease It                   Paul Chambers 4:14
8. Dreams                   Don Thompson 7:35

Don Thompson (b,p)
Jphn Abercrombie (g)
Dave Holland (b)
Michael Smith (ds)

Produced by Don Thompson
Recorded at Classic Sound Production New York City, January 1984
Recording Engineer : A.T.Michael MacDonald

Originally released on Concord CJ-243
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