火坂雅志作、『真田三代』を読んだ。この小説は文芸事務所三友社の配信により、2009年7月より534回にわたって、「信濃毎日新聞」、「新潟日報」、「東愛知新聞」、「東奥日報」、「上毛新聞」、「紀伊民報」、「宇部日報」、「秋北新聞」に順次掲載されたものを改稿し、2011年10月にNHK出版より刊行されたものである。火坂雅志は1956年新潟市生まれ、早稲田大学商学部卒業後「別冊歴史読本」副編集長をつとめた後、『花月奉行』で作家デビューしたとある。彼の作品では『天地人』、『壮身の夢』は読んだ記憶があるが、まださほど読み込んでいない作家のひとりである。『真田三代』については、連続して北方謙三の『水滸伝』を読んでいる中で、種市図書館が書籍整理に入ったため、しばらく借り出しが出来ない状況になってので、その合間に大野図書館から借りだしたものである。
真田は信州上田から上州吾妻郡、利根郡にかけて勢力をはっていたが、武田、上杉、北条などの大大名に囲まれ、生き残りのために知恵を絞って生きてきた一族である。関ヶ原では真田信幸が家康の率いる東軍に加わり、昌幸と次男幸村は西軍に加担した形になって、昌幸、幸村が九度山に流される有名なストーリーがある。大坂冬の陣、夏の陣で幸村が家康本陣にまで攻め込んで、大御所家康もあわやという場面を作り出しのも有名で、「真田日本一の兵(つわもの)」と称賛される。この小説は、さかのぼって隆幸の時代から話を進め、武田軍団の一員として領地を復活させ、大勢力のはざまで次々と主をかえながら、信濃から上州に侵攻していく。作者はあとがきで「この小説は、地方の誇りを描いた物語である」と述べている。真田一族の活躍した吾妻郡を流れる吾妻川が利根川に合流する渋川で生まれた私にとって、同じ地方の過去の人間としてわが地方の誇りを描いた小説に、共感を覚えている。過日、箕輪城で活躍した長野業政を描いた小説も読んだ。現在は旧南部藩の一角に住むとはいえ、上州人の気風は私の根底に流れている気がしてならない。やはりもう一度、池波正太郎の『真田太平記』を読みたいと思っている。