「食欲はあるの?」と家人の弟に訊かれ、私が頷き、「それはよかった」と義弟が笑顔になった。平凡な会話であるが、少し事情がある。義弟は2年前に食道癌の大手術を受けていて、それ以来、常に胸元が詰まっている感じがするという。つまり、空腹感を味わうということがなく、食事は時間で摂る(正午になったから昼食を、午後7時になったから夕食を、といったように)のだそうだ。私の大動脈流破裂は内臓(心臓)の病気ではなく血管の病だったから、術後10日目ぐらいから普通食の7割ほどを食べる程度の空腹感があった。その点、義弟は辛いだろうが、紙の救いはあって、それが酒だ。 義弟は徹底したワイン党であって、私と違って高級チーズの味もわかるから、素h区よくはなくとも至福の時間はあるわけだ。 「これ(味噌汁、焼肉、煮物など)、味が濃くないか?」と家人に訊いても、いつもと同じだと答えるばかりで、これは家人の味覚が変わったのではないことがわかる。 3主管の入院薄味生活で私の舌が変化したのか。 視力も衰えたのか、春(競馬の皐月賞、日本ダービー)までは老眼鏡だけで読めていた出馬表を見るのに、拡大鏡が必要になった。 それらは、後遺症ではなく、ただの老化なのだろうし、それ以前(それ以上)に私には、シンドい腰痛がある。そして、私にも、義弟同様に、酒が呑めるすばらしい夕方がある。
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