百貨店の広報部にいる長女は、地方への出張が少なくないが、帰宅すると、お世話になった方々に葉書でお礼状を書くのが習慣になっている。最近はこういうとき電話で済ませる人が多いだろうから、ハガキは印象に残ると思われ、つまりは少しの手間でポイントを上げている気がする。ちょっと世話になった人にでも必ず礼状を書くのは祖父も同じだった。昔だから封書がほとんどだった。もしかすると私を飛び越えて、祖父の遺伝子を長女が受け継いでいるのかもしれない。 5年前の8月24日の午前10時20分、私の胸の動脈瘤が破れた。激痛の中、なんとか電話機を取り、110番のボタンを押した。応答した方に、「119番と間違えたが、痛みで、もうかけ直す力がない。自分は鎌倉市笛田5丁目の…胸が…胸の中にカミソリの刃が粉々になって入っているような痛みが…救急車を…玄関には行けないので裏の部屋のガラス窓を破って入ってください…」というようなことを、痛い痛い!を繰り返しながら告げたようだ。「大丈夫ですか?すぐに救急車を手配します。おうちの方はいらっしゃらないんですね」…その辺で私の意識は薄れ、あとのことは以前詳述したので省略するが、生還してから、110番の恩人にお礼をしたいと思っても出来ずにいる。警察に訊いても、「救急の受け付けは横浜で一括でやっていて、これは仕事ですから御礼は要りません」となってしまう。5分間でいいから、御礼を言いたいのだが、110番の恩人にはつながらない。
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