Takepuのブログ

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中国新幹線の体験

2011-07-26 14:39:15 | 時事
ついに予期していたことが起きてしまった、というのが、7月23日に浙江省温州市で起きた「動車」(中国新幹線)の追突脱線事故。7月1日の党創立記念式典に間に合わせようと、6月末に急ピッチで開通させた北京-上海間の高速鉄道が「4日間で3度の故障停車」と問題視され、「落雷で電気系統が故障したが電車そのものに問題はない」と居直って問題を放置した結果の惨劇だろう。

実際、落雷による故障はあちこちで頻発している。そもそも新幹線には避雷針があるのは当たり前なのに、落雷が起きるごとに毎度毎度停車していては商売にならない。鉄道省は「あくまでも電気系統のみの故障で、新幹線の車体そのものの安全性に問題はない」と発表したようだが、新幹線を導入するなら車体だけでOKというのは、ソフトを重視しない中国らしい考え方が出ている典型だ。車体の安全性と運行システムのスムーズさ、管制部門が全体を掌握するための情報集約、そして車内サービスなどを加えた総合力が、新幹線を運行させるための条件だろう。
分かってないのは、やっぱりな、当たり前だろうな、と思ってしまうぐらい、目先のスピードのことしか頭にないのだろう。


2008年4月に最初に乗った中国新幹線は、上海から南京。見た目も日本の新幹線そっくりだが、人件費が安い中国ゆえ、車内サービスの服務員の女性はうようよいて、何をしているか分からないほどだった。全員にペットボトル入りの水を配っているところもあった。これは座席カバーにこのミネラルウォーターの広告があり、スポンサーなのだろう。

車内にはスピードメーター。この新幹線は最速200キロ超程度だった。このころは、まだ中国でもスピード一辺倒ではなかったのかもしれない。それで命が助かったか。


スピードばかり重視する傾向は上海の浦東空港から地下鉄の龍陽路駅までを8分ほどで結ぶリニアモーターカーもそうだ。中間地点でほんの少しだけ時速430キロを超えるが、たった10分弱でどれほどの効果があるのか。朝晩の利用者が少ない時間は250キロ程度しか出さず、それでも所要時間はほとんど変わらない。


そもそも時速350キロ、といっても、おそらく日本の新幹線でも可能な速度なのだろう。日本では安全性を確保するためにギリギリまで速度を出さない「伸びシロ」の部分を、中国では目一杯の速度まで上げることで“独自開発”と称しているようだ。日本の新幹線システムを中国に導入しようと提案したときには、最高時速200㌔程度で、安全性を確保した運用を提案したらしいが、中国側は「最新技術ではない」とより早い速度を求めたとも聞く。日本の新幹線でも速度を示すことがあったらしいが、われわれは今何キロ出ているか、というこことよりも、予定通り、時間通り目的地に着くことのほうが大事だ。中国新幹線は時として予定時刻より早くついてしまいこともあった。「?」だが、ダイヤというものは実は存在しないのだろう。

2009年3月に乗った、JR九州の「ソニック」みたいな“なんちゃって”新幹線は、上海南から杭州をノンストップで結ぶ。

とはいっても時速170キロ程度。早いといえば早いが、これを200キロ以上までスピードアップしているとすると、恐ろしいと思わざるを得ない。

車内の写真はスポンサーの水を乗客全員に一人ずつ愚直に配る女性乗務員。ご苦労なこった。「さっき1本もらったよ」と自己申告すると、「もう、忙しすぎて分かんなくなっちゃうわよ」とキレかかっていた。ご苦労様。

新幹線は速くて便利だが、安全じゃない、と乗らないとなると、長距離バスか。でも河南省でつい最近40人が死亡する事故が起きている。バス事故も頻発している。ゆっくり揺られて車窓を楽しむ昔の中国旅行が懐かしくなってくる。