Takepuのブログ

中国旅行記とか、日ごろ思ったことなどを書きたいと思います

人民日報続報

2010-09-30 00:44:47 | 時事
28日付毎日新聞「記者の目」で毎日OBの辻康吾さんが紹介した、1953年1月8日の人民日報で、尖閣諸島との表記で日本領と認めていたとの記事。中国の公的シンクタンク、中国社会科学院のサイトで原典に当たることができた。

ちょうど朝鮮戦争で中国が人民義勇軍を送り北朝鮮を支援し、米国を中心とする国連軍が韓国を支援し、事実上中国と敵対していたときに、同様に米国に占領されていた沖縄に対するシンパシーから書かれたもののようだ。題名は「琉球群島人民の米国占領に反対する闘争」。第1段落が琉球群島の地理的状況を説明した部分。第2段落は、1945年6月に米国が沖縄を占領してから、全島の3分の1を軍事施設にして、朝鮮戦争やアジア侵略の前線基地にしている--というもの。

「釣魚島は中国のものだ」とコブシを振り上げる中国では、一部の人々がこのような記述に触れ、ためらいを感じていたようだ。以下のようなサイトの文章も見つけた。2005年4月16日にすでに書かれていたようだ。

曰く、「釣魚島(台湾では釣魚台、日本では尖閣諸島)争議についての文章を書こうとして、にわかには信じられない中国官製報道に出くわした。さらに奇怪なのは、このように重要な資料を、わが国の多くの学者や専門家がまったく引用していないということだ。私が日本の右翼の戯言を聞いて、人民日報のデータベースを検索すると、悲しいかな、以下のような報道に行き当たった。人民日報は許しがたい錯誤を犯した。1970年12月になって、公式メディアは声明で釣魚島の主権を主張した。また台湾の『聨合報』を検索すると、1968年10月6日に最も早く、この島についての記述があり、琉球政府のものだと記されている」

このサイトで紹介するこの聨合報の記述は以下の通り。


台湾省水産試験場の所長が、琉球政府は尖閣諸島の魚釣島、南小島に、台湾の漁民が入るのを禁止するのは、漁業活動の妨害である、と話したという内容だ。

簡単に訳すと、
「過去20、30年、台湾の漁民は漁業活動中、強風を避けたり、船の修理をするためしばしば魚釣島などに行ったが、ここに主権問題は発生していない。琉球政府がもし、このような人の住んでいない沖縄県石垣市の一部分の島に、台湾の漁民が進入するのを禁止するなら、日本や琉球の漁民も強風を避けるため台湾の基隆に来ることはできない。海図によると尖閣諸島は(中略)、過去20、30年間、台湾漁民は強風を避けるためや、船の修理のために臨時にこの島を利用してきたが、いわゆる主権問題はない。」

人民日報は、中国共産党中央機関紙。聨合報の報道は、台湾省の役人が話した内容なので、いずれも公的機関の発言とみなすものだ。でも、これを書いた中国人はきわめて理性的な人のようで、冷静な筆致だ。

これをもって「尖閣諸島は日本のものだ」と右翼のように声高に主張するつもりはさらさらないが、辻さんの「記者の目」の論調のように、こんな事案を日中の争点にしないで、中国側も足元を見つめなおして、穏やかに仲良くやりましょう、といいたい。