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わまのミュージカルな毎日

主にミュージカルの観劇記を綴っています。リスクマネージャーとしての提言も少しずつ書いています。

2016年の観劇記録

2017年01月06日 | 観劇記
4月 ミュージカル「グランドホテル」
5月 ミュージカル「アニー」
6月 ミュージカル「天使にラブソングを~シスター・アクト~」
7月 こんにゃく座オペラ「おぐりとてるて」
8月 ミュージカル「キンキーブーツ」(日本版)
   ファミリー・ミュージカル「三銃士」
   ミュージカル「王家の紋章」
9月 ミュージカル「ヴィンセント・ゴッホ」
10月 「GOEMON」
11月 「貴婦人の訪問」
   「吉例顔見世大歌舞伎」

コンサートは入れていません。
でも、何か忘れているような・・・
意外に数少ない一年でした。

2016年を振り返ってみたら・・・

2017年01月06日 | 観劇記
年末に、「今年の〇〇」というのをよくやりますよね。
年の初めのことは忘れてしまうし、年末ぎりぎりに大流行しても入らないし、こういうのをランキングするのはなかなか難しいと思います。

私も昨年の最初のころの観劇を思い出せないのです。
記憶にあるのが、4月の「グランドホテル」から・・・
そうか、一年を記憶することも難しくなってきたか・・・
こういう時のために、スケジュール帳が必要なわけですよ。
と、1月から3月をめくってみました。
書き忘れ?1回も観ていないのです。
確かに、4月頃までとても忙しかったので、観劇どころではなかったことを思い出しました。
忘れていたわけではなかった、とほっとしましたが、「観劇どころではなかった」ことを
忘れていたのですから、それもどうかと思いますよね。

かなり我慢して我慢して我慢した後に出会った「グランドホテル」。
乾いた土に水がよく浸み込むと同じなのか、心にとても浸み込んだ舞台でした。
4月に、3月までの我慢を一気に解消した私でした。
こういう事情もあったかもしれませんが、2016年の一本を選ぶのであれば
「グランドホテル」ですね。

観劇したかったのに出来なかった作品もあるので、こう言い切ってはいけないと思いますが、心に残った作品が少なかった一年でした。

その中で、期待以上だったのが、日生劇場での夏休みファミリーミュージカル「三銃士」。もう少し長くやってくれたら、リピートしたかったです。今年もやってくれないのかなあ?という思いです!

今年は1月から観劇しますよ。
たくさんの楽しく、すてきな舞台に出会える一年になりますように!

ミュージカル「アニー」

2016年05月08日 | 観劇記
丸美屋食品ミュージカル「アニー」

2016年5月8日 16時30分開演 スマイル組
新国立劇場 中ホール  2階席


初めて観ました。
結構舞台を観ているのに、意外に観ていない再演が繰り返されている舞台が結構あります。
「アニー」はその一つでした。

ルーズベルト大統領役を園岡新太郎さんが演じられるということで、
観劇しました。
久しぶりの舞台ですよね。
お元気な、といっても、ルーズベルト大統領は車イス生活です、お姿!!!
そして素晴らしい歌声をお聞かせ下さいました。
ルーズベルト大統領は実在の人物であり、映像自体も残っています。
そのような中で、アメリカの国を思う時、友人に対するとき、
そして、子どもたちに対する優しいまなざし。
さすがです。
こういう人物であったからこそ、あの時代を支えたのだと感じられました。
アニーがぶつぶつ言うと「言ってごらん。ここアメリカは自由の国だよ。」
とうようなセリフがとても印象的でした。
そう、民主主義の基本は、自由な発言です!!!
意味自体もなんて大切なことだろうと思うとともに、
さらりと子どもに語りかけながら、印象付けるセリフ回し。
是非、これからもたくさん舞台に立って頂きたいと思いました。

子どもたちはとにかく可愛い。
そして、まっすぐ!

その子どもたちを活かすも殺すも大人キャスト次第だと思って観ていました。

孤児院の管理人?ミス・ハニガンの遼河はるひさんがよかったですね。
1933年という世界大恐慌の直後に、定職があることへの感謝も、
嫌いと言いながら子どもたちと過ごす楽しさも、本当にひねくれてしか
表現しないのですが、何とも味がありました。

ミスター・ウォーバックスの秘書のグレイスの木村花代さんも
よかったですね。滑舌の良さ。スタイルの良さ。
控えめでありながら、存在感があり、女性らしさもあり・・・
うっとり観てました。

この女性陣に対し、ミスター・ウォーバックスの三田村邦彦さんは
ちょっと物足りなかったです。
テレビや映画の印象は、細かい演技をしっかりする俳優でした。
それを期待していましたが、舞台ということで、大きな動きを
心がけていらしたのでしょうか。
あるいは、子どもとの共演ということで、大らかに演じられていたのでしょうか?
グレイスの立ち振る舞いからは、グレイスの感情が伝わってきたのですが、
ウォーバックスからは弱かったのですよね。
ちょっと残念でした。
何歳位を前提としているのかわかりませんが、もう少し姿勢を
よくして欲しいと思いました。
子どもと接するときは、あのような感じの方がいいと思いますが、
他のときはもう少し威厳が欲しいかなぁ。
大統領より年上なんですかねぇ???
いろいろ妄想が広がりました。

あくまで、大人目線の感想です。

あの時代ほどではなくとも、子どもの貧困が社会問題となっている現在。
やはり、今の日本に足りないものは「希望」なのではないかと
舞台を観ながら思いました。
新たな才能を見つけ出す作品としての位置づけもあるのだと思いますが、
社会に光をもたらす作品として、これからも上演が続くことを
祈っています。

新国立劇場での公演は5月9日までですが、夏には地方公演がたくさんあるようです。
是非、親子で楽しんで頂きたい作品です。

それでは、また。



ミュージカル「グランドホテル」(SCに捧ぐ)

2016年04月26日 | 観劇記
東京公演 赤坂ACTシアター

本当に楽しませて頂きました。
REDチーム、GREENチームとも観劇しました。観劇回数の偏りはありますが、苦笑。

受験生の皆さん、暗記するなら一日の内に、2~3時間ぐらい空けて2回繰り返すとかなり内容が定着しますよ!
何を言っているのかと思われるでしょう。REDとGREENのマチソワをしたら、相当歌詞やセリフを覚えられました。そのおかげかわかりませんが、舞台の生の素晴らしさを堪能いたしました。たくさんのハプニングをもろともせず、幕が下りるまで突き進むキャストの皆さまに感動いたしました。(時々は、ええ!!!も、笑)

公式HP等がすっかりネタバレをしているので、まったく構うことなくいろいろ書きます。名古屋と大阪を楽しみにしていらっしゃる方はかなり内容に踏み込んでいることをご了解の上お読み下さい。


両チームを観て、シングルキャストの大変さを思い知りました。大きく演出が違うのは、Wキャストだけが登場する場面が多いのですが、そもそもの空気感が違っています。そして、シングルキャストの運動量は半端ありません。ジミーズお二人とか、顔が一回り小さくなった?と思いました。

シングルキャストの皆さんがしばらく登場しない場面は、ガイゲルン男爵とグルシンスカヤが恋に落ちる場面だけですよね。他の場面は、本当に歌い踊っています。
ホテルの従業員だったり、バレエの観客だったり、フレムシェンの夢の中のダンサーだったり、娼婦だったり、一宿泊客だったり、株主だったり・・・素晴らしいです。

木内健一さんはジミーズの片割れなのですが、REDチームでは「Who Couldn’t Dance With You?」を歌うのです。GREENチームはフレムシェンが歌いますが。木内さんなかなかいいムードですよね。まあ、本当のホテルのラウンジに近い雰囲気でよかったと思いました。

金すんらさん。グルシンスカヤに嫌気がさしているプロデューサーのサンドー。プロデューサーの狡猾さがいいですよね。あと、金さんだけでなく、「Merger Is On」はすごい迫力でした。何となくずれて「カァ、カァ」って言うのが好きでした。

この「Merger Is On」の時に、「The Crooked Path」を重ねて歌うズィノヴィッツの大山真志さんは、「Everybody’s Doing It」の迫力もすごかったですね。この曲の直前がフレムシェンの可愛い夢のダンスからの一気に男気なので、観客をあれだけ惹きつけるテンションの高さにいつも大山さんすごい、と思っていました。まあ、このズィノヴィッツが「ルールなんて破るもの」なんてそそのかすから、すごく真面目なブライジングが壊れて行ってしまうのですよね。本当にいけない人物です。

グルシンスカヤのマネージャーのヴィットを演じたのはこの作品でミュージカルデビュー杉尾真さん。最後の方で、ホテルのロビーで、男爵のことに触れるな、と命令する姿が観るたびに凛々しくなっていきました。いつの日か、男爵の方が出来るといいですね。楽しみにしています。

新井俊一さんのベルボーイが支配人格のローナに、ロビーを走って怒られ、そのあとにオットーへの対応を急がれて、速足でかばんを取りに行くところ、かばんを放り投げるところとかが好きでした。上司の命令をきちんと聞くちゃっかり者です。それなのに、宿泊客のドクター・オッテンシュラッグには「またですか!」と文句を言ったりします。チップを貰えるまで立ち去らなかったり、本当にいろいろちゃっかりしているなぁ。なんだか、ヨーロッパのホテルにいるみたいだなぁと思わせてくれる所作を楽しんでいました。

真瀬はるかさん。本当にお美しい方で、惹きつけられます。従業員たちの不満をぶちまけている場面の「泊まりたいの・・・」はいつも聞き惚れていました。その上、「We’ll Take A Glass Together」では切れっ切れのダンスを見せて下さいます。

「Bolero」では、バルコニーにキャストがほぼ勢ぞろいして歌うのです。その時、すごくのびやかな個性的な歌声を聞かせて下さっているのがトルードの吉田怜菜さんだと思うのです。あの場面、観客は忙しいのです。ダンスも観たいし、この歌声は誰だろうとバルコニーに視線をあげたいしで・・・ソロの方にちょっとスポットを当てて下さればいいのになぁと思っていました。
トルードとフレムシェンのやりとりで分かりにくいとあちこちで話題が出ていましたので、私の考えを。フレムシェンが「妊娠したみたい」というとトルードが「みんなそうでしょ。」と言います。フレムシェンが最初に彼氏に電話で妊娠したからお金を送ってほしいと言います。フレムシェンは本当に妊娠しているのかもしれませんが、したたかな女は妊娠を口実に男からお金をもらうことがよくあったのでしょう。だから、女はみんな妊娠したっていうのよ、というトルードの言葉は、お金をもらう口実よね、として本気にとりあっていないことがわかります。
この伏線は、最後のオットーとフレムシェンのやりとりにとても大切になってきます。古い友人であるトルードはフレムシェンの悩みをまったく無視するどころか、「古い手だ」とバカにした感じで接していたのに、オットーは自分のことのように喜んでいるのです。フレムシェンのことをドクターはすごく悪い女と言うけれど、オットーの優しさに触れ、きっと素直な女性になっていくと思いたいです。というわけで、このトルードの一言は結構あとあと感じるものがありますね。

グランドホテルは「ホテル」が作品の舞台です。観客がホテルにいると思うか、ホテルを覗いていると感じるかで、作品自体の感想が大きく違うと思うのです。
ホテルに行って、温かいおもてなしも嬉しいです。でも、きびきびと動く中に優雅さがあったりすると、このホテルに来てよかったと思います。
その感じをしっかり舞台で作って下さったのがローナの友石竜也さん。手の先の表情、目線の動かし方で、従業員をきびきびと動かす、敏腕支配人です。ヨーロッパ一豪華なホテルというのは、建物ではなく、そこに働く人によって評価されるものだと思います。こんなすてきなは支配人がいるホテルに私も泊まってみたいです・・・劇場にいるときはホテルにいるような気持でしたよ。
ちょっと冷酷すぎる台詞ばかりが多く、すてきだなぁと思わせるのは演技しかないのですが、決して表情を変えずに、さらりと優しさを垣間見せるローナ。本当にすてきでした。

ローナが話題に出れば、エリックが登場するわけですが。エリックというより、藤岡さん大変よねぇ・・・・・・です。
東京千秋楽「本当に苛酷でした・・・」と舞台挨拶でおっしゃるのですから、本当に大変だったのだと思います。エリックは両チームでかなり違う役作りを必要とされる役でしたしね。この役もダブルでもよかったのではないかと思っています。

ローナとエリックのやりとりは、シングルキャスト同士なので、両チームで同じだと思っていました。が、どうもすこし設定を変えて演じられているようですね。

シングルキャストで、ダブルキャストにがっつりと絡むのが運転手(実は借金の取立屋)の青山航士さん。どう考えても取立屋の方が立場が強いはずなのに、まったくそんなそぶりも見せない男爵はすてきでした。取立屋が男爵を厳しく追い詰めるほど、男爵の美しさが引き立つような気がしました。また、この話はどこかであらためて・・・
運転手は衣装がグレーでした。ズボンの形もちょっと変わっています。でも、ダンスシーンとかはすごいスピードで容赦なく巡ってきます。他のキャストは上着だけ変えるという早替えをしていると思うのですが、運転手は上から下まで早替えするのですから、さぞ、お忙しいのだろうなと、青山さんの登場の度に思っていました。

シングルキャストの皆さま、本当に素晴らしい舞台をありがとうございました。また、遠くない将来に、東京に「グランドホテル・ベルリン」が建つことを心から楽しみに待ちたいと思います。

ダブルキャストについてはまたいつの日か書きたいと思います。
ではでは。

「グランドホテル」

2016年04月12日 | 観劇記
「グランドホテル」(REDチーム)
2016年4月11日ソワレ 赤坂ACTシアター  1階前方センター

久しぶりの観劇。そして、観劇記です。
2チームあって、結末が違うそうなので、あまりネタバレしないように感想を書きます。

キャストの皆さん自身が、非常に複雑にセットを動かしながら歌い、踊る、スリリングな構成が多いためか、正直、段取り?という感じは否めません。群像劇の宿命でもあります。
段々良くなるという妥協を私はしたくないので、ちょっと残念でした。が、多分私が次に観るときは、客席の観客がグランドホテルの宿泊客と思えるようにキャストの皆さまが引き込んで下さると思います。

初っ端からちょっと厳しいことを言ってしまいましたので、素晴らしかったことをいくつか。とにかく、装置がステキ。溜息ものです。

そして、ガイゲルン男爵の伊礼彼方さん。あんなキザな男を、きちんとキザに演じられるなんてすごいです。本心がどこにあるのかわかりません。苦し紛れの嘘?心からの言葉?嘘をついてみたら、本心がわかった?彼(男爵)の言葉だけでなく、しぐさ、目線のすべてが気になります。そして、彼は、あの時代の、1928年の、その先を暗示しているのかとも思います。
そして、この男爵を追い詰めるギャングの青山航士さん。男爵以上にステキでした。完璧ネタバレになりますから、ここで、いろいろ書けないのは残念なのですが、男爵とのやりとりがすごいです。男爵があんなことやこんなことをしたのも、ギャングのせいですが、それがああなったのもギャングのせいなんでしょうね。これ以上は言えないので、是非、この二人のやりとりを劇場で体感して下さい。鳥肌ものです。

ラファエラ役の土居裕子さん。とても素晴らしい方で、役柄への真摯な姿勢にいつも尊敬の念を抱いています。が、今回は迷いがあるのでしょうか?バレーリーナのグルシンスカヤ(草刈民代さん)を心から愛しているのですが、ちょっと遠慮がち・・・同性というところが抑えた感情になっているのかもしれませんが、もっと思いをぶつけてもいいのではないかと思いました。決して、報われない愛なのだとわかっていても、それでも・・・・・あの場面はもっと「あなたには私がいる」となってもいいのかなぁと思いました。
おっと、ネタバレになるところでした、汗。

多分、主役のはずのオットーの成河さん。歌もいいし、ダンスもすてきでした。が、私の中での主役が男爵になってしまったので、すっかり群像の中に入り込んでしまいました。ユダヤ人であるオットーはなぜ余命を宣告されているのか?それは彼自身の病でもあるけれど、社会全体が病んでいくからなのでしょう。1928年、お金がすべてだった。お金がすべてではなくなったとき、人はどこへ向かうのか?どこへ向かうべきなのか?その象徴がオットーなのではないかと思うのです。以前、ストレート・プレーで拝見したときの成河さんならオットーのホテルにやって来た時と出立する時との差をもっと観客に明確に伝えられると思っていたのですが、ミュージカルに馴染めていないのでしょうか?ストレート・プレーの時の、立ち上がるだけで視線を引きつけ、歩くだけですべてを語ってしまうような、あのオーラがこれから発散されるのを楽しみにしています。

エリックの藤岡正明さんは安定の存在感。エリックたち労働階級と上流階級の宿泊客との深い溝がありながらも、そこには人間同士の心の交流もあるのです。それが、とてもほっとするし、嬉しいのです。男爵とエリックのやりとりも必見です。まさか、あれがエリックの物になるとは!!!
おっと、また、ネタバレに近づいてしまいました、汗汗。

孤独に生きるのがオッテンシュラッグ医師。佐山陽規さんが演じています。狂言回しのような役です。時に、ひどく冷たい言葉を発します。が、もしそれを言われた本人がしっかりと受け止めていたのなら、人生は変わっていたかもしれないのに・・・つまり、冷たいというより、真実を見通している人物です。佐山さんの厚みのある声が、人生を語ると、冷たい言葉なのに、熱い思いを感じます。(どこかで似たようなセリフを聞いた)
その冷たいであろう人物が歌うからこそいいのかもしれませんが「I Waltz Alone」は素晴らしいです。佐山さんの歌はたくさん聞いていますが、あの曲の次位に好きな曲になりそうです。

群像劇なので、キャスト同士のやり取りが面白いし、難しいなぁと思うのです。まだ遠慮がちなところがあるのでしょう。
楽曲が素晴らしいですね。ええ、ここで転調?みたいな落とし穴がいっぱいの楽曲は大好きです。人生そのものです。

と書きながら、早く、もう一度観たくなりました。
予定では、グリーンを次回は観ます。

では、また。

「パッション」~ミュージカルの旋律~

2015年10月26日 | 観劇記
「パッション」新国立劇場にて初日(2015年10月16日)に観劇して、タンボウッリ軍医はすべて台詞で、歌がないことに、どういうキャスティングと思いつつも、佐山陽規さんのまた新たな面を発見したような嬉しさもありました。
歌わないことにあまりストレスは受けませんでした。台詞なのですが、まるで音楽のような印象もありました。井上芳雄さん演じるジョルジオとのやり取りが多いのですが、二人の台詞の応酬は、そのままメロディにしてもいいような印象でした。

あれだけの長台詞になぜメロディがないのか??????

このことは、心のどこかにあったのです。佐山さんが歌わないということよりも、この「なぜ?」が心から離れませんでした。

約10日後、ワイルドホーン氏が作曲を手掛ける「スコット&ゼルダ」を観ているとき、突然、もしかしたら・・・という考えが浮かびました。

前々から思っていましたが、ワイルドホーン氏の曲は歌い上げる曲が多いのです。「スコット&ゼルダ」は特に多かったですね。ミュージカルとして盛り上がりはあると思いますが、気持ちも切れることがあります。お話として区切られていないのに、歌い上げられると、なんというか興ざめなこともあるのです。拍手して、そういえばどんな話だったっけ?という感じです。
ソンドハイム氏は芝居の中に音楽があり、台詞にメロディがついている。そのメロディがある方が役柄の気持ちが観客に伝わりやすくなるという感じで、作曲をしているように思うのです。淡々とし過ぎて「パッション」は一幕が終わっても拍手がなく、最後にようやく拍手をするのです。本当に、ストレートプレーと同じです。

ワイルドホーン氏のこれでもか、という華やかな音楽を聴きながら、華やかとは言い難いけれども、ソンドハイム氏の、奇想天外なメロディや早口歌など、その感情や状況をこんなメロディに乗せるのか!という曲の数々が不思議と思い出されていたのです。そして、ソンドハイム氏の作曲の多彩さを考えれば、軍医の台詞にメロディがついていないことには、何か意味があるのではないかと思い至ったのです。

ジョルジオの行動にいつもきっかけを与えているのは軍医です。医者として最善を尽くすために、ジョルジオに相対するのです。そのきっかけがジョルジオにとって良いとは思えない方向に行き、結果として意地悪をしたのか?と思えるようなこともあるのです。でも、多分そういうつもりはなくて、最善を尽くしたけれど、結果はそうはならなかっただけだ、と私は思っています。もし、軍医の台詞にメロディを付けたら、こういう結果になってほしいと観客に伝えてしまうことになるでしょう。それでは、話が薄っぺらになってしまうような気がするのです。ジョルジオは自分の行動は自分で責任を持つ、という態度を随所で表現します。軍医からのきっかけがあったのに、それは命令ではないから、自分の行動は自分で決めると印象付けるためにも、軍医が歌わず、ジョルジオの行動の結果を観客が予想できない方が観客は芝居に入り込めるのではないでしょうか?
あえて、メロディを付けないことで、ジョルジオの意思の強さが引き立っていくというわけです。
足し算で舞台の魅力を増そうとするワイルドホーン氏の楽曲を聞きながら、敢えて引き算をすることで舞台に、そして、作品の中に観客を引きずり込むソンドハイム氏の思いがわかったのでした。

と言っても、本当のところはわかりません、苦笑。
そして、ファンの贔屓目ですけど、佐山さんが歌でジョルジオにきっかけを与えたら、まるで魔法にでもかかったように行動しているな!っとなってしまうと思うのですよね。
(完全に、「太平洋序曲」のあんな曲やこんな曲が、聞こえています!!!)

音楽座「ラブ・レター」

2015年06月12日 | 観劇記
音楽座ミュージカル「ラブ・レター」
6月7日東京千秋楽を観ました。
東京芸術劇場・中ホール、下手寄りかなり前方。

一昨年秋の初演も観ました。
正直言って、今まで私が観てきた音楽座の中で一番残念だった作品。
それがどう再構成されているのかを楽しみに伺いました。

確かに、しまりのある舞台になっていました。
吾郎役の広田さんの演技プランがしっかりしたことに負うところが大きいと
感じています。
死んでしまっている白蘭に対する思いが、
他人
妻(配偶者)
愛する人
という風にしっかり変化しているのがよくわかりました。
特に、写真を見たときに、「生きている時に会いたかった」ということの
表現がすごく良かったです。
男の人らしい反応だよね、と女の私は思ってしまうのですが、
どんな入口にしても、白蘭への愛情が芽生える瞬間です。
その瞬間があるからこそ、その後の後悔、社会の矛盾への怒りが
伝わってきます。

というわけで、さすが広田さんだなぁという思いもある反面、
物語全体としては、どうなんだろう???
演出してもどうなんだろう???
と思うところもたくさんな舞台であることには変わりなかったです。

あまり新宿をおさなかったことはよかったと思います。
ダンスの場面も減っていたように思います。
それもあって、落ち着いた感じはしました。

原作にとらわれ過ぎていることはわかっていますが、敢えて・・・
震災を持ち出す必要があるのでしょうか?
「人はいつでもやり直すことができる」
この言葉は、今、復興から置き去りにされている人々に対して
励ましの言葉になるのでしょうか?
「やり直すことができる」
という言葉はとても勇気の湧くメッセージです。それはとても素敵な
コンセプトだと思います。が、それは、それ単独で充分伝わることなのでは
ないかと感じています。
もう一点は、吾郎が殺されてしまうことですね。
とても違和感があります。
吾郎もやり直した人になってもよかったのでは???

ミュージカルというよりは、ストレートプレーに近いこの作品。
しかし心に残る歌もあるのです。
が、なぜ、そこで合唱をいれてしまうの???
ナオミ(宮崎祥子さん)が「時間の浜辺」を歌い始めて、ナオミの身の上を思い図ろうと
する時に、なぜか別の声が???
正直、入り込んだ気持ちが現実に引き戻されてしまいました。
興ざめでしたね。

治田さんのファンなので、こんなことは言いたくないのですが、
なぜ女性看護士??????????
意地悪な女を男性がやるというのはすごく納得できるのです。
あの看護士いい人ですよね。
登場場面をコメディにしたかったわけでもないですよね。

登場場面が少ないのに、舞台をキリっと締めて下さったのが
井田安寿さん。
葬式の後に吾郎に手紙を渡す場面。
ゾクゾクしました。
どうなのよ、白蘭の無念さがわかったの?
と言わないのですが、それだけではなく、白蘭だけではなく、
女たちの現状を理解しているのか?と、問いかけているようでした。
ある意味、吾郎はそれがわかったわけですよ。
それだからこそ、吾郎には生き続けてほしかったのです。


というわけで、相当辛口の観劇記となってしまいました。
音楽座には、日本を代表する素晴らしいミュージカルを作り続けて
頂きたいので、こうなってしまいます。
まして、浅田氏とのタッグは「メトロに乗って」がありますからね。
期待が膨らんで当然ではないでしょうか?
また、別の作品で、音楽座らしさを表現して頂きたいと思います。
次作を楽しみにしています。

「タイタニック」大阪公演行きを迷っている皆さまへ

2015年03月31日 | 観劇記
3月29日で東京公演か終わってしまいました。皆さま観劇なさいましたか?
4月1日より5日まで大阪公演を残すのみとなりました。
私は遠征はいたしませんが、迷っている皆さまへアドバイス(いらんお節介か悪魔の囁きか)を。

これだけ連日超満員であれば再演の可能性大だと思います。が、数々初演と再演を観てきた者としましては、やっぱり初演が一番、が多いですかね。やはりキャストがまた全員揃うことが難しいですからね。
というわけで、行かれそうな方は是非。


何かと行事の多いこの時期、泣く泣く諦めた方も少なくないと思います。評判聞いてから、と思っていたらチケットがない。本当に残念ですよね。

戸井勝海さんのファンなら・・・
戸井さんは2000年頃から出演作品の3分の1ぐらいは観ていると思います。
それ以上に観ているファンの方で、今回はどうしても行かれなかったという皆さま、かなり無理してでも観劇をお勧めします。
私の中では今回の役が一番好きかな?美味しいところ全部持っていきます。舞台にいる時間も歌も全キャストで一番長いのでは?

藤岡正明さんのファンなら・・・
藤岡さんはレミゼ以降は時々。「蝙蝠の箱」という作品で、多才ぶりを堪能させて頂きました。
勿論、それも観ました、レミゼもリピートしましたというファンの方で、今回はどうしても行かれなかったという皆さま、時間をお金で買えるのであれば(有給などで休暇が取れる)、遠征されることを強くお勧めします。
戸井さんほどの活躍ではないのですが、藤岡さんの違った魅力が引き出される歌が2曲。役も、機関士という無骨で男らしい役、気さくな三等客、そして気難しそうな一等客と一度の観劇で何度美味しいのか!と思えるご活躍です。

次に、津田英佑さんについて触れておきたいと思います。
私は、2000年の「レミゼ」のマリウスとして記憶しています。正直その後何の興味もなく、いつかのレミゼコンサートで再びマリウスに出会いました。
で「アナ雪は」英語で見たので、ハンス王子で話題になっていることも露知らず、タイタニックで、わぁ久々に津田さんだあ、と思った次第です。私が興味がなかっただけで、当然、舞台で活躍なさっているものと思っていました。
先程、ググって、「アナ雪」で相等話題になり、実は舞台にあまり出演なさっていなかったことも知りました。
ということは、津田さんファンにはこの舞台はレア?声優ファンは生の声を聞ける貴重な舞台?
舞台での活躍を楽しみにしたいたファンなら、多少の無理をしてでも、観て頂きたいです。
興味がなかったなどと失礼なことを申し上げましたが、マードック一等航海士は津田さん以外考えられないぐらい、ぴったりで魅力的です。

上口耕平さんのファンなら・・・
と思ったら、「ダンス・オブ・ヴァンパイア」でヘルベルト役が決まっていたんですね。「シスター・アクト」路線でいくのかぁ、という感じです。
「タイタニック」での通信士ブライド役とは全く違うと思うので、すごい役者さんになっていくのではと感じています。
というわけで、彼の成長を見守りたいファンの皆様は、出来うる範囲での遠征をお勧めします。

見守りたいとという点からすると、ミュージカル初挑戦の佐藤隆紀さんのファンなら・・・
次の「エリザベート」のフランツ・ヨーゼフもいい役です。東宝ミュージカルの初代は鈴木綜馬さんでした。とてもすてきなナンバーがあります。
是非、楽しみになさって下さい。
でも、やはりファンとしては第一作目を観るべきでしょう(笑)。


以上は、私が○○さんのファンだったら、間違いなく遠征するであろう、という視点で書きました。
何度も言いますが、他のキャストのファンの方にもおすすめです。近畿圏の皆様には、迷わず行って頂きたいですねえ。

時間が許せば、キャスト全員の方への感想も書きたいと思っています。
でも、4月5日までにできるかはわからないので、取り急ぎ、悪魔の囁き、つぶやいてみました!!!

新演出「タイタニック」の魅力

2015年03月28日 | 観劇記
先日開幕したと思いましたら、もう東京は今週末で千秋楽となってしまいますが、サザーランド氏演出のミュージカル「タイタニック」は、連日大盛況のようです。
シアター・コクーンは総客数747席ですから、当然、という声も聞こえそうですが、どの回も数十人の立ち見の観客も出ています。
リピーターも多いことと思いますが、どんな魅力があるのでしょうか?

私も3回観ました。
初日は、上手の相当前方から。3月22日は一階席の前後左右の丁度真ん中あたり。3月26日は一階のかなり後方、下手ブロックですがセンター寄り。
いろいろな角度がら拝見させて頂きました。
コクーンぐらいの大きさが舞台と観客席が一つになれる大きさのように思います。

初日はさすがに段取りを追っていて、忙しい感じがしていました。でも、何というか、ミュージカルはまず「歌」ですから、キャスト陣の歌の質の高さにとにかく驚きました。
どのミュージカルも「日本最高峰のキャスト陣」といううたい文句で飾られますが、実際にはかなりの確率で首をかしげたくなる状況があります。
が、この「タイタニック」のキャスト陣は本当にすごいです。
演出家のサザーランド氏ご本人がキャスティングしたということですが、こうやってオーディションをすれば、こういう素晴らしい舞台が出来上がることの証明になったようで、本当に嬉しいです。

「太平洋序曲」のときにも、厳しいオーディションに残ったキャストでした。この舞台をきっかけに、日本のミュージカル全体が、主演でひきつけるだけではなく、舞台の質で観客を引き付ける方向に変わってほしいと願っていました。しかし、そうはならず、すっかり諦めかけていました。
そんな中、出会った「タイタニック」。
嬉しいですね。

初日から一週間後の観劇で、キャストの小芝居が増えたり、台詞、歌詞が明確になり、さらに間がよくなり、ミュージカルであるよりもお芝居としてすごく楽しめる舞台になっていたのに、驚きました。
ときに、再々演ぐらいで、やっとお芝居の部分が浮き上がってきたということもありましたからね。
初日から素晴らしかった歌声に、お芝居が明確になったことで、またさらに音楽や歌に心奪われていきました。

そして、私が強く思ったことは、「これぞ舞台!」という作品だということです。
最近は、映像を多用したり、時には映画とのコラボか?という作品もあります。
今回は、すべてを削ぎ落とし、キャストの実力と、観客の想像力で、作品を作り上げる舞台となっているように思います。


チケット入手が困難なようですが、是非、コクーンへ立ち見覚悟で行ってみて下さい。
後悔しない舞台になっていると思います。

今回チケットが手に入らなかったと泣いているファン、何度でも見たいリピーターのために、是非、是非、再演して頂ければと思います。





ミュージカル「タイタニック」

2015年03月19日 | 観劇記
ミュージカル「タイタニック」の初日を観劇しました。

初日ですから・・・

62役を20名で演じているそうです。
結構、前方の席だったので、服装よりもお顔で認識ししまうものですから、
あれ、一等客???二等客???
みたいなことがあり、混乱しました。
三等客は服装がまるで違うので、混乱しません。
つまり、それほど階級社会だったのです。
20世紀に入っていたのに!
そして、亡くなった方は三等客が多いのです。
なんということでしょうか。

史実なので、本当に心が痛む場面が多かったです。

そして、今の世界を見回しても、何も変わっていないのではと感じてしまうところが、
とても怖かったです。

「あなたに、命の順番を決めることができるのですか?」

確か、アンドリュースが船長に向かって言うのですが、
今まさに私たちはごく一部の政治家によって決められようとしているのではないかと
思えてしまいました。

さて、固いことはこのあたりにして。

群像劇なので、どなたがどこで登場するかを発見するのは、
ファンにとっての楽しみ。
リピーターが増殖する舞台ですよね、笑。
舞台に常にいるというのはすごくいいです。
いろいろな役をやるから役が深まらないという批判をなさる方も
いらっしゃいますが、私は逆に、役が深まるのだと思います。
メインの役柄を演じるときに、この役が、他の役とどう絡んでいたか、
実社会により近い人と人とのかかわりを、表現しやすいのではないと
思えるのです。

一番心に残ったのはあの場面なのですが、これは、またいつかゆっくり書くとして、
こちらの場面をご紹介します。

私の心に残ったのは、通信士ブライド(上口耕平さん)と
機関士バレット(藤岡正明さん)のやり取りの場面。
心和む場面でした。
二人の性格の違いが、とてもよく出ていて、人間っていいなぁと感じたのです。
上口さんは、「シスター・アクト」で拝見した時、はっちゃけ役だったような。
今回は・・・
俳優さんって、いい意味で怖いですね。たくさんの引き出しを持ちすぎです!!!

憎々しいオーナー。
貫録の船長。
心憎いサービスの客室係。
責任感が強すぎる一等航海士。
大金持ちなのに温かさいっぱいのご夫妻。

など、ベテラン勢は初日にきっちり合わせてきたなぁという感じでした。

若手が、もう一歩踏み込めていない感じがしました。
考えているのだと思います。
でも、観客に、その思いは伝わっていない、という場面がありました。
台詞を言っている感じが強かったですね。
その場で、感じて言っているわけではないので、台詞に厚みがないのです。
台詞は、自分の思いの一部でしかないし、時には、思いとは反対のことが
台詞だったりするわけです。
その場で感じて、考えて、それがたまたま覚えていた台詞だった、
というふうにならないと、あれだけの事故への責任や対応の台詞に
しては軽すぎるように思いました。
ベテラン勢との差があるので、こんな風に感じてしまいました。
生意気にすみません。
きっと回を重ねるうちに、お芝居の部分が深まっていくと思います。

ミュージカルですからまず「歌」ですが、すばらしいです。
文句ばかりの私ですが、文句ないです、ハイ!

次回は、どんなお芝居になっているか、
どんな場面に心奪われるか、楽しみです。

というわけで、私もリピート致しますよ~~~ぉ。

次回観劇しましたら、もう少し踏み込んで書きたいと思います。

では。

「メトロに乗って」

2014年10月10日 | 観劇記
音楽座ミュージカル「メトロに乗って」

2014年10月10日18時30分開演
新宿文化センター大ホール  10列目上手寄り

原作があるので、ネタバレしても大丈夫のはず、ということで書いていますので、ご了承のほどお願い致します。

2007年に舞台を、2009年に舞台版の映画を観ています。今年は2014年、5年ぶりの再会ということになります。
舞台の最後に、野平先生が、「忘れろ」とおっしゃいますが、忘れたくないことまで最近は忘れまして、この舞台もこんな場面あった???でした。

第一幕は、いろいろな登場人物が登場だけしてきて、互いにどんなつながりがあるのかよくわからないまま進行していきます。原作を読んでいる人は、ちょっとした演技で、「あっ、この人、あの人との関係に気付いたのかも」などと思うのですよね。第二幕で怒涛の人間関係解決となりますので、第二幕を楽しみにしてほしい舞台なのです。

この作品の主人公小沼真次は、最初の方の台詞にある通り「取り返しのつかない人生を送って」います。父親の小沼佐吉が築いた大企業体小沼グループからも距離を置き、家族との関係もそこそこ、軽部みち子との関係も付かず離れず、のようにふらふらとした人生を送っています。舞台の主人公としては捕えどころのない、魅力的とは言い難い人物です。
それを演じているのが、広田勇二さん。
初演の初日には、この捕えどころのない役を捕えどころなく演じていらしたように思いました。でも、映画で見て、矛盾しているようですが、捕えどころのない役を捕えていらっしゃるなぁと思いました。
今回の新宿公演は、捕えどころがないという雰囲気はありながらも、一歩踏み込んで、真次の心の迷いをはっきりと出していたように感じました。まあ、最後はまた捕えどころのない、他人のことは考えず、父親佐吉譲りの自分のやりたいように生きていくを選択するのですが。
さて、その一歩踏み込んだをすごく感じたのは、アムールにカメラの買い付けの手伝いをして欲しいと頼まれ、それを受け入れるときの歌です。多分、アムール役の益山武明さんの歌いかけ、演技もいいので、相乗効果ということがあるのだと思います。
この時点で、アムールが自分の父親とは知らない真次なのですが、自分にはない「生きる」ことへの情熱や他人を惹きつける魅力を、アムールの中に見つけ、こんな風に生きてみたいと思ったのかなぁ、と。
すべてに諦めて生きている真次ではなく、本当は熱い思いがあるのかも、と、頑張れ、と声掛けしてしまいたくなる真次にすごく共感してしまいした。

少し書きましたが、益山さんがアムールを好演。歌はやや不安定なところもあるものの、いつも前向きで一生懸命生きていた小沼佐吉を演じ切りました。
「星の王子様」でキツネを演じていらした時に、アムールにぴったりかも、と思ったので、それが当たって嬉しかったですね。

お時さんの井田安寿さんは安定の公演。かっこいい闇市時代と、みち子を身ごもっているときの優しさが見事でした。

何と言っても野平先生の勝部演之さん。小説通りに最後を終わらせるのでは、どこで終わりかわからないのでかなり脚色された場面です。ここでの野平先生が本当にいいですね。

軽部みち子の美羽あさひさんも素晴らしい歌声でした。小さな幸せをしっかり受け止めて生きてきたであろうみち子を好演していました。

昨年の秋は「ラブ・レター」で新宿文化センター大ホールでした。かなりう~~~んという音響でした。音が回るのか、アンサンブルになると歌詞は殆ど聞き取れませんでした。
残念ながら、今回も同じでした。
もう少し小さなホールで観たら、もっと熱い思いが伝わってくるのではないかなぁと思いました。ちなみに、初演は、改装前の東京芸術劇場中ホールでした。改装後のあのホールでこの舞台を観劇したかったですね。

新宿文化センターでの公演は10月12日まで。
このあと、いろいろな区のホールで上演されるようです。ぴったりのホール探しをするためにリピートするのも一つの楽しみかもしれませんね。

「ウレシパモシリ」千秋楽 終演後イベント・レポート

2014年06月16日 | 観劇記
千秋楽 終演後イベント・レポートと銘打ったものの、相当出来の悪いレポートでございます。穴だらけです。穴埋めして下さる方がいらっしゃることを期待してアップしました。


通常の終演となりました。いつもはそこで「本日はご来場ありがとうございました。・・・」みたいなアナウンスですが、阿部義嗣さん登場。「ここに集まれるキャストを呼びたいと思います。」と言うと、出入り口から、あるいは客席からキャストが舞台上に大集合。
「ウレシパモシリ」を会場全体で歌いました。
以下、「 」内はキャストの皆様のコメント概要です。ところが、全然思い出せない方もいらっしゃるのです。本当にごめんなさい。あと、「ありがとうございました。」とか「再演したい」とかはほぼ省略しています。順番も違っているかもしれません。
( )の中は、私からのコメントです。

阿部義嗣さんから挨拶
「全69回公演、無事終了しました。本当にありがとございました。
5月の稽古から始まり、大先輩に囲まれ、胃が痛くなったり、気持ち悪くなったり、いろいろ大変でした。」
(義嗣さん、本当にお疲れ様でした。ほとんどの公演でお客様の案内をして下さいました。いつも背中をぴんと張って、物静かなそのたたずまいに心惹かれていました。この方なら、きっと悩みながらも、カンパニーを引っ張っていくことが出来たんだろうと思っていました。少し、やつれられたようで心配しました。少しゆっくり休養なさって下さいね。)

阿部裕さんからコメント
「義嗣さんの胃が痛くなったのは、私が原因です。とても好きな作品なので、言いたいことは全部言わせてもらいました。」
(義嗣さんがやつれたのは、裕さんのせいか・・・と。でも、こう言えるのは、義嗣さんへの強い信頼があってこそ。よい作品にしたいという強い思いがあるからこそ、ですね。裕さんの古市、本当に好きでした。作品への、古市への愛情がヒシヒシと伝わってきました。)

佐山陽規さんからコメント
「普段のミュージカルと違い、役柄がなくて歌うので、とても不思議な気持ちを体験しました。また、12曲歌うのですが、12公演休みがなかったことがあり、144曲歌いました。死ぬかと思いましたが、意外に大丈夫で自信になりました。」
(12公演!10回目を聴いたようです。さすがにお疲れかも、と心配になっていました。ところが休み明けにお聞きしたら、二日休んだからか復活していらして、なにか、さらに突き抜けた感じになっていて驚愕いたしました。)

田中利花さんからコメント
「朝、話したくない人、って聞かれたときに「はい」って一番に手を挙げたのに、あてたわね。」
(上のコメントが面白すぎて、本文を忘れてしまいました。本当に申し訳ありません。占い師は、とても個性的でした。コメディな場面なのかと思いきや、この作品で一番大切な、そして心に響くセリフを担当するのです。このあたりが、この作品の脚本のよくできているところだなぁと感じます。)

キム・スンラさんからコメント
「もうすぐ50歳になるのですが、この「ウレシパモシリ」の歌を歌えて本当によかったし、この歌を歌うために50年歌ってきたのかもしれないと思います。ことばは物足りない感じです。どうやってこの思いを伝えればいいのか。とにかくありがとうございました。」
(一度も舞台を拝見せず、申し訳ありませんでした。コメントをお聞きして、次の機会があれば拝見したいと思いました。)

宮川浩さんからコメント
「海に行こうと思ったのですが、「ウレシパモシリ」の千秋楽と聞きつけてやってきました。」
(本当に海に行くような服装でした。オレンジのシャツに、半ズボン。帽子にグラサン。若い!!!宮川さんと呼ばれなかったら、気が付きませんでしたね。この人が殺し屋古市を演じたとは信じられませんでした。羽根渕さんはキャストの衣装、阿部さんは黒っぽい服装ですよ。もう、宮川さんの服装だけで大爆笑でした。というわけで、本文忘れました。)

羽根渕章洋さんからコメント
「最後の回に舞台に立てたこと、そして、この作品に出演できたことに心から感謝しています。」
(もう少し、コメントがあったと思うのですが、すみません。一番小柄な古市でありながら、存在感たっぷりでした。ジェルマンが「古市さん悪くない」というセリフが一番しっくりきたのが羽根渕古市でした。)

じゃいそんさんからコメント
「僕も海に行こうと思っていました。ではなく、昨年も出演したのですが、今回もオーディションを受けました。義嗣さんに、「受かったらどんなジェルマンを見せてくれるの?」と聞かれたので、昨年よりよいものを見せます、と答えて今回も出演できました。来年再演したらもっといいジェルマンを見せますので、また、出演したいです。」
(日本語がすごく上手くて、びっくりしました。宮川さんとほぼ同じような服装でしたが、宮川さんほどの衝撃はなく、コメント記憶していました、苦笑。あのカタコトの日本語は役作りだったんですものね。5月に拝見した時と、6月に拝見した時で一番印象が変わったのがじぇいそんさんでした。このカタコトの日本語は、ジェルマンの役作りのハードルを高くしていますよね。コトバで伝えられないことを演技でなんとかしなくてはならないからです。それが、すごく伝わるようになっていたのです。)

「ありがとう」を会場全体で大合唱。
最後はキム・スンラさんの提案で「ウレシパモシリ、ありがとう」と替え歌!
「光の子どもたち」で締めくくってお開きとなりました。

「ウレシパモシリ」に出会ったことで、また、私の舞台に対する思いが変化したように思います。また、再会できることを祈りつつ、出来の悪いレポートを締めくくりたいと思います。最後までお読み頂きありがとうございました。

「ウレシパモシリ」雑感 パート2

2014年06月12日 | 観劇記
前回の雑感はちょっと興奮状態でした。
今回はかなり冷静に語ってみたいと思います。

いろいろな舞台を観劇して思うのは、主役の印象を補う脇役の活躍が重要ということです。

これから私の印象をお話ししますが、どちらがいいという話でありませんので、誤解のないようにお願い致します。

小森役は、劇中で別の役もこなしていらっしゃいます。結構重要なのが、古市の運転手です。
最初観劇した時、小森役は松村曜生さんでした。松村運転手は、帽子を深く被り表情をまったく見せません。話し方も感情を表さずに非常に淡々としています。
何度か目かで高野絹也さんを観ました。高野運転手はサングラスをかけていますが、顔を上げ、比較的表情豊かに話します。
そうすると古市という人物の印象も変わってきます。
松村運転手の印象から、古市はとにかく恐ろしく非情であるという想像ができます。
高野運転手の印象からは、古市は恐ろしいけれど、部下には慕われているのかもしれないと想像します。
想像力がたくましい私は、古市の人生を想像しています。病気に対してのこと、人生のあり様、子どもの頃のこと、いろいろ思いを馳せます。
同じ俳優の古市でも、村松運転手か高野運転手かによって違う古市の人生が見えてきます。
古市という役柄が、古市自身を演じている俳優だけではなく、脇役を固める俳優によって印象が変わるのは、とても面白いと思いました。

主役同士のやり取りももちろん舞台の出来を左右すると思いますが、私は脇役がどう支え、主役がその支えにいかに応えるかに結構興味があります。
これは、スポーツにも結構共通しています。スター選手の華々しいプレーを生み出した地味な選手の隠れたファイン・プレーなんかに気付くと、嬉しくなってしまいます。明日から、ワールドカップ。さて、どんな役者(選手)がどんなプレーをして勝利を呼び込むのでしょうか?

「ウレシパモシリ」雑感

2014年06月12日 | 観劇記
雑感ということですので、かなりくだけた内容です。ご了承の上、ご一読下さい。

とお断りを入れたので、あとは勢いをつけて、笑。

2014年5月17日に幕開けした宇宙劇「ウレシパモシリ」。私は5月18日に初見でした。5月中はとても仕事が忙しく、これ一回のみ。6月に入り坂を転げるように、いえ、上昇気流に乗るように、観劇しております。上演時間が2時間を切るというのがミソで、なぜか何となく行けてしまうのです。劇場が駅からすぐですしね。
そして、6月11日は13時の回を観ようと数日前から思っていました。この回だけ観ようと思っていたわけですよ。ところが前日ツイッターに「16時からの回のチケットをお持ちの方限定で」と前提つきの佐山さんAKIRAさんの超ミニミニライブをやります、と告知が出たわけです。この作品はいろいろイベントがあったのですが、佐山さんはどれにも参加されていませんでした。確かに、「唄1」は相当体力使いますし、一日3公演もあったりしましたから、イベントには参加されないんだなぁ。じゃ、まあ行かれる時に行っておこう、と6月11日は13時の回に予定を入れました。
16時の回!!!!!目が点になりました。
でも、ここで行かなかったら後悔するだろうなぁ、と思い、2回とも観ました、苦笑。
はいはい、観ました。
いいじゃないですか、こういうこともあります。
まあ、予定が本当はあったわけです。宇宙劇だけに、ちょっとワープいたしまして、無事帰還できたことでいやぁホッとしました。

ミニライブ、期待を裏切らない素晴らしい世界観をお二人で作り出して下さいました。

余計な話しかもしれませんが、AKIRAさんはそのまま舞台も観劇なさっていました。佐山さんの歌をYouTubeで聞いたとおっしゃっていましたが、客席でお聞きになってどんな風に感じられたのかなぁ?とても興味があります。

実は、友人をこの舞台に誘っていました。その友人が佐山さんの歌をYouTubeで聞いてくれていたのです。で、観終わって、どうだった?と聞くと佐山さんの歌に関しては、「YouTubeで聞くのとは全然違って、何ていうか、言葉にできないけど、わかって。」と。「包み込まれるような、物理的にありえないけど、後ろからも歌が聞こえているような感じじゃない?」と私が手助けすると、「そうそう360度歌って感じ。」と言っていました。作品自体もすごく感激して、ちょっとフラっと観に来ようかなといってくれました。

佐山さんは、役者と距離を取りつつ、歌って下さっています。その間合いが、ものすごく好きです。でも、やはり役者が違うと、歌の感じも違うように思います。まあ、それは私が勝手に役者さんに感情移入できているかによって、聞き方が違うからかもしれませんが。

今のところ、何回観たのかな?かなりトリプルキャストを制覇しつつあります。
こうなるとやはり好みが出てきます。が、久しぶりに拝見したら、全然変わっているということもあり、舞台って本当に変化するなぁと思います。

実は、前回の観劇記で触れなかったのに、もしかしたらこの役の一番のお気に入りだったかもと思うのが、「井上」役の青木結矢さん。もう一度拝見したかったなぁと思うことしきりです。

青木さんもそうなのかもしれませんが、私は何しろ「声」にすごく惚れ込みます。
久しぶりに「古市」が阿部裕さんだったのですが、阿部さんの古市たまらないです。あんなにがっしりしていて、強そうなのに、すごく切ない感じがするのです。古市がジェルに会いに来るシーンで、唄1が古市に歌いかけるようなシーンがあるのですが、そのポジション取りがいいんですよ。もしかしたら、阿部さんは身長があるからそう見えるのかもしれません。まあ、結局唄1に引っ張られている感想なんですが、苦笑。

中村桃花さん演じられる聖になぜかとてもとても感情移入してしまいます。あまり聖という女性が理解できず、私は、けっこう哲治派なので、聖って冷たいなぁと思っていました。ところが、桃花さんのソロを聞いて、なんで泣いてるんだろう?となっていました。人間の声の力って本当に不思議です。

哲治は怒涛の縄田さん続きだったのですが、縄田さんも最初見たときと今日は随分印象が違いました。口笛は前はちゃんと吹けていたような?かなりオッチョコチョイのお兄様から、見た目はどうであれ、心が広く深い人物であると思わせてくれます。石巻で警察からジェルの行方を聞くあたりから最後のくだりがいいです。こんな哲治だからジェルが頼っていたんだなぁとすごく思えるのです。
でも、密かに、すごく熱を帯びてきた今の舞台に中本さんがいらしたらなぁと思うのでした。

怒涛の観劇と、眠さで、相当いい加減なことを書いておりますが、結局のところ、佐山さんの歌です。本当に、言葉に言い尽くせない、歌声で、劇場を満たして下さいます。
是非、言葉に尽くせぬ歌、そして、不思議で、温かい世界観を体感しに、ザムザ阿佐ヶ谷にお運び下さい。6月15日までです。


宇宙劇「ウレシパモシリ」

2014年05月30日 | 観劇記
宇宙劇「ウレシパモシリ」
2014年5月18日12時開演の部
ザムザ阿佐ヶ谷

原作は遠藤周作氏の1959年に発表された「おバカさん」。

 原作が小説ですので、ネタバレということはないですから、簡単なあらすじを書きながら、配役を紹介していきましょう。
 哲治(中本吉成さん)と聖(ひじりと読みます、平川めぐみさん)兄妹のもとに、哲治が以前文通をしていたというジェルマン・ボナパルト(じぇいそんさん)が日本にやってくるという手紙が届く。四等船室に隠れるようにして来日した。哲治達は自宅にジェルマンを招き、歓待するが、聖はジェルマンの汚れた服装や捨て犬(ポールと名付ける、野田久美子さん)をかわいがる様子に失望する。
 3人は繁華街に出かけて、チンピラに絡まれる。ジェルマンを残し二人は逃げてしまう。心配して戻ってきた二人に、ジェルマンは別れを告げる。
 ジェルマンは古市(阿部裕さん)にいたぶられていた娼婦のみどり(黒瀬千鶴子さん)を助けると、みどりは食べ物を与え、謎の占い師(有希九美さん)に寝るところを提供してもらえるよう頼んでくれる。
 占い師がちょっといなくなったところへ殺し屋の古市がやってきてジェルマンを連れて行ってしまう。
 古市は胸を患っていた。そして、兄の復讐をするから手を貸してほしいとジェルマンにいう一方で、川田(足立公和さん)への復讐を邪魔したため痛めつけるのだった。
 古市に痛めつけられ、警察に保護されたジェルマンの見受け人として哲治と聖がやってきた。少しゆっくりするように伝えるが、小森(村松曜生さん)へ復讐をしようとしている古市を止めるため、追いかけて北へ行くという。
 古市と小森が対決し、ジェルマンも巻き込まれる。病気が悪化している古市も倒れ、ジェルマンも沼にはまってしまう。小森がジェルマンを瀕死の状態に追い詰めた後、古市に最後の一撃を加えようとしたとき、沼からジェルマンが飛び出してその一撃を阻止する。
 古市と小森のいさかいは事件となっていた。ジェルマンの行方を捜している哲治と聖に警察は瀕死の古市が見た話を伝えた。
「気が付くと、一羽の白い鳥が空に飛び立っていった」と。

こんなところでしょうか。

ジェルマンは一体何のために遠いフランスから日本にやって来たのか?
古市はその後どうしたのか?

私は、推理小説が大好きで、ここ数日中に「名探偵コナン」と「相棒」の映画を見ていました。そうなると、謎が謎のままではいやで、苦笑。
でも、よく考えれば、世の中なんてよくわからないことばかりです。コナン君の名言「真実はいつも一つ」は理想だけれど、そんな風にはうまく行きません。

古市も迷いに迷っていました。ジェルマンに出会っていていなくても、自分の生き方に自分で疑問を抱いていたのだと思います。暴力、暴言の裏にあるさびしい、弱い古市。
阿部さんの演技に大注目です。
古市によって、この舞台はかなり色がかわるのだと思います。主役はジェルマンなのかもしれませんが・・・。古市から目が離せません。
そのわけは、舞台だけではなく、現実の社会が、この時代を再び歩むかもしれないと感じているからです。
古市は殺し屋です。しかし古市は、戦争の被害者です。戦争が起こればこういう人がどんどん出てきてしまいます。戦争の本当の敵はどこにいるのだろうか?この作品は第二次世界大戦からまだ間もない時代が描かれていいます。ですから、敵はアメリカということになります。しかし、古市が復讐を考えていたのは同じ日本人です。古市の悪人ぶりは、古市の生まれながらの性(さが)ではなく、時代が、そして軍隊という怪物が古市に押し付けたものだったのではないかと思えるのです。戦争というのは、「敵」と認識している「敵」ではなく、「本当の敵」から目をそらせるために権力者が起こす最悪の業だと思います。
古市のような思いを、自分の子どもや兄弟にさせていいはずはないのです。

ストレート・プレーでも音楽が効果的に使われることが多いわけですが、それがインスツルメンタルではなく、ソングだという感じです。
14曲ぐらいあるのだと思いますが、どの曲も曲想がかなり違います。それを主に2人の歌い手が歌い尽くします。

歌については後で触れたいと思います。

この作品は音楽劇という形をとっていて、演じ手と歌い手が分かれているのですが、実は、演じ手もミュージカル界で大活躍をなさっている方々ばかり。歌わないのが勿体ないと思うのは私だけではないはずです。
しかしながら、その一方で、ミュージカルの舞台だとついつい「歌」に関心がいって、「演技」に注目しないことが多いと思うのです。
これは、私の主観ですが、ミュージカルでも「演技」がとにかく土台です。「演技」の台詞の代わりに「歌」があり、演技の一表現として「踊り」があるだと思います。つまり、演技の技量がなくては、どんなに歌がうまくても、薄っぺらな歌唱でしかないと感じています。
ミュージカル俳優の皆様の場合、歌がなくて演技だけを見ることが出来る機会はあまりないので、ファンにとっても、「演技」の素晴らしさに気付く、すごくいい機会だと思います。
私も、阿部裕さんってこんな悪人だったのか、と思ってしまいましたから、笑。
中本さんは、ミュージカル座の舞台で何度か拝見しています。じっくり演技をなさる役は拝見したことがありませんでした。この舞台では、すごく普通の、本当に普通のおにいちゃん役の哲治を好演していらっしゃいます。この「普通の」っていう役所をここまで「普通」に演じるってすごいって心から思いました。そして懐が深い人物なんだなぁと思わせてくれます。それだからこそ、ジェルマンが哲治を頼って来日したんだと思えるのです。

このそうそうたるミュージカル俳優の代わりに、また、語りかけるようにほとんどの歌う唄1の佐山陽規さん、唄2の日野原希美さん。結構プレッシャーでは??????
佐山さんの歌はコンサートなども含めたくさん聞いてきたはずですが、今までとはまた違う曲想の曲を歌われていて、また、新たな魅力に出会ったように思います。
佐山さんが歌ったことで、曲が輝いたこともあったでしょう。そして、素晴らしい曲が佐山さんを輝かせて下さっているようにも思います。
佐山さんファンとしては大満足です。
ジェルマンが古市に復讐をやめさようと汽車で東北へ向かうのですが、ジェルマンが古市に再会し、「詩、ポエムを作ったから」と伝えます。そしてそのポエムを佐山さんが歌うのですが、他の歌と違って、ジェルマンの代わりに歌うという感じなのです。ここで、何となく、ジェルマンは何のために日本に来たのか、ジェルマンは何者なのか・・・という疑問に、もしかしたら、と気づくのです。是非、劇場でその不思議な感覚を味わって頂きたいと思います。
でも、ちょっと、他の唄1の方の歌も聞いてみたくなるのです。曲想がバラエティに富んでいるので、もしかして、あの曲はかなり違う雰囲気なのではと想像し始めると止まらなくなります、笑。

とてもいい舞台だと思いますが、一つ気になったことがあります。「季節」を表す服装です。聖はほぼ夏仕様。でも、ほかの人は早春か、秋という感じなのです。変なこだわりですが、私は日本人として季節をとても大切にしています。最近は、異常気象なのか、季節も以前ほど着実に進まないこともあります。が、やはり四季があり、季節が私たちの行動を決めることもあります。なので季節は大切にしてほしいのです。


最後に、ザムザ阿佐ヶ谷という劇場についてです。小劇場なのでキャストの皆様の息遣いがダイレクトに届いてきます。小劇場はこういう魅力もあるのですが、小劇場の恐怖というのもありまして、靴を脱ぐ、タイトスカートはNGだった、とかいろいろ体験してきました、笑。が、ザムザは「自由席には背もたれ(座椅子)がない」というだけです。靴も履いたまま、椅子の高低も普通です。なお自由席でも座椅子の貸し出しもあるようです。一日に二公演とか観るのであれば、座椅子があった方がいいと思います。

6月15日まで阿佐ヶ谷駅のそば、ザムザ阿佐ヶ谷で上演中です。