江戸時代には、「女房を質に入れても初鰹」と言われるほど初鰹は珍重されていたらしい。
文化9年(1812年)3月25日(旧暦)の記録によると初鰹の入荷は17本だった。
6本は将軍家が買い上げ、3本は有名な料亭「八百善」が買い、残りの8本が魚屋ながれ、
そのうちの1本を歌舞伎役者の中村歌右衛門が三両で買い上げたらしい(鬼平犯科帳で読んだ)?
現在の貨幣価値だと初鰹1本が9~18万円ということになるそうだ!
「鎌倉の海よりいでし初かつお みな武蔵野のはらにこそいれ 」と詠まれるように鎌倉の鰹は当時はブランド鰹だったそうだが、
もっと近くの三浦辺りで獲れて船で運ばれてくる鰹のほうが、鮮度がよくて高値で取引されたそうだ。
もっとも女房を質に入れないと鰹を食べられないような長屋の熊さん、八さんが鰹を食べるのは、
もっといっぱい獲れだして、鰹の値が下がってきてからだ。
幸いにも現代人の私たちは、漁船、漁法の進化のおかげで、女房どころか何も質入れしなくても初鰹を食える。
特に私のように南四国に住んでいると、目に青葉…の季節になるよりずっと前の2月から初鰹を食べることができる。
茹鶏とたたき胡瓜の梅肉和え
鶏の胸肉か笹身肉を吸地加減の昆布出汁に生姜の皮や葱の端っこなどを入れて、70℃くらいの温度で火を入れる。
タンパク質は42℃くらいから固まりはじめて、68℃くらいで凝固します。90℃を越えると脱水してしまう。
胡瓜は縦半分に切り、毛抜きの背などで種を取り除いて、すりこぎなどでたたき一口大に切って塩をしておく。
梅肉に砂糖少々、醤油を加え、適度な濃度まで出汁か煮切り酒でのばして和えて、菜種油をかけてあります。
釜揚げしらすの真薯 蕨 ミント 清汁仕立
ここ3年くらいで鰹節の値段が2割くらい上がっています。鰹の漁獲量が落ちているのです。
何故かというと、南シナ海などの南方の海で、巻き網で日本にやってくる前の小さな鰹を獲ってしまうからです。
しかもそれらは、その国(中国など)でほとんど消費されることなく、缶詰やペットフードになって欧米に輸出されています!
鮪を云々という前に、日本料理の根幹にも関わる鰹の漁法の規制のほうが大問題だと私は思っています。