2017/11/04
「140.うつとりと桃の奥には桃の種
(吉田汀史
/うっとりがこの句のポイント桃の内しわくちゃの種までが甘美に
/やわらかく甘美な味の桃の実よ桃源郷はうっとりとせん)」
「141.腕時計の手がたれてをりハンモック
(波多野爽波
/腕時計した手を垂らすどっきりもハンモックにて寝るは安心
/ベランダにハンモックなど吊るしては昼寝するのは贅沢なとき)」
「142.乳母車夏の怒濤によこむきに
(橋本多佳子
/乳母車夏の怒濤はわかるけどなぜ横向きか理解及ばず
/横向きはたぶん日除けの効果あり怒濤で横になったようだと)」
「143.馬駆けて菜の花の黄を引き伸ばす
(澁谷道
/菜の花の生える長さ変わらねど馬駆けそれを伸ばすといえり
/相対性理論で距離が伸びるかに錯覚をする一句でありし)」
「144.湖といふおおきな耳に閑古鳥
(鷹羽狩行
/湖の形が耳に似たるかな閑古鳥にて前句を否定
/閑古鳥客商売でよく鳴けり数も少なく湖淋し)」
「145.海に出て木枯返るところなし
(山口誓子
/木枯らしが山から吹いて海に出る出てもいく宛ないと知りたり
/木枯らしもあまた呑み込む海なれば)」
「146.梅ケ香の枝を離れてありにけり
(粟津松彩子
/香りにと音符つければ枝はなれそこいら辺に漂うさまが
/匂いとは小きシャボンの玉のよう奈良の都の立ち上がりこし)」
「147.浦上は愛渇くごと地の旱
(下村ひろし
/地の旱たぶん焦土のことなりし愛は渇かぬこの浦上で
/広島は愛渇くごと地の旱⇔成り立つのかな⇔不成立)」
「148.雲海にくらき磁石が北を指す
(千代田葛彦
/山の上天候悪く薄暗い取り出す磁石北を指したり
/なんとなく尾根道なれど分かれ道そのタイミング磁石を見るか)」
「149.運動会午後へ白線引き直す
(西村和子
/あるあると場所によっては何回も線引き直す運動会
/午前から午後に至れる中間に線引き直す運動会)」