気温がますます下がってきている。 明日になるともう弥生三月だというのに昨晩は最低気温-8℃、今日の日中最高気温は-2度だったらしい。 けれど上天気でそんな中自転車に乗って駅まで出かけるときには路上には1cmにも満たなくとも粉雪が積もっていてそれが東の風に吹かれて砂が舞うように地表を移動していた。 朝のラジオでは昨晩からスキポール空港とライデンの間は電車が不通になっているが9時には通常運転が見込まれていると伝えられていたけれど10時半に駅に着いてみると階下の表示では不通となっていたものがプラットホームに上がってみると時間通りに運航を始めるところで、それに乗り込むと5分も待たず電車はアムステルダム方面に動きだした。
アムステルダム・レイリーラーン駅から10分ほど歩けばオランダ癌研AVLに着く。 公共交通機関で行くことにした。 雨や酷い天気なら車で行くことも考えたが今日のような青空に陽が照る日には幾ら寒くとも歩くのがいい。 あまり寒すぎれば市電で行くことも考えられるがそれほど寒ければ市電も止まる可能性があるのでそうなると結局通い慣れた道を辿ることになる。 AVLに通い初めてもう1年になる。 去年2月ごろから検査に通い、5月末に手術を受け、そこに3週間弱入院し、退院してからも折に触れ通院し、落ち着いてからは手術後3か月ごとのCTスキャンで癌が再発していないかどうか検査する。 それで今回今日で3回目となる。 検査の結果なにもなし、となれば少なくともこれから次のスキャンまで3か月は生きていられる、ということだ。 再発の可能性は手術後1年半から2年ぐらいまでがかなり高いらしい。 それから徐々に可能性が低くなるもののそれがゼロにはなかなかならないそうだ。 これは始めから言われていた。 あなたの癌は一生付き合っていくものと思ってください、と。 3か月前までの手術後半年は今の技術で判定する限り癌の活動は発見できなかった、つまり言葉をならせば、何ともなかったということだ。 先のことなどわからない。
CTスキャンの前に血液検査の為に採血される。 これもルーティ―ンだ。 今回11時を周って癌研に着いて採血セクションで自分の通院票のバーコードを機械で読み取って出てきた番号札を手に取った途端、待合室のモニターに自分の番号が出て3番ブースに行くように指示された。 前回は20分ほど待たされたのではなかったか。 寒波の影響なのか待合室には誰も居らず「営業中」なのかどうか一時は心配したからそのブースに落ち着いた時にそのことを訊いてみた。 寒波の影響ではないのだろうけれどこういう時もたまにあるということだった。 癌は曜日にも天気にも関係なく蔓延るのだ。
CTスキャンの約束時間は2時50分だった。 少なくとも2時間前までには採血しておくこと、開始1時間前から開始時までに1リットルの水を飲んでおくこと、飲んだあとはトイレにはいかないこと、とされているのもルーティーンだ。 水を飲み始めるまでに腹に出来るだけスペースを開けておくために早めにカンティーンのスープと小さなパンで昼食にした。 水を飲み始めるまで2時間ほど時間があったのでアイパッドで音楽を聴きながら持って行った文庫本を100頁ほど読んだ。 飲み始める前にトイレに行って水気を出しておいた。 45分で1リットルの水を飲んで放射線科の待合室で何人かの人に混じって待っていると約束時間の15分前に自分の名前が呼ばれて今では慣れた Toshiba製 CTスキャン Aquilion CX の部屋に入った。 大きなリング状の機械にスライドして出入りするベッドの横になると腕から造影剤を注射されてスキャンは10分ほどで済んだ。
寒いのでこのまま外に出て駅まで歩くと飲んだ1リットルの水が効いてきて途中で小便がしたくなるので暫く静かな待合室に移動してそこで読書を続けた。 その場所は豪華なホテルのラウンジ然としたところで巨大なガラス窓からは日光がふんだんに入り気持ちが良かった。 壁には羊毛で造られた美しい敷物が掛けられ眼を楽しませてくれた。 同じ作家の作品がアムステルダム市立図書館の壁にもかかっているのをもうだいぶ前に観たことがある。
-4度ほどの外気の中を10分ほど駅まで歩いても大丈夫なようにトイレに行って膀胱を空にしてから外に出た。 毛糸の帽子を耳まで覆って被っているけれど毛糸が細いのか編み目が粗いのか寒さが入って来る。 手袋にしても薄い皮の手袋をしていると寒さが指の先から沁み込んできて手袋が用をなさないほどにも冷たい。 去年も一昨年ももう一つ持っている厚手の手袋を嵌めたことがなかったのだが明日からはそれをしなければ長くは耐えられないようだ。 その手袋を嵌めると暖かいことは暖かいのだが指の自由がきかなくて手が不自由になる。 駅まで歩いて戻る途中、このルートで雪道を歩いたのは今日が初めてだと気付いた。
来週の水曜にまたAVLに戻ってきて担当医から今日のスキャンの結果を聞くことになっている。