暇つぶし日記

思いつくままに記してみよう

岡部源蔵君だった

2018年02月16日 00時58分17秒 | ジャズ

 

2018年 1月 13日 (土) 

土曜のマーケットをぶらぶらしながらあつあつのムール貝の揚げ物を頬張りその後市立図書館でミントティーを飲みながら雑誌をみて時間を潰し、近くのジャズ・カフェー定例の4時からのライブを覗こうと予定していた。 予め今日の出演バンドをネットのサイトで見て置いて興味があれば夕飯時まで居座るのが常なのだがこのところ学生上がりのバンドで稚拙なものや凡庸なバンドが多くそれに名前も知らないバンドが多いから予め YouTube などでそんなバンドの予習をしてからでかけることにしている。 この日のプログラムには Namyuol Cho Trio としてだけしか出ておらず名前から韓国名のように見え、何年もすぐそばのマーケットの青物屋でアルバイトをしながらハーグの音楽院でドラムを勉強しこの頃名前もでてきた彼かもしれないと You Tube でみればドラムスであっても顔貌が違う。 そのドラマーの韓国での演奏を二つ三つみればなかなか今風のものを演っておりこれなら居座ってもいいと思いながら図書館で4時を周る頃までいたのだった。 

それにしてもオランダにアジアからジャズの勉強をしにくる若いひとたちのなかでは韓国人が多いのに驚く。 それにドラマーがおおいことだ。 女性アルトの Tineke Postema にも女性ドラマーがいてそれが韓国人の若い女性だったこともあるし、またヴォーカルを勉強しに来ている女性にも何人かあったことがある。 それに比べて日本人のすくないことにがっかりする。 そんなことを思いながらももう演奏が始まっているカフェーに入って行くと見知った顔がアルトを吹いているのをみて驚いた。 岡部源蔵君だった。 

オランダの優れたジャズの新人に冠される Young VIP の称号を与えられツアーで幾つもの舞台に立てる特典なども得て、スポンサーもつき日本演奏旅行も去年務めた、一際他から抜き出てこれから新進から中堅に入るオランダ滞在9年目となるアルトサックスの岡部源蔵は去年3枚目になるCD,  Disoriental, も Challenge Records  CR 73442 として5月にリリースしている。 このCDの一曲目はオランダのジャズの殿堂BIM HUISライブとして You Tube で次のように聴くことができる。

https://www.youtube.com/watch?v=EntDZfYP9SI

 自分にとってこのコンサートは去年忘れられない思い出となるものだった。 手術がうまくいって今のところ癌の再発がない現在からするとその時は生死がどうなるかいう手術前、ケモセラピーの合間の副作用が少ない時期に家族がセットしてくれ一家四人で出かけたコンサートだったのだ。 出番前に家族に源蔵君を引き会わせこのライブハウス初登場を祝ったのだったがこのコンサートで彼の一層の精進の様子を確認出来て嬉しいものだった。 そしてこれ以来9か月ぶりで地元のジャズカフェ土曜ライブで突然の再会となったのだった。

Namyuol Cho Trio

Genzo Okabe (as)

Namyuol Cho (ds)

Luciano Poli (b)

この日の他のメンバーは自分には初めてで岡部当人にとっても顔は知っていても一緒に舞台に立つのは初めてだとのことだった。 ベースのルチアーノ・ポーリがこの仕事を見つけてきて丁度韓国から戻ってきていた チョー を頭にしてでっち上げたのだと言った。 だからこの日はスタンダードをやり、自分たちの創作はステージに登らなかった。 自分にとってはオカベファミリーというユニットで創作を聴いて来たから岡部のスタンダードの料理ぶりに興味があったのだが彼のソロでのインプロヴィゼーションには眼を見張るものがあった。 それは単に曲のコードを既成の枠で分解・再編しその中で他との差異化を図る演奏家が多い中でコード枠を超えてモード、リズムをも曲に合わせてはめ込み、持ち前の抜群のフィンガリングで疾走感を伴い、聴くものに驚きとニヤリとさせる軽みとその後の適度な湿度を感じさせ、凡庸な演奏から圧倒的な差異化をはかるものであり、あまり多いとも思えないまた特別にジャズに興味がないような聴衆の耳をも引き付けるに充分なパーフォーマンスだった。 岡部の演奏は日頃3つのCDで聞きなれていたのだがこの日の演奏に日頃に無い中低音の強さと湿度を感じてそれを問うと1か月ほど前から新しいアルトを試していてそれはアムステルダムの工房で造られたものだということだ。 この日サックスの歌口から2mほどのところから聴いたところでは、ある部分ではテナーの中・高音部に近いような、今までの彼の音色に幅をもたらす響きであるように思われた。 完全に慣れるまでまだ暫く時間がかかると言っていたがもし次のCDにスタンダードでもはいるものなら効果的なものになるに違いない。

尚、四年前に初めて岡部源蔵を聴いた時のことを次のように記している。