オランダのテレビガイドを見ていたら全米脚本家組合(The Writers Guild Of America)のシナリオライター達が今までに創られたテレビシリーズの中から101を選んだアンケート結果がでたそうで、その10位までが示されていたのでそれに目を留めた。 この組合は2007年に待遇改善を要求して12000人がストをした事もまだ記憶に新しく、またプロの彼らが選ぶものは一般視聴者が選ぶものとも少しは趣きが違うだろうからどんなものが出ているのかに興味があった。
それでそれに付け加えた50位までの結果がこれだ。 テレビが始まって以来のシリーズを概観するものであり組合員の年齢構成がどうなっているのか知らないけれど概ね20代後半から60代半ばまでがその枠なのだろうと想像するがどの辺りが一番の中堅なのかもこの結果に反映しているものと考える。 30前のライターにとっては自分が育ってきたときに観たものが強く印象に残るだろうし、当時あれが面白かった、これもよかったと段々に過去のものを「学習」していった結果残ったものもあるだろう。 60代のライターにとってはテレビの勃興期から10年単位などとして外観してみた意見もあるだろう。 自分も戦後日本のテレビの勃興期にアメリカのシリーズを観て育った世代であるから特に50位以下に懐かしい名前が多く出ているのをみてここは我々の世代のドメインだと実感したりした。
1. "The Sopranos"
2. "Seinfeld"
3. "The Twilight Zone" (1959)
4. "All in the Family"
5. "M*A*S*H"
6. "The Mary Tyler Moore Show"
7. "Mad Men"
8. "Cheers"
9. "The Wire"
10. "The West Wing"
11. "The Simpsons"
12. "I Love Lucy"
13. "Breaking Bad"
14. "The Dick Van Dyke Show"
15. "Hill Street Blues"
16. "Arrested Development"
17. "The Daily Show with Jon Stewart"
18. "Six Feet Under"
19. "Taxi"
20. "The Larry Sanders Show"
21. "30 Rock"
22. "Friday Night Lights"
23. "Frasier"
24. "Friends"
25. "Saturday Night Live"
26. "The X-Files"
27. "Lost"
28. "ER"
29. "The Cosby Show"
30. "Curb Your Enthusiasm"
31. "The Honeymooners"
32. "Deadwood"
33. "Star Trek"
34. "Modern Family"
35. "Twin Peaks"
36. "NYPD Blue"
37. "The Carol Burnett Show"
38. "Battlestar Galactica" (2005)
39. "Sex & The City"
40. "Game of Thrones"
41. (tie) "The Bob Newhart Show;" "Your Show of Shows"
43. (tie) "Downton Abbey;" "Law & Order;" "Thirtysomething"
46. (tie) "Homicide: Life on the Street;" "St. Elsewhere"
48. "Homeland"
49. "Buffy the Vampire Slayer"
50. (tie) "The Colbert Report;" "The Good Wife;" "The Office" (UK)
念のために100位までの名前を下に示す
http://www.wga.org/content/default.aspx?id=4925
これを見ているとアメリカの作家たちの好みがやはり名のあるシリーズに固まっている事は当然のこととして昔のシリーズの名前が間に挟まっているのが面白く、それぞれ見た頃のことも思い出し懐かしくも納得する気持ちにもなる。 1.は意外な気もするし当然のような気もするのだがなぜこのシリーズかというところにアメリカ映画の伝統であるギャング、マフィア、の数々の過去の映像を経験した果てに、特にコッポラが70年代から20年弱描いてきた映画のシリーズから10年経ってミラニアムに突入したころで重厚でドラマチックさを廃したこのマフィア・ドラマには誰もが魅了されたのであるから現在でもこのジャンルの系譜を辿る者にはこれを観たらこの後このジャンルで本作を凌ぐものを作るとなるとそれはなかなか簡単ではないだろう。 ライターにとってこのシリーズには様々な人間模様のアヤがさまざまに今までのマフィアの既成概念を壊したり後付したりするのに貢献するのだがその人間関係が驚くほど我々の普段の生活の襞を絡ませて悲喜劇こもごもに構成されているところにライターをうならせるものがあったのだろうと推測する。 それにその記憶がいまでも新しいことも関係しているのだろう。
3.を別としてこのランクにはコメディーというかシットコムが多いのに気付く。 この40年ほどでテレビをザップしていてよく見たものばかりだ。1,4,5,7,8で昔の4が入っているのに驚く。 人種差別的で女性の敵、頑固親父の皮を被りそれでも周りにやり込められやせ我慢をしたりするところが人気だったような気がするけれど今となってはこの中のカミサンの扱いにフェミニスト達が目くじらを立てたし今でも問題にするところがあるのではないか。 こういうシリーズがここに来るというのはこのギルドには圧倒的に男が多い事とその思想性が現れているようで興味深くうけとった。
8,15,19、23などは80年代の中ごろによく観た記憶があるけれどそれが50位以下になるとそういうものがどっさり入っていて久しぶりにみる題名にその当時の空気に触れたような気がしてその懐かしさにホッとする。シットコムでは78であったり96の「ソープ」であったりする。 とくに警察ものでは15が面白かった。 今沢山ある警察ものでチームワークやそのなかでのそれぞれの関係、キャラクターが次々に忙しく交差するところが現代の数ある警察関係ジャンルのプロトタイプとしてみると当時その出来のよさに関心もするのだ。
3が意外だった。 やはりUFOなり不思議ものを追っていく26,27に繋がるのだろうが3があったからスピルバーグの「未知との遭遇」が出たのではないかとも忖度する。
日本を離れてからもう33年経つ。 海外でも配信される日本のケーブルテレビはとっていない。 だから日本の作家の連盟が、もしそういうものがあるとして同様のアンケートをとるとどうなるのか興味があるけれど、もしそれが発表されても殆んど知らないものばかりで埋まっているに違いない。 こどもの頃は「てなもんや三度傘」や「番頭はんど丁稚どん」などの大阪のコメディー、「シャボン玉ホリーデー」などのバラエティーで育ったし「三匹の侍」や「月光仮面」の真似をして遊んだ覚えがあるけれどコメディー、バラエティーは別にしてちゃんとした大人がみるような番組はしらない。