ほよほよさんぽみちNEW

いつでも君のこと好きだったよ

眩しくて風が強かった

2024-03-23 19:10:50 | 日記
 きのうは第196回神楽岡歌会だった。

 参加者は13名。2時間で13首なので比較的時間がある。ように思うけれど、結構最後はだんだん時間がなくなってくる。

 私が出した歌は

 ・新聞紙に魚を包んでいたころの母の買い物かごの底力  藤田千鶴

 4票。字あまりがどっしりしていて歌と合っている、人が生き生きしていたころの買い物かごの受容能力や母の逞しさが描かれている、「底力」はなくてもいい、郷愁に騙されている、などなど貴重なコメントをたくさんいただいた。

 今回、私が一番いいと思った歌は

 ・眩しくて風が強かった 五年前の十連休はよく晴れていて  三潴忠典

 詠草集が配られてこの歌を読んだ瞬間、とても切ない気持ちになった。五年前なにかがあった、なにもなかったとしても「眩しくて風が強かった」ことをはっきりと作者は記憶している。ここには取り返せない時間が刻まれている、と思った。

 五年前って令和になった年かな、コロナの直前か、いったいなにがあったか少しはヒントがほしいなど、意見があったけれど、そんなことはどうでもいい、と思った。どの時点からでもさかのぼればいい。限定してしまうとよさがなくなってしまう。

 この歌を読んだひとが、自分の過ぎ去った時間を思えばいい。私はこの歌からは晴れ渡る海を見下ろしているような景が浮かび、五年前、確かに自分を取り巻いていた背景やいまはもういない人たちのことを思い出した。

 ウクライナの人がこの歌を読んだら、奥能登の人がこの歌を読んだら。まったく思い描いていなかった五年後の今から、陽を浴び、風に吹かれていた五年前の日常を思うかもしれない。

 この歌にはそういう誰にでも通じる切なさがある。



 
コメント
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