赤帽悲哀とあります
「恨めし新型トランク」「老婦人まで自前で運ぶ」「車でスイスイ」車付のトランクに赤帽さん仕事を奪われ嘆き節であります。
東京駅と上野駅構内で乗客の手回り品を運搬している赤帽さんグループが、最近急速に普及しはじめた車付トランクに職を奪われ、いよいよ瀬戸際に追い込まれたという、昭和49年8月25日の記事です。
この10年間に20人が職場を去り、残った人たちも大幅な減収に泣いています。東海道新幹線の発着するホームでは、手ぶらの赤帽さんのわきを、老婦人が車付の大型トランクを軽々と押して歩いております。赤帽さんたちは「時代ですな。女、子供たちにまで重い荷物を運ばれては、もう商売もあがったりだ」と、秋風に肩をすぼめています。
赤帽一筋40年というAさんは語ります。「とにかく商売かたぎだね。二、三年前から急激にふえ始めた。今年など10個のトランクのうち、8個近くが車付の新型トランクだ。どこへでもすべらせられるし、階段もエスカレーターがついて苦労しなくなって……」。
上野駅のベテランさんも語っています。「人力車や都電がなくなっていくように、赤帽の仕事も時代の波に消えていくのだろうか。一昔前は軽井沢の別荘へ行く政、財界や芸能人がそろって上野駅から出たものだ。赤帽は総動員で大忙しだった。その別荘も今では車で行くようになってしまった……」。
また一つ旅の風物詩、旅の風情が消えていくわけですね。