十一月十三日 汽車で四里、徒歩で三里の道則を<st1:MSNCTYST w:st="on" AddressList="44:玖珠町;" Address="玖珠町">玖珠町</st1:MSNCTYST>へ。予定の行き先は<st1:MSNCTYST w:st="on" AddressList="01:森町;" Address="森町">森町</st1:MSNCTYST>らしいが二時に到着、二時間行乞したもののしぐれて寒いので丸屋なる旅籠に宿泊です。山国は既に冬の面持ちでどの家にも炬燵が開いており、駅にはストーブが焚かれて自分の寒げな様子が手に取るように分かると言ってます。昼の弁当は草の上で食べ「寒かつた、冷たかった…」。<o:p></o:p>
行乞での繰り言です。吊り下げられた針に食いつく魚、投げられた餌に飛びつく犬のようになってはならない。そのための修行なのに今日の行乞に限らず、非人情的態度の人々に接すると少なからず憤慨と憐憫を感じると嘆き、その場合は観音経を読誦し続けると言います。「今日も自ら省みて自ら恥ぢ自ら鞭打った」と殊勝であります。<o:p></o:p>
そうは言うもののそんな日は寒さも一入感じ、頭も重くぼんやりとして車に轢かれそうになります。そして山頭火らしく「…危ないことだつた、もつともそのまま死んでしまへば却ってよかつたのだが、半死半生では全く困り入る。」<o:p></o:p>
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あふるる朝湯のしづけさにひたる<o:p></o:p>
ここちようねる今宵は由布岳の下<o:p></o:p>
下車客五六人に楓めざましく<o:p></o:p>
雑木紅葉のぼりついてトンネル<o:p></o:p>
尿してゐる朝の山どつしりとすわってゐる<o:p></o:p>
自動車に轢かれんとして寒い寒い道<o:p></o:p>
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今日の宿も昨日と比べても申し分ないと褒めます。着くと温かい言葉、炭火、お茶、お茶請(漬物)。そして何事も気持ちよくやってくれる。これだけの接待で二十五銭であると感心しております。<o:p></o:p>
翌日はお目当ての<st1:MSNCTYST w:st="on" AddressList="01:森町;" Address="森町">森町</st1:MSNCTYST>に向いますが、ここ<st1:MSNCTYST w:st="on" AddressList="44:玖珠町;" Address="玖珠町">玖珠町</st1:MSNCTYST>は宿の待遇とは裏腹に、河ひとつ隔てた<st1:MSNCTYST w:st="on" AddressList="01:森町;" Address="森町">森町</st1:MSNCTYST>と雲泥の差で、どの家でも御免、御免の連発と言います。<st1:MSNCTYST w:st="on" AddressList="01:森町;" Address="森町">森町</st1:MSNCTYST>では殆ど全ての家で潔く、気持ちよくということでしょう、報謝して下さると感激の面持ちであります。二時過ぎまで行乞し、一旦宿に戻って出直し、あとは言わずと知れたで酒を造り酒屋を梯子です。<o:p></o:p>