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七月二十日 晴。<o:p></o:p>
いよいよ小郡に向かいます。小郡までの切符はもちろん、酒三本、煙草<o:p></o:p>
一缶のお土産を俳友がいただいております。先ずは広島安着、黙壷宅を訪<o:p></o:p>
ねてまた甘やかされるとは、言い得て妙であります。<o:p></o:p>
そして久方振りに小郡は其中庵の生活に戻ります。<o:p></o:p>
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大阪~広島<o:p></o:p>
たれもかへる家はあるゆうべのゆきき<o:p></o:p>
更けるとは涼しい月がビルのあいだから<o:p></o:p>
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遊技場<o:p></o:p>
やるせなさが毬をぶつつけてゐる<o:p></o:p>
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或る食堂<o:p></o:p>
食べることのしんじつみんな食べてゐる<o:p></o:p>
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注 昭和十年十二月から八ヶ月余りの長い旅を終えて、翌十一年七月二十二日其中庵に帰りました。十二年から十三年にかけては、近県への行乞への途次あちこちの俳友たちを訪れたり、山口県湯田温泉で遊ぶことが多かったといいます。其中庵に落ち着いて六年目の秋を迎え、比較的落ち着いた平穏な日々を過ごしております。<o:p></o:p>
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「山頭火の日記を読む」も今回で232回、別段区切りがいいわけではありませんが、一応この回で筆を置きます。まだ二巻の余残しておりますが、理由は付けずに休止と致します。敢えて言えば旅から其中庵にもどりまして注にありますように、落ち着いた日々を送りますので、またの機会に再開ということといたしました。長い期間のご愛読に感謝します。