うたのすけの日常

日々の単なる日記等

うたのすけの日常 山頭火の日記を読む その210

2009-02-28 06:25:25 | 日記

☆自覚すれば、醜悪にたえないような自分を見出すことはあまりにあさましい。自分のよさをも自覚しなければ嘘だ。人には誰でも良さがあるあらなければならない。<o:p></o:p>

☆同一の過失を繰り返すことが情けない。酔わなければしないこと、したくないことを酔ってるさ中に敢えてするから嫌になる。自己統制を失うのである。酒に即して自己を批判すれば、酒を飲んでいるうちに酒に飲まれるのが悲しいのである。<o:p></o:p>

十月十日 曇、やっぱり雨。ゆっくり朝寝、朝も昼も梅茶。食べたくても食べる物がないとあり、小生思わず絶句。<o:p></o:p>

 午後は近在行乞とあります。五時間ばかり嘉川方面を托鉢して、お米一升七合頂戴します。夕食まことに美味しくありがたかったと。それはそうでしょうに、それに言うことがまたあっけらかんであります。「行乞はありがたい、私の身心を安らかにする。」<o:p></o:p>

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ことしもここに石蕗の花も私も<o:p></o:p>

蕎麦の花も里ちかい下りとなつた<o:p></o:p>

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十月十一日 雨、晴れて上天気になった。<o:p></o:p>

 上水道水源地散歩の帰途、棄てられた野菜を拾ってきて塩漬け。そして一言「ああ、塩は安い、安すぎる。」<o:p></o:p>

十月十二日 晴、中秋、月はよかろう。<o:p></o:p>

 今日の山頭火、いささか欝に支配されています。身心の不調を嘆くのはいいとして、何となく死期が遠くないような気がするとは穏やかではありません。おまけに御飯の出来がよろしくない、米自体も良くないが自分自身の気分も良くないからと投げ捨てです。<o:p></o:p>

 月はよかったが、酒のないのが、話し相手のないのが物足らなかったと呟きます。それはそれでいいのですが、不調の原因が酒不足となればこれまた心配の種であります。<o:p></o:p>

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水はたたへて山山の御影がまさに秋 <o:p></o:p>


うたのすけの日常 山頭火の日記を読む その209

2009-02-27 06:06:32 | 日記

十月七日 まったく秋日和。<o:p></o:p>

 日向の縁側で読書している山頭火、草庵今日は華やかな色彩を帯びます。美しいパラソルが近づいてきたのです。はてなと首を傾げていますと、山口の秀子さんなるお方の来訪です。しばらく対談とあります。そのあと農学校の友達を訪ねるというので同道します。<o:p></o:p>

 道すがら人々の驚きの眼にさらされます。「なにしろ私が若い美しい女性と連れ立つてゐるものだから!」と満更でもなさそうであります。<o:p></o:p>

 暮れてから樹明君が来庵、投げ出された五十銭銀貨二枚を持って街へ買い物に出掛けます。酒、豆腐、松茸、魚、春菊、番茶。<o:p></o:p>

 「うまいちりだつた、うまいさけだつた、おとなしくこゝろよく酔うて、ふたりともぐうぐう、ぐうぐう。」<o:p></o:p>

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ミスHをうたふ二句<o:p></o:p>

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秋草のむかうからパラソルのうつくしいいろ<o:p></o:p>

秋空のあかるさに処女のうつくしい<o:p></o:p>

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☆米は買えないから(一升三十二銭)食パンを買う(一斤十四銭)。そして行乞はしないのだ、ここにも私の我侭があるけれどそれが私の生まれつきだからしょうがない。<o:p></o:p>

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酔中戯作一首<o:p></o:p>

あなた ドウテイ<o:p></o:p>

わたくし ショヂョよ<o:p></o:p>

月があかるい虫のこゑ<o:p></o:p>

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其中漫筆<o:p></o:p>

私俳句とは<o:p></o:p>

リアリズム精神<o:p></o:p>

 自由、流動、気魂(きまま) <o:p></o:p>


うたのすけの日常 映画鑑賞

2009-02-26 07:10:45 | 映画

映画チェンジリングを見ました。<o:p></o:p>

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 映画は見だすと癖になりますね。今年は早々にゲバラの映画を一部二部と見て、予告編の影響もあって先日かみさんと一緒に見てきました。<o:p></o:p>

 息苦しい怖い映画です。クリント・イーストウッドが人気女優アンジェリーナ・ジョリーと初めて組んだ話題作ということですが、残念ながら彼女のことは全然知りません。なにしろもう何十年も映画は年に一度見るか見ないかが続いているのですから。<o:p></o:p>

その昔それは映画館に通ったものです。ラーメン一杯30円か40円の時代と言っておきます。或る年に一年間チケットの半券を貯めたことがあります。数えてみるとなんと100枚を超えていました。それよりあたしが見た映画館は、封切館は少なく大方二番館か三番館で二本立てか三本立てが主流でした。梯子して見たこともありますから、年に400本は軽く見ていた勘定になります。その頃昼飯に25円のラーメンを食べた記憶が残っています。もっともチャーシューの代わりに薄ぺったいハムがのっていましたが。帰りは電車賃もなくなり、浅草から日暮里までよく歩いて帰ったものであります。そんなわけで映画は確かに見だすと切りがなくなり、それは一種の中毒症状といえます。<o:p></o:p>

話を戻します。映画はサスペンスもあり、謎を秘めたストリーが展開されますので詳細はお話できません。 <o:p></o:p>

舞台は1928年のロサンゼルスです。当時の街並みやファッションが克明に映し出されるのは見事です。

シングルマザー、クリスティンの息子ウォルターが突然失踪します。警察が息子を発見するものの、その少年はまったくの別人なのです。ここから警察と母親の壮烈なそして過酷な闘いが始まります。そのことを信じてもらえないクリスティンは思わぬ運命を辿っていきます。当時の腐敗した警察が事件の裏側にひそみ、身の毛もよだつシーンが続きます。

主演のアンジェリーナ・ジョリーの演技にあたしは圧倒されっ放しでした。脇役陣も個性的な納得できる演技を披露してくれています。

たまには映画鑑賞もいいものと、映画の良さを再確認した一日でした。


うたのすけの日常 人生相談を読みました

2009-02-25 05:55:08 | 新聞記事から

読売の人生案内から<o:p></o:p>

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別にこの種の人生相談を愛読しているわけではありませんが、時たま目を引くタイトルに出会ったりしますと、ついつい読み始めてしまいます。そして回答者の返答を無責任にあげつらったり、相談者を厳しく批判したり同情したり、或いは一緒に嘆き悲しんだりします。そして人生いろいろと、その多様さにわが身を比べて自分の境涯を振り返ってみたりするわけです。別にそれだからってそれも一過性でして、いつまで心に根を張るわけではありません。いたって無責任、気楽なわけであります。<o:p></o:p>

 さて本日のタイトルは「学歴理由 ご両親に会えず」20才台の会社員の女性の相談です。もちろん結婚のお話でして、なぜかあたしには遠い昔の話のように聞こえました。彼女なかなかしっかりした女性と思えるのですが、彼女医学生と交際中、彼を純粋で温かい人と手放しですが、他県にある彼の実家はお金持ちで家族はみな高学歴であります。そして彼は将来地元に帰って医師になるのが希望と言ってます。  <o:p></o:p>

短大卒の彼女は学歴が障害で相手のご両親に会ってもらえないと嘆きます。彼も両親に反対されて結婚話は現時点で宙ぶらりんといったところです。彼女の父親は彼に何度も会って好感を持っていますが、娘が嫁ぐことには一言「苦労する」と心配しております。<o:p></o:p>

 父親の杞憂は正解で、彼女もその点は理解しておりまして、彼の両親と住む世界が違うので難しいかもしれないが、認めてもらえる方法はないかといった相談なわけであります。<o:p></o:p>

 これに対して回答者の返事は結論として、想像するに、彼はきっと時を待っていると言います。家柄や学歴だけで人を判断する両親に、自信を持ってものが言える人間になれる日を待っている。そしてその日まであなたは…ということであります。<o:p></o:p>

 冗談ではありません。いつまで待てばいいのですか、彼はもう一人前の男です。なにも学歴を盾に会わぬという両親に彼女を会わせる必要はないし、彼女も無理に会う必要はないです。彼も幸い医学という得がたい職業に携わる人間です。親に頼ることはないわけでして、二人で既成事実を早々と構築してしまうのです。何も親と争えというわけではありません。そうして親が折れてくるのをじっと待つのです。認めてもらえるとかもらえないとか、そんなことは二の次と思います。<o:p></o:p>

 はっきり言わせてもらいますが、彼は世間でよく言う親の言いなりになる人間と確信します。<o:p></o:p>

 昔からこの世には、駆け落ちという若い二人にはもってこいの風習といいますか、幸せへのお膳立てが控えているのです。それに応じられない彼なら見切りをつけるべきです。<o:p></o:p>

 彼女は早くに母を亡くし、弟たちの面倒を奨学金とアルバイトをしながら見て短大を卒業したといいます。その健気さが憐れです。彼女が幸せにならなければこの世に神も仏もありません。<o:p></o:p>

 一度彼に親も親戚も当てにしないといった覚悟を促してみるべきです。その返答をじっくり吟味して下さい。四の五を言って腰を引くようでしたら見込みナシです。酷なようですが縁がなかったと悟るべきです。<o:p></o:p>

 貴女の前には遠からずきっと、素晴らしい人が出現しますよ。<o:p></o:p>

 あたしの回答、少々乱暴で無責任ですかな。少々どころではない、そうですか。

うたのすけの日常 山頭火の日記を読む その208

2009-02-24 06:35:06 | 日記

足もとからてふてふが魂のやうに<o:p></o:p>

夜のふかうして花のいよいよ匂ふ<o:p></o:p>

薮蚊をころしまたころし曇る秋空<o:p></o:p>

秋の雨ふるほんにほどよう炊けた御飯で<o:p></o:p>

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十月三日 時雨、やっと晴れた。<o:p></o:p>

 黄葉の季節です。柿の葉がぱさりぱさりと落ちます。街のポストまででかけます。嫌な予感がしますね。案の定Y屋に酒と肴を届けさせます。やがて酒がもたされ、鮭の缶詰もです。山頭火悠然と飲み始め、呆然として出かけます。Yさんからいつものようにと言います。少し借金してF、N、M、Kと飲み歩いたと豪語です。結果は駅のベンチで夜を明かしますが、それでも帰ることは帰ったと胸を張ります。<o:p></o:p>

 「久しぶりの、ほんたうに久しぶりの、小さい、小さい脱線だつた。時々は脱線すべし、ケチケチすべからず、クヨクヨすべからず。」しかし念を押すところからみれば、反省しきりで後悔で胸は焼けて波打ち七転八倒の胸中と思います。<o:p></o:p>

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秋空たかく号外を読みあげては走る<o:p></o:p>

日向あたゝかくもう死ぬる蝿となり<o:p></o:p>

朝風の柿の葉のおちるかげ<o:p></o:p>

いま汲んできた水にもう柿落葉<o:p></o:p>

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十月五日 秋晴 <o:p></o:p>

昨夜の余りの朝酒、そして夜もまだ余りがあって晩酌、そしてそのままぐっすり。贅沢すぎると言ってますが、自嘲か反省かいずれにしても出かけずに床につくということは結構なことであります。翌朝もまだ余りがあって朝酒を召し、「天いよいよ高く、地ますます広し。」とはこれまた結構なことです。<o:p></o:p>

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☆酒があって飯があって、そして寝床があって、ああ幸福々々。<o:p></o:p>


うたのすけの日常 山頭火の日記を読む その207

2009-02-23 05:48:04 | 日記

たえずゆれつつ葦の花さく<o:p></o:p>

水音の流れゆく秋のいろ<o:p></o:p>

青草ひろく牛をあそばせあそんでゐる<o:p></o:p>

秋暑い鉄鉢で、お米がいつぱい<o:p></o:p>

更けると食堂の、虫のなくテーブル<o:p></o:p>

秋はうれしい朝の山山<o:p></o:p>

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九月三十日 日本晴、時々曇ったり降ったりしたけれど。身辺整理。<o:p></o:p>

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☆今日も郵便が来ない、山の鴉が庵をめぐって啼き騒ぐ。何だか気になる、なんとなく憂鬱になる。<o:p></o:p>

☆待つもの、手紙、は来ないで、待たない人、掛け取りが、来た。とかく世の中はこうしたものだ。<o:p></o:p>

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この日宵のうちから、ランプに油がないので宵からでグーグーと言います。そのため夜中に目が覚めて鼠がどこか齧る音を聞きます。これを鼠の悪趣味と言ってのけます。<o:p></o:p>

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十月一日 晴、国勢調査日、私もその一枚に記入とあります。<o:p></o:p>

 やっと郵便が来たと安堵の様子。以前から待ちわびていたK氏からのもので、どうやらお金が送られて来た様であります。いか様な金子かは不明ですが、「払へるだけ払ひ、買へるだけ買ふ、残ったのは一銭銅貨二つ!<o:p></o:p>

 酒一升、一円<o:p></o:p>

 小鯛三尾、十二銭<o:p></o:p>

 豆腐三丁、九銭<o:p></o:p>

 樹明君を招待して(青いものは樹明君持参)ちりで一杯となります。いやはやすっかり卒倒から脱皮して昔に戻ったような気配濃厚であります。<o:p></o:p>

 「ほどよく飲んで、ほどよく酔ふたが、別れ際がちよつとあぶなかつた。桑原々々。」今夜はぐっすり眠れたとは良い酒であります。<o:p></o:p>


うたのすけの日常 山頭火の日記を読む その206

2009-02-22 06:01:59 | 日記

九月二十六日 晴、時々曇ってしぐれる。<o:p></o:p>

午後近在を三里ぐらい散歩しますが、途中で、軽い狭心症的発作に見舞われております。<o:p></o:p>

九月二十七日 晴<o:p></o:p>

 朝寒しとあります。米磨ぐ水やや冷たく、汲み上げる水がほのかにあたたかいとは実感が伝わってまいります。夏物をしまって冬物を二三枚出したと、これも実感がもろに伝わります。午後は近郊散策となります。<o:p></o:p>

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☆過去をして過去を葬らしめる、それが観念としてでなく体験として表れてきた。<o:p></o:p>

☆物事をアテにすることはあまりよくないが、アテがなくては生活は出来ないが、アテが外れても困らない心構えは持っていなければなるまい。<o:p></o:p>

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九月二十八日 まことに秋晴。<o:p></o:p>

湯田行乞を決めて九時ごろから出かけます。山の色も水の音もすべて秋。さすが俳人、表現に一片の無駄がありません。今更ながら舌を巻きます。<o:p></o:p>

湯田競馬へ急ぐ人々を称して、欲張り連中がぞろぞろとは競馬ファンがお気の毒であります。<o:p></o:p>

今日の功徳を記してます。湯田行乞四時間。米、一升八合。銭、四十四銭。それに付け加えて、「行乞は省みて恥ずかしいけれど、インチキ商売をするよりもよいと思ふ(私はインチキはやらうと思つたつてやれないけれど)」。<o:p></o:p>

 昼飯の代わりに焼酎半杯六銭、焼き饅頭三つ五銭。その夜は仲間内で句会がもようされ、散会したのは十時過ぎといいます。その後が凄いのです。いつもの癖でおでんやで飲み足すのです。そして汽車もバスもなくなり、駅のベンチで寝てしまいます。<o:p></o:p>

其中漫筆<o:p></o:p>

 或る結髪処でそこに居た老妓がつと立ってきて、十銭白銅貨を鉄鉢へ入れてくれた。女郎家の老主人が間違って五十銭銀貨をくれた。それを返すと喜んで改めて一銭銅貨二枚くれた。<o:p></o:p>


うたのすけの日常 目覚めて川柳

2009-02-21 06:01:47 | 川柳

何かと言いたいのです<o:p></o:p>

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   衆目の 見るとこやはり 酔っ払い<o:p></o:p>

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   よくもまあ ボロも出さずに この日まで<o:p></o:p>

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   やり切れぬ 事あるごとに あのフィルム<o:p></o:p>

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羽交い絞め 殿ご乱心と 勇気ナシ<o:p></o:p>

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   付き人は お家大事と なぜ止めぬ<o:p></o:p>

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   官僚は 恐らく嗤って いますよね<o:p></o:p>

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   官僚に またまたこれで 舐められる<o:p></o:p>

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矛先が 替わって官僚 ホッとして<o:p></o:p>

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   どなたかの 仕掛けた罠かと 邪推する<o:p></o:p>

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老兵は 黙して語らず 拍手あり<o:p></o:p>

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   下卑てます 含み笑いと 語り口<o:p></o:p>

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オレ様の 臭いプンプン 頂けぬ<o:p></o:p>

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給付金 今更ナシとは そりゃないよ<o:p></o:p>

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   総選挙 待ちに待ってる 草臥れる<o:p></o:p>

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   見事なり のらりくらりの 名人芸

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   「番外、バラバラ事件」<o:p></o:p>

   類を見ぬ 悪魔の所業で 無期徒刑<o:p></o:p>

有期刑 二百年なら 納得か <o:p></o:p>


うたのすけの日常 山頭火の日記を読む その205

2009-02-20 05:27:21 | 日記

 漫読に活を入れ、午後からの釣にも贅沢なと活です。それでも釣果を披瀝しております。小魚六つ、ゴリ五つ。いつもと同じであまり釣れないが、あまり釣ろうとは思わないとは負け惜しみと見ます。<o:p></o:p>

 早々に帰庵してさっそく不運な彼らを、荼毘に附したと言いたいところながら火焙りにして一杯と洒落ます。「今日はうれしや、晩酌がある、何と其中庵の山頭火にふさはしい幸福ではないか」。結構な秋の夜が更けていく様を、何とも言えぬ墨絵の暮色と期待したのですがが……。それから、<o:p></o:p>

 本人も「このそれからがちつとばかりよくなかつたが、」と洩らしますが、小生にはどうしてもちっとばかりとは思いません。<o:p></o:p>

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 「駅のポストまで、それからY屋へ、M店へ、F屋へ、等々で飲み過ぎた(つまり、多々楼君の温情を飲んだ訳である、貨幣として八十銭!)。飲みすぎて歩けないから、無賃ホテル(駅の待合室)のベンチで休息した、戻つたのは夜明け近かつた。山頭火万歳!<o:p></o:p>

 小生としては山頭火のこの行動、痛いほど理解できます。黙過です。<o:p></o:p>

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九月二十四日 暴風雨<o:p></o:p>

 今日は彼岸の中日だがこれでは墓参りも出来まいと心配しております。<o:p></o:p>

午後風雨の中、Sさん酒持参で来訪と嬉しげです。その後樹明君豆腐と野菜と魚持参で来庵、さっそく酒となります。昨日の今日でして言う言葉に窮します。<o:p></o:p>

 御馳走、御馳走、ちりはうまいなと御機嫌です。<o:p></o:p>

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風ふく萩はゆれつつ咲いて<o:p></o:p>

藪風ふきつのる窓の明暗<o:p></o:p>

風を聴く鳴きやめない虫はゐる<o:p></o:p>

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九月二十五日 曇、雨、晴。  <o:p></o:p>

 ありがたや朝酒があると開口一番、昨夜の余りに顔をほころばせます。「ほろ酔いの目に、咲きこぼれた萩が殊にうつくしい」いやはや羨ましい。<o:p></o:p>


うたのすけの日常 山頭火の日記を読む その204

2009-02-19 05:51:44 | 日記

 湯田からの帰途、農学校に寄り、宿直の樹明君らと畜舎の宿直室で飲みます。今日は私が一升買ったといいます。帰庵したのは十時ごろとかで一言、少々飲みすぎて苦しかった。過ぎるは足らないよりもいけない。まさにその通りでして、山頭火なにもかも承知であります。<o:p></o:p>

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ばさりと柿の葉のしづけさ<o:p></o:p>

つめたい雨のふりそゝぐ水音となり<o:p></o:p>

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九月廿日 曇、雨となる。昨日の今日で腹具合がよろしくなく、自業自得と観念しております。<o:p></o:p>

 昨夜酔って下駄の鼻緒をすげるとき、足を過って傷つけて一言、俳人、言うことが一言一言違います。「斬れば血が出る、涙は出なくなつても、血は出るものである、生きてゐるかぎりは、…」<o:p></o:p>

九月二十一日 雨、彼岸。見渡すと柿がだいぶ色づき、柿がうれてくるほど秋は深くなるのだと、朝方の感想でしょうか。言うことが冴えております。<o:p></o:p>

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☆今日の買い物、鯖一尾十銭、胡瓜一つ三銭、そして焼酎一合十銭也。今日の幸福二つ、般若心経講義を読んだこと、そして焼酎がうまかったこと。<o:p></o:p>

☆かまきりが、きりぎりすが座敷に上がって来る。やがてこほろぎも上がってくるだろう。<o:p></o:p>

☆何を食べても美味しく、何をしても面白く、何を見ても楽しく、何を聞いても楽しく。<o:p></o:p>

 今日の夕方見慣れない人が来たと言います。国勢調査の下調査だそうで、「私のやうなものでも、現代日本人の一人であるに相違ない。」どうぞ胸を張ってくださいと言いたいです。<o:p></o:p>

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九月二十三日 曇、秋冷、野分らしく吹く。<o:p></o:p>

 今日の山頭火、ばかに高揚しております。朝から漫読とは贅沢なと自分に活を入れております。<o:p></o:p>