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うたのすけの日常

日々の単なる日記等

あすか共和国の興亡 十八

2014-11-03 04:41:20 | あすか共和国の興亡

 突如アナウンサーの声が途切れる。扉の開けられた玄関から、自動小銃を構えた覆面に黒ずくめの男たちが飛び込んでくる、数名を残し二手に別れ二階と右手の厨房へと敏速に動く。同時に戸外で立て続けに銃の発射音がけたたましく鳴り響く。広間に女性子供たちの悲鳴が起きる。

 

覆面1 動くな、騒ぐな。(いきなり天井に向かって銃を連射する、悲鳴が再びあがる。外交官の兵士は覆面の男の一喝で銃を捨て両手を挙げる)残念だが客人は来ない、門前でお帰り願った。女子供それにあすかの部外者は直ぐ表へ出るんだ!

覆面2 表で仲間が門外に誘導する、手早く動け。そうだそうだ、その調子だ。

沢田  きさまたちは何者だ、昭島すまん(沢田、昭島に寄る)油断した。

覆面1 動くな、喋るな、きさまたちは手を下ろすんじゃない。

 

夫人たちは男たちに急かされながらも、それぞれの子供たちの手を握り立ちすくむ。

 

秋田  官房長官!(昭島に駆け寄ろうとするが覆面の男に阻止される)

昭島  大統領!(絶叫する昭島の喉元に銃口が突き付けられる。夫人たち悲鳴をあげる)翔太  (覆面の男の隙をみて翔太が井沢に縋り付き泣き叫ぶ)先生、行きたくないよ…

井沢  翔太、(翔太を抱こうとするが、覆面の男軽々と翔太を抱え上げ井沢を突き放す)

 

一同昭島たちと言葉も交わす事も出来ず、嗚咽しながら振り返り振り返り広間を後にする。厨房から男たちに小突かれながら料理人やウエイターたちが表へ出される。やがて覆面の男たちと昭島たち七人は静まり返った広間に対峙する。

 

覆面2 とんだ愁嘆場を見せやがる。

覆面1 奴らの体を調べろ。

沢田  拳銃は所持していない。

覆面1 口をきくなと言ってある。(覆面の男たちが手荒く昭島たちの体を調べる)銃は所持してないようだな、不用意だったな。しかし賢明だった、余計な犠牲者を出さずに済んだからな。

島本  婦人や子供たちはどうした!(覆面2いきなり島本を蹴る)

覆面1 よし、手を下ろせ。口をきくことを許す。

昭島  ここをあすか共和国と知って襲ったのか。婦人や子供たちは、

覆面1 あすか共和国?ほざくな、世迷い言はいい加減にしろ。

覆面2 お前たちの言うあすか共和国の大統領一行並びに家族は、銘々それぞれの家庭に戻した、今から普通の生活に戻る。平穏な日常に帰ったのだ、余計な心配はすんな。

井沢  大統領は?ここが大統領の…

覆面2 秋田智子は子息と一緒に秋田会長の家へ送り届ける。秋田次官もそこにおられる。

覆面1 人質全員それぞれの肉親の元に無事送り届ける。

昭島  それがお前たちの目的か。警視庁の特殊部隊か。

覆面1 (昭島に答えず)あとはお前たちの処遇だ。

島本  貴様たちは何者だ名乗れ(島本、言うなり覆面1にとびかかり覆面を剥ぎ取る、覆面2、島本を銃の台尻で殴り島本仆れる。沢田と仆れた島本驚愕の声をあげる)

沢田  あなたは…

島本  よるか駐屯地の…

沢田  ゲリラ対策部隊の隊長…

覆面1 (素顔を暴かれた事に狼狽しながらも威厳を崩さず)そうだ。貴様たちよくも「よるか師団」の顔に泥を塗ってくれたな、自衛隊を世間の笑い者にしてくれたな。だがそれはいい、責めまい。俺たちは屈辱に耐えるのには馴れている。しかし貴様たちのとった行動を見逃すわけにはいかない。自分たちの夢を見るのは勝手だ、政府を批判するのも結構、世界を盾に日本の改革だと宣うのも自由だ、しかしきさまたちの行動は身勝手だ。ここは日本だ、この地は日本人のものだ。だれも自由勝手にいじくり廻す事の出来ぬ日本人全体のものだ。日本を変えるというなら日本人として行動しろ。その気魄を持て。金の強奪が失敗したからといって、変わり身も素早く外国をダシに、女子供を操り英雄気取りで闊歩するのは許すことは出来ない。甘ったれるな!

沢田  隊長殿、それは違います。

島本  隊長殿、自分たちは夢かも知れませんがそれを追ったのであります、日本の新生を願って。決して英雄気取りなぞ…

沢田  自分たちは決して自衛隊をないがしろにはしていません、私心を捨て日本の将来を見据えて事を起こしたのであります。止むに止まれぬ行動であります。

島本  隊長殿、事は成就したのであります。微かではありますが、光はみえたのです、日本の将来に明るい展望が開かんとしているのです。どうかこのまま撤退して下さい。

覆面2 黙れ島本、理屈はどうにでも後からつけられる、いいか、制服は政治に関与しない、それが鉄則だ。許せん!それより隊長の覆面を剥ぐなんて余計な事をしたな。

覆面1 まあいい、ここへきてはもう多くは語るのは止そう。貴様たちの処遇については部内で激論があったが、結論はアメリカ大使館へ全員身柄を亡命させるため移送する手筈だった。だがそれも儚い夢となるのか…沢田、島本、貴様たちは元自衛隊員だ、覚悟は出来てるだろうが、残りは民間人だ。強盗犯とはいえ殺人者ではない…

覆面2 隊長、秘密の漏洩は許されません。自分がやります。

     

覆面2の血走った声に昭島たちに驚愕のどよめきが走る。

 

昭島  俺たちを殺すのですか。

覆面2 止む得んだろう。俺たちに身元は無い、その無い身元が知れては国の存亡に関わる。

沢田  隊長殿、仰せの通り自分たち二名は元自衛隊員であります。自分の身は自分で処します。しかし彼らは…

覆面1 わかっている。

覆面2 隊長、恩情は許されません。長官のお立場はどうなります。我々は一心同体であります。全員この場で射殺します、命令を下さい、命令を…

 

覆面の男たち一斉に銃を構える。沢田島本を除き、皆恐怖に顔をひきつらせ身を寄せ合う

そこへ二階や厨房へ散っていた覆面の男たちが戻る

 

覆面3 火器弾薬全て奪取。建物爆破の準備完了。爆破定刻5分前であります。 

 

表から数人の覆面の男たちが駆け込んでくる、その場の緊迫に息を飲む。

 

覆面4 部外者は全員門外に誘導退去完了。各国大使には丁重に接し、穏便にお帰りいただきました。

覆面5 女子供は家族別に車両にて各家庭への送還作戦無事完了。 

覆面1 ご苦労、撤退準備。

覆面2 隊長、ご決断下さい。命令を!

 

広間に重苦しい空気がじょじょに充満していき、覆面の男たちの構えた銃は微動だにもしない。舞台溶暗。途端にすざまじい轟音が鳴り響き、幾条もの閃光が暗黒の舞台を縦横に走り何回となく点滅を繰り返すうち火炎が渦巻き、そしてもとの暗黒に戻る。静寂の中、ニュースの声が流れる。バックに荘重な悲壮感こもる音楽が奏でられる。

 

「ここでただ今入りましたニュースをお知らせいたします。今夜七時あすか市あすか町一丁目一番地あすか共和国の大統領官邸に国籍不明の武装集団が押し入り官邸を爆破、炎上させました。死者負傷者は出ておりません。大統領一行並びに家族は、直前に難を逃れ、日本国内にあるそれぞれの肉親の家に避難しました。なお国籍不明の男たちの行方はわかりません。政府は直ちに記者会見をし、官房長官より次のような談話が発表されました。政府と致しましては、閣議であすか共和国承認の決議をし、通告直前の出来事でした。爆破炎上した大統領官邸の惨状を目の当たりにして、唖然たるおもいであります。しかし事件はあくまであすか共和国の国内問題でありまして、日本政府の関与する余地は全く御座いません。また許されません。成人男子を除くあすか共和国大統領一行は政府に政治亡命を求め、政府はこれを認め保護、大統領並びに閣僚要人の諸氏と腹蔵なき協議を重ね、両者に於いてあすか共和国の自然解体を確認しました。よってあすか共和国の国土は日本国に復帰、ここに一連の事件は単純明快な解決をみたわけであります。まことに世界に誇る欣快な終結であります。ニュースを終わります」暗転

 

                                    (10)

 

舞台溶明 瓦礫の山と化した秋田邸の跡地に秋田智子が婉然と立っている。その姿とはうらはらに鎮魂曲が呻くように流れている。

 

秋田  昭島様ほか皆様の消息が不明なのが、いま一番気掛かりでございます。皆様には一連の夢を見させて頂いたことに、心より感謝致しております。若者たちの自信に満ち溢れ、昂揚した姿はいまは私の瞼の裏に、かげろうのようにたゆたうだけになってしまいました。若者の強さしなやかさの裏側に、儚い脆さが限りなく秘められていたのを悲しく思い知らされました。人間の営み、国家盛衰の歴史の蓄積、その背後に潜む、獣たちの弱肉強食の世界を凌ぐ無残を目の当たりに見せられました。粛然といま、無情の虜と堕ちた自分に涙しております。しかし展望はもたされました。 私はこの屋敷跡を瓦礫をこのままに保存し、あすか市に市民公園として使用して頂きたく寄贈いたすつもりです。うたたかの夢と消えましたが、隆盛の極みの華やかさ、亡国の儚さに寄り添った美しさを、私は脳裏から消し去ることは出来ません。あすか共和国の誕生の地、崩壊の地としての証しをこのまま未来永劫にこの地にとどめておきたいのです。将来、マヤ遺跡、ボンペイの史跡、アンコール・ワットの寺院遺跡と並び、人類栄枯盛衰の栄華と悲劇の綾なす聖地と讃えられ、世界遺産と称され、あすか共和国の名を世界史の一頁にとどめることでしょう。そしてこの瓦礫の山は黙せども、世界平和と日本の正しき進路を指針し繁栄を示唆する礎となるでしょう。                             

 

                         幕

 

 


あすか共和国の興亡 十七

2014-11-02 10:02:21 | あすか共和国の興亡

 

会場にどよめきが走る。大統領始め閣僚たちは紅潮した顔で握手を交わす。そして一カ所に集まりなにか協議を始める。

 

昭島  ここで一旦質疑を中断させて頂き、ただ今の日本政府の発表に関してあすか政府の対応を発表します。承認免罪の件に結論が出ない事は遺憾ではありますが、大筋で歓迎であります。特に生活路線全てが確保出来たことに安堵しております。あすか政府といたしましても国境の日本国民の自由往来になんら制限は設けません。国境には扉も設けません。なお今後さらに両国間で煮詰めなければならぬ事が多々あるので、早急に事務レベルでの協議を開催することを日本政府に提案します。以上であります。質問を続けて下さい。しかし残念ではありますが約束の時間がすので、最後の質問とさせて頂きます。ご了承下さい。

質問  先ず当面のあすか国民の、生活基盤が確立された事にお祝いもうしあげます。その事に関してですが、あすか共和国は食糧自給率は0との発表です。今後その点についていかなる方針がお在りなのでしょうか。

原田  私農林水産大臣からお答えいたします。私秋田家に永年お手伝いとして勤務致しております原田まりです。若干生鮮食糧品に欠ける恨みは御座いますが、先ず当面約一月分の食糧備蓄はございます。しかしその後は日本政府のご好意に甘えて、輸入に頼らざるを得ません。将来的には品目によって自給自足を目指しております。

昭島  つきましてはこれに関連しまして国土庁長官より、補足の説明を致させます。

神宮司  国土庁長官、神宮司真利子で御座います。ただいま農林水産大臣より、将来的には食糧の自給自足をとのお話がありましたが、この地あすか市は、戦後日本政府の指導の元官民一体となりましての開発が進められた新興都市でありますが、まだまだ手付かずの侭の丘陵地帯が広大な広がりを見せております。水の豊富なそして緑豊かな丘陵が延々と続いております。幸いここに大統領ご一家は膨大な父祖伝来の土地をお持ちです。未来は明るうございます。開拓事業を資金の調達のメドさえつけば、日本は元より海外からの開拓移民も受け入れ、事業を推進させます。様々な農産物の産出が可能となります。将来の輸出も視野に置き展望は大きく開きます。しかしこの事は、日本とあすか共和国の間に友好関係が一日もはやく築かれることが、大前提であることは言うまでも御座いません。

昭島  それでは残念ではありますが、記者会見を終了させて頂きます。終了に当たりましてあすか共和国大統領からのお知らせがあります。

秋田  (今は威厳さえ感じる堂々たる物腰で立つ)あすかは日本を除く世界の大多数の国々から承認を頂きました。自ら独立の尊厳を維持し、世界平和を希求しそれに貢献する事を改めてここにあすか共和国朝野を挙げて宣言します。さて、前途多難な独立の存続ではありますが、一筋の光明が前途に兆しております。それは我が国に続々と寄せられる各国のご好意であります。いの一番に大統領直々に親書をお寄せ下さり承認されたアメリカ合衆国。それに諸手で協賛されたイギリス。外人部隊の派遣の検討をして頂いたフランス共和国。この小国に不可侵条約を締結せんと、率先して手をさしのべられたロシヤ連邦。ドイツ連邦共和国からはイタリア共和国と連携して、我が国と「あ独伊三国同盟」を締結せんとの打診を頂きました。オーストラリア連邦からはコアラの寄贈のご好意が御座いました。そして隣国大韓民国大統領は食糧の無償供与を表明され、先刻在日大韓民国大使館よりその第一便として、米、唐辛子、キムチが積まれた貨物船が釜山港を出港したとの連絡が御座いました。次ぎにこれは余談ではありまかが、北朝鮮からは衝撃的な申し入れが…内容は極秘ですが、丁重にご辞退しました。(会見場に呻きとも取れる嘆声が起きたが、すぐに歓声に変わり拍手が沸き起こる)世界的規模の支援のもと、あすか共和国は確実に独立の一歩を踏み出しました。今後は日本政府の一日も早い承認を願って止みません。(深々と頭を垂れる)

 

舞台溶暗 テレビ局、記者団も去り、静けさの戻った広間に一際大きく昭島の声が響く。

 

昭島  沢田、あすか署の署長に、直ちにあすか国に対する通信機器の盗聴を止めるよう通告するんだ。島本、お前はNTTに盗聴設備を直ちに外し、今後あすか共和国に対しての盗聴には関与も協力もしないという誓約書を提出させろ。郵政省にはあすか共和国に関する郵便物の検閲をしないとの確約を取れ、以上の経緯を新聞紙上に公表させろ。いいな、もし違約行為があった場合は国際世論に問題提起し国際法廷に提訴するとな。

 

舞台暗転の中。総理官邸の一室からか総理と官房長官のやりとりが流れる。

 

総理  見たか聞いたか、北朝鮮がミサイルを提供するだと匂わしやがった。小賢しい真似しやがる大嘘もいいとこだ、脅しをかけやがって。

官房長官 あの昭島ってのが主犯格の男ですよ、揺さぶりをかけてんですよ。なかなかの策士ですな野郎は、

総理  だから俺はT大出は嫌れえなんだ、小利口ぶって先々と手を打ってあすか共和国の既成事実を作っていきやがる。おまけに盗聴を止めろなんて差し出がましい指図しやがる、飛んでもねえってんだ、そんな事一々聞いてたらこちとらおまんまの食い上げだな。野郎たち何様のつもりでいやがるんだ、言いていほうでい抜かしやがってからが。ええっ!(怒り心頭に達している)

官房長官 まあまあ総理、怒ったら負けですよ。耳寄りな情報がさっき入りましてね、

総理  何だ、

官房長官 へえ、警視庁の特殊急襲部隊のベテランが十四人、退職願いを出して消えちまったそうです。

総理    それを先に早く言えってんだ。うふふっ、そういう事か。てえ事はなんだな、

官房長官 そういう事です。

総理  清水港二十八人衆勢揃いってとこか、防衛庁本腰だな。警視庁もやるじゃねえの。猶予はならねえ、さっきのテレビ見たろう。あすかの国土庁長官、神宮司とかいったな、なかなかいい女だ。うちの国土庁の大姐御より上いくな。まあそれは置いといてだ、あすか丘陵開拓云々と抜かしやがった。あすこは俺っちの縄張りだぜ、こりゃ侵略だ。ぜってい許せねえ。

官房長官 ごもっともで、いよいよ性根の据え所ですぜ。総理はあくまで知らぬ半兵衛を決め込んでくだせえよ、くれぐれも。ようござんすね。浮足立っちゃあ元の木阿弥、取らぬタヌキの皮算用になりかねねえ。しめっくりはあっしがつけます。

総理  わかってらな、だが防衛庁、抜かりなくやるだろうな。

官房長官 (呆れ声で)これだ、またいつもと変わねえ取り越し苦労を。それより総理、二十八人衆の骨を拾ってやっておくんなせえよ。

総理  命を落とす者がいたら靖国に忠魂碑を建ててやるぜ。

官房長官 それがいけねえってんですよ、参拝だけでも騒ぎなのに、今どき忠魂碑なんて、そんな事いうからマスコミに叩かれんですぜ。懲りねえんだから。

総理  ほうっとけ、あっはははっ、それより石神って広報官、てめえの事ゴッドストーンて吐かしやがった。何かぃ、そんじゃ俺はスモール……ううっ、何とかかい。

 

                                     (9)

 

舞台溶明 あすか共和国建国から一カ月後あすか邸の広間。舞台は一段と明るさを増し、華やいだ雰囲気が充満し、弾くような燦きが横溢している。それもその筈今夜はあすか共和国建国祝賀会が催される夜。正面にはあすか共和国建国祝賀会と大書された横断幕が掲げられている。着飾った秋田大統領が満面笑みを浮かべ、女性閣僚たちいずれも華やかな衣装を纏い広間を行き来する。内閣広報官石神ルミコがドレスの裾をひるがえし、軽やかな動きでウエイターたちに次々とを指示を与え一人しきりに時間を気にしている。重厚な、ときには軽快な音楽が会場の興奮を弥が上にもかき立てる。広間の中央には、フランス外人部隊の兵士が、スマートな礼服で微動だにせず直立している。祝賀会開催の定刻なのか、スタンバイしていたテレビのカメラが動きだし、アナウンサーの高揚した声が会場の模様を逐一描き始める。

 

「もう間もなく開催の時間です。大統領始め閣僚たちが賓客を迎えるため威儀を正して玄関脇に居並びます。今夜のあすか共和国の要人たちの衣装は日本橋三越の好意によって誂えられたものであります。そしてこの世紀のイベントは電通が総力を挙げて企画からすべて無償で参加しております。料理飲み物一切は帝国ホテルの提供によるもので、料理人ウエイター共々帝国ホテルから派遣されております。あっ、今、井沢文部省補佐官に引率された少年少女たちが、あすか国旗と日の丸の小旗を手に、可愛い揃いのセーラー服姿で螺旋階段を躍るように降りて参りました。申し遅れましたが護衛として起立する外人部隊の兵士はフランス大使館のアイデアで、大使館の外交官が扮しているものです。なお手元に配られました資料によりますと、今夜の招待客には、あすか国を承認された国々の元首は身辺警護の問題から敢えて招聘状は送らなかった由であります。しかし日本国在任の大使領事は夫人同伴で、すべて招聘に応じておられるそうであります。従ってあすか政府は、賓客の安全を確保するため日本警備保証会社のベテラン、屈強な警備員を配置しております。しかし残念と申すのでしょうか、未だ日本政府は世界の動向に背を向けあすか共和国の承認に至らず……」


あすか共和国の興亡 十六

2014-11-01 04:31:12 | あすか共和国の興亡

 

昭島 ですから我々はこうして世界各国の記者団をお招きしてお話しているのです。今後は定例記者会見を持ち、具体的にあさか共和国の姿を世界に顕示する方針であります。テレビ放映は補助的なものとご理解下さい。

 

テレビのアナウンス「ここでただ今入って参りましたニュースをお知らせします。本日早朝防衛庁長官が辞表を提出しました。総理はこれを受理しましたが、その後長官は防衛庁にも私邸にも姿を見せず、その行方は杳として掴めておりません。辞表は防衛庁次官によって届けられましたが、その際小瓶にアルコール漬けされた小指が二本添えられていたそうです。 それに関して官房長官がコメントを発表しております、『なにも一本でいいのに二本も詰めるとは長官らしい』以上。なお後任その他についてはいまのところ情報は入っておりませんが、防衛庁長官の更迭は現内閣にとって三人目という事になります」

 

記者会見場のやり取りが行われている間、総理と官房長官の会話が流れる。

 

官房長官 総理、奴さんどこえ消えちまったんでしょう。

総理  なんか情報が入ってねえのかい。

官房長官 いまんところね、(にんまりとして)それより総理、防衛庁の警務隊から極秘情    報がへえってます。

総理  なんだって?

官房長官 明け方自衛隊のですね、ゲニラ対策の特殊部隊の腕っこきが、十四名姿をくらましたそうです。完全装備で、

総理  なんだと!

官房長官 驚くには当たりませんでしょう、総理の読みの通りでしょうが。泳がしておきやすぜ、あっしが総理に代わって泥は被りやす、奴らの動きを陰で助けやす。

総理  (満足気に)そうかい。

官房長官 奴ら今もテレビで言いていほうでえ抜かしてやがる。

総理  いいって事よ、飴しゃぶらせておけってんだ、今に吠え面かかせてやる。なんだな、こうなると防衛庁が頼みの綱ってわけだ。

官房長官 そういう事で。

総理  なんたって国の面子ってもんがあるんだ、餓鬼のままごとといつまでほうって置くわけにやぁいかねえ。

官房長官 その通りで。それよかアメリカの大統領からなんか言ってきやしたかその後。

総理  あはははっ、言って来たよ、ホットラインで。案の定決まり切った経済問題で、ああだこうだってイラクまで持ち出しやがった。こっちが鵜呑みにすりゃあ、あすかの承認はエイプリルフールのジョークでとぼけるときやがった。

官房長官 それで何と。

総理  決まってるじゃねえか、こっちもとぼけてやったな昨日の筋書きどおり、のらりくらりのおとぼけ戦術よ。舐められてたまるかってんだ。いっそあすかを承認するてったら奴さん慌てるだろうな。あはははっ、

官房長官 それじゃ。

 

質問  あすか国民の国籍問題ですが、現実に照らしてみても皆さんは現在日本人であり、    それぞれのご家族も日本国籍を有しており、ご伴侶が日本国内に生活手段を持ち、    日本国に対しての納税義務者であるわけです。また保有されていると思われる資産、    動産不動産も日本国内にあり、日本の法律に依って保護され、有形無形の権利も法    治国家としての日本国に保証されているわけです。今後いかに対処されるのかお答    え頂きたい。

山内  (得たりと言った笑顔を浮かべ)明快にお答えできます。あすか国民は日本国籍を持つ者の家族ですよ。必然的に私たちは日本国籍を持ち、日本人として有形無形の権利義務を履行する責務を負うものです。その上で国籍はあすか共和国にも有ります。端的に絞って申せば二重国籍者です。ご理解頂けますかしら、卑近な例を上げればフジモリ前ペルー大統領がいい例だと思いますわ。フジモリさんはペルー国籍でありながら、同時に日本国の戸籍簿に本籍地が登録されている日本国籍者でもあるわけです。従って日本政府は日本の国内法に依って、ペルー政府の身柄引き渡しを拒否し、ペルー国会からの召喚状のフシジモリ前ペルー大統領への召喚要請さえ拒否しております。このことは、皆さんよくご存じですよね。以上です。 

 

会見場に異様な雰囲気が醸し出され、ざわめきが寄せては返すといった状態が続いている。

 

質問  すみませんが、ここで視点を変えて素朴な質問をさせて頂きます。よろしいでしょうか、最前からの質問に対して回答される皆様は澱みなく、それもなんら手元に資料の用意もなく答弁される、その事自体驚きなのに時間的に突発的な事件からいくらもたっていない。それなのにこの答弁、どう我々記者団は推測したらよろしいのでしょうか。冒頭の質問にもあったように、あさか共和国建国の裏側になんらかの事前工作、地下工作、きつい推測になりますが、国際的な謀議があったのではないかといった疑問です。即ち日本をおとしめる謀略があったのではないかという事です。いかがでしょうか。

 

会見場に呻きに似たどよめきが走る。

 

石神  (満面に笑みを浮かべて記者団を睥睨するかのように立ち上がる)私たちは昨日から一睡も致しておりません。あすか共和国を建国するについて建議し激論を交わし、衆議一決、皆様にお答えする国是をみたのです。なんらためらいもなく日本国民としての、そうです、恥です。その恥を気後れすることなく払拭するために建国に奔(はし)ったのです。日本人である皆様を前に失礼極まる発言ですが…建国自体も無謀そのものです。しかし止むに止まれぬという言葉があります。恥が私たちを煽ったのですよ。

質問  内閣広報官、具体的に恥とは?

石神  その前に断言します。国際的な謀略といったご質問は笑止です。私たちにも日本人の血が脈々と流れているのですから…では、改めてお答えします。皆さんは現在の日本の現状をどうみております?政治、経済、人心、世相、あなた方が毎日書かれる記事に溜め息が出ませんか、苛立ちを感じませんか。あらゆる新聞雑誌テレビ・ラジオ所謂マスコミ記事、識者と言われる方々の論評全て、飽きることなく一国の指導者、与党野党の政治家を隈無く酷評し糾弾しております。しかし、その政策なりを変えさすことは出来ないでいる。ただ喚いているだけ、そして諦め悪循環は続き、世相は荒れ放題、自分勝手の人間が巷に溢れ人心は荒み少年は非行に走り、国民は戸惑ってただ息を呑むけでお手上げ状態。この日本に未来がありますか、希望を持てますか、政治面経済面社会面それらの記事を書きながらペンを持つ手が怒りに震えませんか、悲しみの涙で紙面が濡れませんか。子供たちにこの現状のままの日本を預けることに心の痛みを感じませんか。(改めて会場を見渡し皮肉っぽく薄笑いをしながら)それとも諦め半分馴れ合い気分で記事をものにしているのですか。私たちはキレました。そして日本からの独立を謳ったのです。よろしいですか、あすか共和国はこうした日本の恥を拭い、日本丸という船の舵取をする指導者の破廉恥振りを冷静に見守り、正しい航路を進んで頂きたく警鐘を鳴らし続けるのです。

 

記者団から一斉に拍手が起き、しばしの間鳴り止まず、外人記者は「ブラボー」ト歓声を挙げ、床を踏み鳴らす者もいる。

 

質問  只いま感銘を受けましたお話の中に日本の子供たちのお話が出ましたが、あすか共和国の子供たちの教育問題はどうなるのですか。

高梨  文部大臣高梨美沙子です。それは一つに日本政府の共和国への対応次第です。私たちは決して日本の教育現状に満足しているわけではありませんが、当面子供たちは日本への留学を希望しております。子供たちには集団生活が必要ですし、また通い慣れた地域でもありますし。その上で日本の教育制度、教育基本法といった面からも、いろいろ日本の文部省に意見を申し入れるつもりでおります。根本的な教育改革を進言する事も念頭に入れております。

 

テレビのアナウンス「記者会見の時間者残り少なくなってまいりましたが、ここで先ほど総理官邸で行われました、官房長官の記者会見での発表をお送り致します。『ただ今官邸におきまして臨時の閣僚会議が持たれ、あすか共和国問題について当面次ぎの方針で当たる事を決定しました。あすか共和国の承認問題、また銀行の現金輸送車襲撃事件の免罪は、現時点では結論には達していません。ただし早急に国内法に照らし、或いは国際事例をつぶさに研究し、国際法は勿論法曹界の識者の意見をくまなく取り入れ、遅からぬ段階で結論を出す事に意見の統一をみました。日本国とあすか共和国との国境は今後とも封鎖はしない。あすか国民の日本国への出入国を原則として認め検問は行わない。また日本国民のあすか国への出入国に一切の制限をしない。因ってあすか共和国児童の、日本国内の学校への留学通学は人道的教育的見地からも認める。あすか政府ならびに国民の日本領土内での、あらゆる物品の購入の自由を認める。ただし決済は円に限る。また水道下水ゴミ処理については先の都知事の従来通りという方針に従い、政府としては一切関与しない。電気ガス電話放送受信についてはあすか共和国とそれぞれの供給会社との協定に、原則として介入しない。郵便物の集配は大局的見地から黙認する。あすか共和国からの119番通報はこれを受理するが、110番通報は紛争を避けるために受理しない。以上です』」

 


あすか共和国の興亡 十五

2014-10-31 04:01:08 | あすか共和国の興亡

テレビの実況放送が既に始まっている。

 

テレビのアナウンス。「昨日世界に向け、日本よりの独立宣言を発信しました、あすか共和国の建国宣言がただ今から行われようとしております。今よりあすか共和国大統領ならびに閣僚の記者会見が行われます。既にアメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ドイツを始め国連加盟の国々からの承認を祝福とともに受け、日本の承認のみが残されているのが現況であります。果たして日本の承認はあるのか、いまもっとも注目されているのがこの一点であります。騒然としていた日本とあすか共和国の国境線からは、日本の警察、機動隊の姿はまったくなく、数名の警官がパトロールするといった、日常的な風景が見られるだけであります。今一同に並ぶあすか共和国の要人たちの前の、テーブルの上には共和国の国旗でしょうか、日の丸の国旗と共に白地に金色の鳳凰の雄姿が鮮やかに染め抜かれた小旗が並んでいます。その旗は門前にも、また玄関にも屋上にもベランダにもへんぽんとひるがえっております。

 

秋田  (建国宣言書を手におもむろに立ち、要人たちも起立する。カメラのフラッシュが一斉に焚かれる)ここに厳粛に、世界の国々に感謝の念を込めてあすか共和国の建国を宣言します。200X年4月1日あすか共和国秋田大統領秋田智子。(記者団から一斉に拍手が起きる)

昭島  皆様の只今の拍手、それぞれの国々を代表されてのあすか共和国建国の意義に協賛され、そして祝福を頂いたものと理解し、大統領ならびにあすか共和国の国民に成り代わりまして感謝いたします。私この度官房長官に任命されました昭島と申します。それではここであすか共和国の国是政治機構並びに対外政策、これは日本国を含めてですが、要綱を簡潔に発表します。我が国はいかなる国に対しても平和共存を軸に対応する。我が国は共和制を敷き、全ての政策は国民の発議を基に国民の審議納得を得て遂行する。また特に日本国に対して敵対することなく、あくまで友好を柱として政策を進めていくことを宣言いたします。次にあすか共和国の国勢を発表します。その国土は元日本国東京都下あすか市あすか町一丁目一番地。その面積9917平方メートル。人口二十人、男十人女十人。軍事力、陸軍のみ兵員五名、装備は小銃2丁自動小銃5丁手榴弾12個。産業は皆無、将来は観光立国を目指し国の財源を確保する。通貨は円。最後になりましたが憲法は現時点で制定も立案も審議外です。しかし基本的に日本国憲法を遵守していくことが妥当としております。これは国民の総意であります。以上であります。

    ではここであすか共和国の大統領ならびに閣僚人事その他の人事を発表します。

    大統領     秋田智子   日本国東京都出身

    官房長官    昭島貞夫   日本国大豆島出身

    大蔵大臣    春島みどり  日本国東京都出身

    法務大臣    山内和子   日本国東京都出身

    国防長官    沢田一郎   日本国大豆島出身

    文部大臣    高梨美沙子  日本国東京都出身

    農林水産大臣  原田まり   日本国東京都出身

    国土庁長官   神宮司真利子 日本国東京都出身  

    内閣広報官   石神ルミコ  日本国東京都出身 

    その他の人員は児童を除き全員その補佐役ないしは相談役とする。それではご質問をお受けします、国家機密に亙らない限り、お答えします。それぞれの質問に対しては、その担当者がお答えする形をとります。(会場内ざわめく)時間は一時間に限らせて頂きます。(記者たちの質問がスピーカーから流れる)

質問  最初に内外記者団を代表いたしまして、かような記者会見の席を設けて下さったあすか共和国大統領、並びに閣僚、そしてあすか共和国の国民の皆様に建国のお祝いと共に、感謝の念を表明いたします。では率直に質問させて頂きます。私共記者団が本日あすか共和国を訪れた際、驚きました事は共和国全国にへんぽんと翻るあすか国旗です。事件発生から短時間のうちにこのような事が可能なのか、その疑問です。共和国建国の事前工作が秋田邸の皆様と官房長官始め大豆島出身の皆様との間で行われていたのではありませんか。

石神  お答えします。私、内閣広報官の石神ルミコ、(笑みを浮かべ)ゴッドストーンでございます。国旗の件、決して事前工作はありません。(にっこりと笑う)本日の記者会見を前に、急遽デザインが子供たちの手によって喜々として進められ、即電通に発注、好意ある徹夜作業によって完成、早朝から電通職員の手で滞りなく飾り立てられたのです。(驚きの歓声が上がる)

昭島  この件について補足します。国旗掲揚について、日本政府からなんら抗議妨害の類いがなかった事を明白にしておきます。

質問  憲法制定の件ですが、あすか共和国は基本的に日本国憲法を遵守していくと申されましたが、先程軍事力を発表したことと矛盾しませんか。

沢田  国防長官の沢田です。基本的にとお断りしております。日本国憲法の第9条については日本国内でも数十年に亙って論議が続き、陸上兵力のみでも12個師団15万人を持つ自衛隊が、未だ軍隊と呼称されておりません。兵力五名のあすか共和国の軍事力が日本国憲法に反するとは夢にも考えておりません。

質問  これはどうしてもお聞きしたい事なので、率直に言葉を選ばず質問します。あすか共和国建国の発端は、またその根底に一昨日の「あぶない銀行」の現金輸送車襲撃事件であります。あすか共和国政府は、ご婦人子供さんを除いて強盗犯として日本警察の追求逮捕の立場に置かれております。日本政府はこの件、建国についてですが、未だなんの見解も表明しておりません。これについて日本の世論が納得できるご答弁を願います。

山内  法務大臣山内和子で御座います。率直なご質問ですので、飾ることなく事実のみを述べさせて頂きます。苦衷の答弁になります、どうぞ恩情あるご理解をお願い致します。現金輸送車襲撃事件はご周知の通りでして、一切の弁解は致しません。一昨日突然招かれざる客として訪れた、官房長官以下六名の方とは初めてお会いしました。そこであすか共和国建国の建議が行われ、そのネックとして現金強奪の件をいかに解決するかが最大の議題となりました。皆様ご存じのように銀行側に強奪金を返還、「あぶない銀行」会長春島氏に免罪を懇請、快く承諾されました。会長のテレビでの発表内容は事件直後の事で私共と多少意志の疎通に欠けるものがあって、あのような私共が人質となっていると誤解されての悲痛な内容となってしまいました。秋田邸側は人質の意識は当初から皆無だった事を、事実としてここで改めてご理解下さるようお願い致します。

昭島  この件につきましては後日、日本政府の正式な免罪符を頂きたく、防衛庁からの武器無断借用を含めて、国際司法裁判所に提訴懇請する事になっております。なお、武器については無断借用の際に一方的ではありますが、借用書を武器庫に添付してきております。日本政府は発表しておりませんが、本日早朝武器返還を申し入れてあります。勿論返還の条件として、あくまで日本政府の以上の件に関しての免罪符が前提であります。

 

テレビのアナウンス「質問が建国問題の核心に迫り、会見場に緊迫感が走り、ざわめきと水を打ったような静けさが交差しております。あすか共和国政府の答弁にも苦汁に満ちたものになっていることは歪めません。記者団側にも重ねての質問を躊躇するのが感じられます。 秋田邸側が闖入して来た七名を、招かれざる突然の訪問者と称しているのが注目されます」

 

質問  強奪金返還の経緯は分かりましたが、今後ですね、共和国の財政基盤はどのように保っていくのでしょうか。先程産業は皆無、観光立国を目指すと発表されましたが、当面の財政基盤をお聞きしたいのですが。世界最小の共和国サンマリノ共和国は観光、切手、そしてイタリアからの援助が、その基盤となっているといわれますが、あすか共和国は日本の援助を求めるのですか。

春島  大蔵大臣の春島みどりです。ご存じの通り夫は「あぶない銀行」日本橋支店長、会長の春島一徹は舅でございます。先ず結論から申します。日本政府の経済援助を求めます。それを前提と致しまして、共和国には現在アメリカを初め各国からの経済援助円借款等の暖かいお申し出がありますが、お断りしております。

質問  具体的にどのような援助を日本政府に求めるのでしょうか。

秋田  私から答えいたします。円借款は念頭に御座いません。それは援助というより経済協力を、協定を締結したいのです。先ず生活基盤として電力ガス水道下水処理設備ゴミ処理の安定供給、食料日常生活用品等の恒常的な輸入購入の自由化の保証。以上の事に関しての交渉を眼目にしております。東京都知事、関東電力にも積極的に働きかけてまいります。

質問  それらについてですが、財政的な裏付けはどのようになさるのですか。

春島  お答えします。皆様薄々お気づきでしょうが、一昨日来共和国に旭日テレビのみが放映拠点を有しております。旭日テレビに独占放映権を許可することによって、放映料を頂きましたの。その金額についてはこの段階ではお話出来ませんが、当面の財政が賄える金額であります。

質問  その事に関して質問します。独占放映について我々は不安を感じております。一社のみの放映はあすか共和国の実情が、片寄った形で世界各国に伝わるのではありませんか。良くも悪くも一社の主観で、お国の国なりが形作られ放映される恐れがあると危惧します。


あすか共和国の興亡 十四

2014-10-30 03:35:00 | あすか共和国の興亡

 

外相  また随分と並べやしたね総理、それが得策ってもんですよ。

法相  法務省としても奴らを表だって免罪には出来やせんから、今んところは玉虫色に扱って惚けっ面で通すのが得策で、

官房長官 あっしもその線で押すのが良いんじゃねえかと、アメリカだって政権交代でなにかと忙しい時期を迎えているんで、ほかの親分衆だってそうですよ、そういつまであすか共和国に構っちゃいられませんよ。元々エイプリルフールから始まった揉め事で、ひとの噂も七十五日、そのうちどこの騒ぎだったんだてえ事にも成りかねませんよ。

総理  よし、官房長官それで行こう。国会審議じゃねえが野党をおちょくる手でいきゃぁいいんだ。御説ごもっとも、すべからく国際世論を真摯に受け止め、そのご期待に極力添うよう前向きに検討をかさね、日本政府として、あらゆる角度からの法的解釈を駆使して、内外ともども納得する結果を念頭に、万端遺漏なき解決に邁進努力を重ねる所存であります。こんな具合でどうでい官房長官、これで押そう。(得意げに胸を反らす)

官房長官 それじゃ皆の衆、決をとりやす。多数決ですぜ。宜しゅう御座んすね。あすか共和国対策は総理のおっしゃるとおりの線で、各国に対応するってことに異存のねえお人は挙手しておくんなせえ。(防衛庁長官と警視総監のみ挙手せず、陪席している統幕や警視庁幹部が二人に拍手する。

官房長官、(彼等にぐっと睨みをきかして)防衛庁と総監よ、賛成の手が多いんだ、言い分はあろうがすんなり引き下がって貰うしかねえですぜ。

防衛長官 あっしだって阿呆じゃねえ、そのくれえの分別はつかあな。だがここで一言ぐれえゆわしてもらたって罰は当たるめえよ。

総監  そうよな兄弟(きょうでい)。

官房長官 なんでい、犬猿の仲が変に乳繰りやがって、

防衛長官 なんだと!

総理  (貫禄十分に)止さねえかい、長官よ、この二人だって身内を思っての事だな、聞いてやんねえ。

防衛長官 ありがとうござんす親分、じゃねえ総理ぃぃ、(二人して目頭を押さえる、思わずハンカチを取り出す閣僚も。官房長官憮然としていたが、テーブルにもたれ嗚咽する二人に、思わず感極まって擦り寄り肩を叩く)

総理  俺はこういう光景は好きだな、東映の任侠映画路線を地で行くってシーンだ。泣かせるぜ。

防衛長官 (感極まって号泣する)ありがとうござんす総理、遠慮なく言わせて頂きやす。

総理  いいともいいとも、遠慮はいらねえぜ。

防衛長官 へい、元はといえばこの騒動(でいり)、あっしの監督不行き届きのために起きた事、重々申し訳なく思っておりやす。なんとかけじめをつけなくちゃならねえと、ねえ知恵絞ってあれこれ策を練ってるんで、おとしまえもつけねえでこの決着じゃあっしの顔が立たねえ。総理、お願えです。どうかあっしを男にしておくんなせえ。この通りだ。(テーブルに額を押し付けて泣く)

総理  頭を上げねえかい、おめえさんの気持ちはわからねえでもねえが、見ての通り片はついたんだ。いまさら話を蒸し返すわけにゃあいかねえ、そこを分かって貰わなくちゃなるめえよ。(おもむろに)だがよ、そのねえ知恵絞って練った策ってのを、聞くだけなら聞いてもいいぜ。

官房長官 (渋面で)総理、

総理  まあまあいいから聞くだけ聞いてやったらどうでい。

防衛長官 総理、自衛隊には選りすぐりの若(わけ)え衆(し)がごまんと控えているんです、身に余る予算を頂きやして、ゲリラ野郎を消すために連日夜なべも厭わず朝討ち夜討ちのしごきに耐えてきてるんです。それを使わねえ手はねえでしょう。それこそ宝の持ち腐れっていうもんで。

官房長官 待ちなせえ、どんな策があるか知れねえが今更手遅れってもんだ、世界中が目を皿にしてあっしらの出方を注目してるんだ。その目のめえで手荒な真似はできねえよ、

防衛長官 (ぐっと胸を反らし、こぶしで鼻をこすり)皆の衆、ようござんすか、自衛隊ゲリラ対策特殊部隊を除隊させるんで、杯を返えさせるんで。(総監、大きく頷く)全員草鞋を履きやす、長え旅に出やす。そうなりゃどこの身内でもねえ、一本どっこの旅烏、どこのどなたとも縁もゆかりもねえ身軽な旅の一本刀でやんす。人別帳からも、煙となって消え失せやす。

総理  話だけ聞けば面白そうだな。

官房長官 (呆れ顔で)総理、

総監  一行連れ立って赤城山に籠もり時期を待ちやす。

総理  何で赤城山なんでい、

官房長官 一つの例えでしょうが、

防衛長官 時期を見計らって殴り込みを掛ける。

総監  若えもんがゲリラになるんで。

防衛庁 ゲリラがゲリラを血祭りにあげるんで。

総監  身内の衆にはなんのいちゃもんもつけさせねえ。

防衛長官 早え話がどこのだれだかわからねえ無宿もんのゲリラが、あすか共和国に殴り込みをかけ影もかたちも無くしちまうんで。

総監  日本って国の喉に突き刺さった刺をきれいさっぱり抜きます。

防衛長官 政府はあっしらには関わりのねえことでって白を切る。

総監  事を終えた若(わけ)え衆(し)はまたまた永え永え草鞋を履く。

防衛長官 政府は「今回起きた騒乱はあくまで、あすか共和国の国内問題であって日本政府は一切介入しない」といちめえの紙っぺらを読み上げりゃあいいんですよ。総監よ、合いの手を入れてくれてありがとよ。

総監  なあーに。

総理  うーん、面白そうだな、だがよ、官房長官も言ってるように世間が見てる前でおおっぴらに騒動は起こせねえぜ、

外相  (総理の乗り気なのに慌てる)いけませんよ総理、防衛庁に釘を刺して置くんなせえ、ナシはついてるんだ、今更騒ぎは起こしちゃならねえと。冗談じゃねえ、そんなことになったら総すかんを食ってしまう。

防衛長官 それじゃこのまま、念を押させて貰うが放っておくんですかい、(怒声をあげる)国のメンツはどうなるんでい!

官房長官 防衛庁の興奮しちゃいけねえよ、閣議の決定事項だ。各国のいたぶりには無視、静観、事態の推移を見守り平和的解決を図る。ようござんすね総理。         

総理  (苛立たしげに)わかってらな。                                                        

舞台溶暗そして溶明。総理と官房長官の二人残っている。

 

官房長官 総理、皆それぞれ官邸を後にしやした、あっしに何か御用で。

総理  ああ、おめえさんに残って貰ったのはよ防衛庁の事よ、聞いておきてえんだ。奴さんさっきの見幕本気かなあ。

官房長官 まあ、はったり半分てとこじゃねえでしょうか。何たってこのままじゃ奴さんにしたって引っ込みがつかねえでしょうよ、てめえの身内から跳ねっ返りを出したんですからね、身内で始末つけてえってのも本音でしょう。

総理  俺はな、防衛庁が万が一言った通りの事仕出かそうと動いても、見て見ねえ腹積もりでいるんだ。それはそれで一つの筋だと考えてるのよ。いいかい、この侭アメリカさんたちの言い分を呑んでだぜ、奴らをほうっといたら、国の締してっものがつかねえ。雨後の筍じゃねえが、後から後から国のあちこちで独立騒ぎが起きたらどうするでい、日本人っちゃ付和雷同物まねが得意だからな。そうなってみねえ本家の存在そのものがやばくなる。他人のいちゃもんなんか構ってられねえんだ。

官房長官 なるほど、奴さんの打つ手を見て見ぬ振り、

総理  大きい声じゃ言えねえが、これはおめえと俺だけの事で、腹にしまっておいて貰いてえんだ。

官房長官 分かりやした。さすが総理、読みが深え。感じ入りやした。

総理  そうかい、俺だってこれだけの縄張りを仕切ってるんだ、先は読まなくちゃなるめえ。そこでたが、奴さんどんな手立て企んでやがんだろう。

官房長官 皆目わかりやせん、奴さん自体(じてい)はていした頭(おつむ)じゃねえが、取り巻きにはしたたかな若い衆(わかいし)がついてやすから、おっしゃる通り見て見ぬ振りで泳がしておきやしょう。

総理  よし、あくまで内緒だぜ。

官房長官 念には及びやせん。

 

                     舞台溶暗

 

                       (8)

 

舞台溶明 秋田邸の広間。記者会見の席が設定され、客席に設(しつら)えた記者席に内外の記者団が詰め掛けている設定。数本のマイクを前に、秋田夫人たちが緊張した面持ちで腰をおろしている。その背後に護衛するように昭島たちが立ち並ぶ。井沢と子供たちの姿は見えない。旭日テレビの実況放送が既に始まっている。

 


あすか共和国の興亡 十三

2014-10-29 05:15:19 | あすか共和国の興亡

 

原田  あら、大臣だなんておっしゃって、恥ずかしいですわ。主人が聞いたら何ていうかしら。笑い飛ばされてしまうんじゃないかしら。

秋田  そんなことありませんよ大臣、会議で決めたことです。自信を持たなくては。

原田  はい、皆様のご推薦に応えるよう微力ながら力いっぱい務めさせていただきます。島元  その意気です。準備が整い次第、マスコミを招集して、あすか共和国の政治機構等    を内外に誇示するのですから。

代田  今この時間、あすか共和国建国のニュースが世界中を駆け巡っている。痛快だなあ。

島元  勿論日本政府、日本国民にも。(みな一斉に乾杯し手を叩く)

昭島  (それを制しながら)しかしあすか共和国は、先程の会議で決定をみたように、日本政府を敵対視せず、あくまで友好的に接するということをお互い再確認しよう。

秋田  そうですわね。皆さんよろしいですね、それが肝要です。(大統領万歳、あすか共和国万歳の声が広間を震わす)

昭島  では明日は、いや今日は早くから忙しくなる。とりあえずこの広間を大統領執務室、外務省国際部、共和国議会兼閣議室並びに合同記者会見場に当てます。二階の居室はご夫人方子供たちで適宜ご使用下さい。我々は一階各所で気ままに寝ます。

沢田  二階ベランダを国防部の詰め所として歩哨を交替で行うことにする。田代、すまんが明け方まで担当してくれ。

田代  わかりました。

昭島  じゃ、散会とします。大統領閣下並びに閣僚の方々お引き取りになり、十分な睡眠をお取り下さい。

秋田  でも皆さん、私不安でわ。もう夜明けまでいくらもありません、徹夜で皆さんとミーティングをしますわ。

昭島  (鼻を詰まらせ)感激です、大統領閣下。しかし現時点での警察の突入の危惧は一応回避されました。ゆっくりと休養をとっていただます。記者会見にそなえて明日一日完璧なる作戦を練ることにします。

 

                                     (7)

 

舞台暗転 下手半分溶明。総理官邸。日本政府の危機管理緊急閣議が開かれている。警視総監監、自衛隊統幕制服組も控えている。

 

総理  (苛立たし気に)どうなっちゃってんだ、だれでもいいから俺に分かりやすく説明しろってんだ!

外相  ですから立て籠もりの犯人が、人質たちと謀りやがってあすか共和国なんてものをおっ建てやがたんで。それを世界中の親分衆に回状廻して、こともあろうにアメリカを先頭に各国の親分衆がこれをいい子いい子しちまったってわけですよ。

総理  それじゃなにかい、アメリカ大統領さんはイラクや北朝鮮をならず者国家だと決めつけておいて、強盗野郎が勝手にあすか市に建てた国が、国際的には合法的なもんだって言うのかい、べらぼうな。勝手もいいとこだ、

官房長官 現時点ではそういうことで。国連事務総長もワシントンの尻馬に乗って祝電まで送ってくるって有り様で。アメリカ大使館もついさっき、小国とはいえ国際的に認知された独立国を、大国である日本が武力でもって包囲して脅迫するなんて許されねえ。仁義にもとるってこわ談判で。まあそんなぐえーで、次官のかみさんが、電話口で大統領とかなんとか口走ったのも合点がいったわけで、

総理  そんでとりええず殴り込みの若いもんを引き上げさせたってわけかい。

総監  若けえもんは男泣きに泣いてましたぜ。(目をしばたたかせる)

総理  そうかいそうかい。 

防衛長官 分かるぜ警視総監よ、(総監にかけより肩を抱く)

通産相 ワシントンの腹は見え見えで、総理、きゃつらはあすか共和国を日本の弁慶の泣き所に仕立てて、ちくりちくり痛ぶる腹積もりなんですよ。

財務  通産の、嫌がらせですよ、これをネタに日本を強請る気なんで。

通産相 そうよ財務省の、この泣き所を足場に市場開放、規制緩和とか産業構造の改革とかのたくって、要はこっちのシマを掠め取る手立てに出やがったんで。

財務  てめえんところの株価が急落したり、購買力が落ちたりすると直ぐに尻持って来やがる。あげくにゃ金融改革だ、不良債権処理を急げと矢の催促だ。

通産相 そうよ、アメリカの景気減速までこちとらのせいにされたんじゃ間尺にあわねえっ    てんだ。

総理  俺だってアメリカに何もしてねえわけじゃねえんだぜ。湾岸の戦争(でいり)の時ゃ、銭だけ出して血を流さねえって,散々厭味言われたもんで、こんだあ自衛隊まで泣き泣き差出してんだぜ。

財務  ごもっともで。おまけに湾岸以上の銭、上納してるんで。

文相  しかし、話は四月一日のエイプリルフールから始まったことですぜ。世界の旦那衆だって、おそらく冗談に乗ったまでで、お互えまさか、世界中のお偉いさんが気い合わしてあすか共和国を認めるなんて、思いもしなかったんじゃねえんですかい。

総理  冗談から駒ってわけかい、じゃこちとらとしても冗談で撥ね付けりゃいいじゃねえか。えぇっ、どうなんでいそこんところは。

官房長官 そこんところですよ総理、アメリカが先に立って旗振りしたもんで、それにおそらく出先の大使館から、それぞれの親分衆にアメしゃぶらしたり、知恵つけたんじゃねえんでしょうか。世界の警察だなんてふん反りけえってるアメリカの梃入れじゃ、エイプリルフールもなにもあったもんじゃねえんですよ。

総理  待ちねえ、それじゃアメリカとこちとらの同盟関係はどうなるんでい。

通産相 政治と経済は別もんってこってすよ。みんなてめえの懐が可愛いってこってすよ。    どいつもこいつも、隙ありゃあ人の懐掠める気でいやがるんだ。油断も隙もあったもんじゃねえ。

防衛長官 (いきり立って)だから言ってるんだ、初(はな)っから四の五言わせねえで自衛隊に招集かけて殴り込みかけりゃあどうってことなかったんだ。それをごたごた御託並べやがってからがこの始末よ。今日の事だってそうよ、アメリカが何言ってこようが、せっかく殴り込みのお膳建てまでしたってえのに、引き上げさせるこたあなかったんだ。警視総監は泣いてるぜ、ええっ!

外相  防衛庁の、それはちっと言い過ぎってもんだぜ。世界中があすか共和国を承認するって始末のさなかに、ドンパチは出来ねえ。

総理  まあ、そうだろうな。防衛庁の、少し頭を冷やしねえ、日本は小国を侵略したとか、市民を無差別に虐殺したとかで袋叩きよ。

官房長官 その通りで、そうなったら閣僚全員国際戦争犯罪法廷に引っ張り出されて戦犯でつるしっ首だぜ。

総理  お詫びしますって頭さげても追いつくめえな。

防衛長官 冗談じゃねえ。身内のいざこざだ、ほっといてくれってんだ。

法相  気持ちはわかるが、事は国内問題をとうに飛び出してるんで、

防衛長官 じゃなにかい法務大臣よ、このまま強盗野郎を見逃せってえのかい。法律はどうなってんでい。

法相  法務省としてはよ、事が国際問題となると今んところわけわかんねえで、

防衛長官 打つ手はねえのかい、騒乱罪とか破防法を持ち出すとか。

法相  それには公安委員会とか招集して法的手続きとやらが複雑なもんで時間がかかる    んで、おいそれってわけにはいかねえんですよ。それよかあすかは、日本じゃなくなってるんだ。

防衛長官 だらしがねえ、

法相  なにっ!

外相  まあまあ、外務省としては、あすか共和国の奴らは銀行強盗でって、アメリカ大使に説明したんですがね、奴さん、それは犯人たちが強奪した金を返し、銀行側が免責したことで解決したとシレッとしてやがんで。そうはいかねえって言ったんですがね、それはごくごく些細な日本の問題で、アメリカ並びにあすか共和国を承認した各国は、国際法上は司法取引が成立したと認め、奴らは犯罪人じゃねえってぬかしやがんで。

総監  べらぼうめ、金盗んでごめんなさいで済みゃあ警察はいらねえよ。司法取引なんてここはアメリカじゃねえんだ。そんなもんくそ食らえってんだ。

防衛長官 そうよ警視庁の、いいかい。国際法かなんかしらねえが、奴らがこちとらのシマの一部を、大きい小せえは問題じゃねえ、掠め取ってるですぜ。それを指くわえて黙ってるんじゃ自衛隊はいらねえ。即刻解体すりゃあいいんだ。

総理  (防衛庁に)そうもいくめえよ。まあ落ちつきねえ。法務省よ、国内問題だってアメリカさんが言うんなら、日本政府は独立は認めねえって開き直ったらどうなんでい。

法相  それはそれで構まわねえんじゃねえんですかい。しかし、だからって国際的に認知されちまった国を攻め込むわけにゃあ、ちと……

総理  にっちもさっちもいかねえって事かい。八方塞がり状態って事かい。

官房長官 総理、ですからこの際事態を静観ってことにしたらどうでしょう。

外相  総理、無視、あくまで無視。仰せごもっともでえって、あさって向いて舌だしてりゃいいんですよ。

総理  外相よ、おめえも案外(あんげえ)悪党だな。

外相  そいつはひでえっすよ。

総理  つまりだ、ぬらりくらり、暖簾に腕押し、柳に風、糠に釘、蛙の面に小便、馬の耳に念仏、馬耳東風知らぬ顔の半兵衛と決め込むわけだな。


あすか共和国の興亡 十二

2014-10-28 04:31:14 | あすか共和国の興亡

 

補佐官 なるほど、江戸の仇を長崎での類いですな閣下。

大統領 何だねそりゃあ、君は時々わからん事を言うな。まあいい、あすか共和国にどんどん親睦攻勢に出るんだ。友好条約を結ぶも良し、経済援助も良し、武器貸与も良し、なんなら安保条約の締結も推し進めてもいいぞ、なんでも有りだ。ようし、日本からイラク復興資金もわんさと搾り取るぞ。そうだ牛肉輸出も一挙拡大だ、あっはは、吉野家も喜ぶぞ、はっはははっ。

 

舞台暗転 秋田邸の居間。秋田夫人と昭島の二人、上手の端にスポットで浮かんでいる。

 

秋田  昭島さん、ちょっとお聞きしてもよろしいでしょうか。

昭島  なんなりと。

秋田  昭島さん、現金輸送車の襲撃、そしてパトカーの追跡からの、私(わたくし)宅への訪問。総て仕組んだものではないのですか?日本国からの分離独立のための。

昭島  はははっ、お気づきですか、さすがです大統領閣下。襲撃後パトカーに追尾させ、お宅に避難すること、もっとも追尾が急で銃の乱射というヘマは犯しましたが。総て事前にお宅そのものと、近辺を徹底的に調査しての筋書きです。

秋田  昨日、私宅で誕生日会が催されることも。

昭島  申し訳ありません。お陰さまで日本中の耳目を秋田邸に集中させるという、第一段階をクリアしました。決して皆さんを騙そうとしたわけでは……(秋田の顔を不安げに見る)

秋田  (微笑みで返し)それをお聞きして安心しました。現金強奪という単純な粗暴犯ではなかったのですね。

昭島  えっ?

秋田  分離独立の提案が、現金輸送車襲撃の失敗からの、自暴自棄の所産でないことがはっきりしました。

昭島  ……

 

暗転 上手溶明。警察の前線対策本部、壁に秋田邸の見取り図が張られている。

 

署長  とにかくただ事ではない。肉親の犯人説得どころではない、中止だ。そうだ皆さんを一応宿舎にお帰ししろ。(幹部伝令に走る)一刻を争う救出作戦だ。許可はまだ出んのかね。

日本橋 あすか署長、電話の調子では邸内は極限状態でしたな。なにか異変が起きた事には間違いない。夫人の電話にただならぬものが感じられた。まるで錯乱してますよ。あすか共和国とか大統領とか、

隊長  同感です。一刻も早く救出作戦を敢行せねば。事態は最悪ですぞ。総理はなにを迷っているんだ。人質はパニックを起こし、錯乱状態だってえのに。おい、突入命令はまだ来んのか、(奥の部下に怒鳴る、「そちらの電話に直通になっております」部下の返事も荒々しい)なに躊躇してるんだ総理は。相変わらず日和見ってやがんだな。

署長  隊長、見込みはあるのですか。私は中の状態が心配で心配でならんのですよ。なにしろ今が旬の、女盛りの、なんです、女性が七人も監禁されているんだ。そこに血の気の旺盛な若者が七人もとぐろを巻いている。わあっ数が合う、考えただけで身が凍る思いだ。子を目の前にして、ああ、耐えられん。(署長、髪の毛を掻き毟る)

隊長  署長、お気持ちはわかるが、お言葉ちと謹んで貰いたい。そんな事態を防ぐために我々はここにいるのですぞ。救出作戦敢行です。

 

電話が鳴り、隊長慌てて取る。

 

隊長  分かりました。よくご決断を。一刻の猶予も許せません。(受話器を置き)みんな突入許可が出たぞ。払暁突入決行だお二人さん。

署長  いや無理だ、

隊長  なにを今更、

署長  いや無理だ、中の様子が皆目不明なのに作戦強行なんて。ご覧になったでしょう、    窓という窓は完全にシャッターが降ろされ、次官から提出された邸宅の設計図によればその厚さ十ミリですぞ。建物の外壁の厚さだって五十センチだ。どうやって破壊突破するんです。

隊長  (悠然と)そんな事は先刻承知してます。

日本橋 何だって次官はこんな頑強な建物を建てたんだ。

隊長  阪神大地震の教訓だそうです。

署長  まるで要塞だ、馬鹿げている。程度ってものを心得ておらんのか次官は。  

隊長  (毅然として)とにかく突入命令が出たのです。払暁突入です。既に特殊部隊は腕を鳴らして待機してますし、本庁の許可の出た今決行あるのみです。特殊部隊はこの日のために日夜連続の猛訓練を重ねているのです。警視庁特殊急襲部隊の実力勇敢さ沈着さを信じて頂きたい。新たに開発された突入用機材の優秀さは完璧です。その優秀さは、積み重ねられた訓練で実証されてます。さきほどから申し上げている通りの作戦で敢行します。あすか署日本橋署の警官隊にはお願いしてるように後方支援を受け持って貰います。

署長  それまでに奴らが不埒な行動に出ねばいいのだが、

隊長  またそれをおっしゃる、彼等とて野獣ではありませんよ。

署長  おのれ奴ら、ひっ捕まえたら八つ裂きにしてくれるぞ!

隊長  そうです、その意気です。仕上げは隆々ごろうじろというとこですよ。浅間山荘の二の舞いは踏みません、隊員にも武器の使用を許可してあります。殉職者は絶対出しませんよ、勿論人質も無傷で救出します。狙撃隊も配備してあります。なにが自衛隊のオリンピック候補だってんだ。警視庁の狙撃隊の腕前は自衛隊にひけはとらん、屁でも食らえってんだ。

署長  隊長、馬鹿に高揚してますね、落ち着いて下さい。貴方が頼りなんですから。

隊長  武者震いですよ。

署長  それならよろしいのです。

 

そこへ警官が飛び込んで来る。

 

署員  隊長殿、本庁より緊急指令であります。

隊長  何事だ慌てふためいて。

署員  強行手段は即時中止。直ちに部隊を本隊に帰還させよとの命令です。

隊長  何にい、馬鹿な、何が起きたんだ。何で今度はそっちの電話なんだ、混乱の極みもいいとこだ、電話をとれ、総監に繋げ。こちら対策本部です。何事です突入中止とは、はっ、こちらにはまだなんのニュースも入って来ておりません。はい、はい、はい(隊長の声、次第に消沈小声になり舞台暗転)

                                  

舞台溶明大広間、時刻は深夜十二時を過ぎている。舞台大いに盛り上がりテーブルの上にワインの瓶が並び、次々に開けられ乾杯の音頭が繰り返されている。子供たちの姿は見えない。

 

昭島  さすがアメリカだ、いの一番に承認の連絡だ。大統領の署名入りとは泣かされるよ。フロンティヤスピリットいまだ盛んなりだ。四月一日作戦大成功だ。これで大統領、あすか共和国は盤石の基礎が打ち立てられました。イギリスもロシヤもカナダもイタリアも承認を!

沢田  世界の大国の承認が雪崩のような勢いで舞い込んできてます。

秋田  本当に夢のようです。あなたがたの作戦が見事図にあたりましたね。

 

無線の呼び出し音

 

島元  なに、表の動きが慌ただしい、ふん、装甲車が撤退、機動隊が邸内から消えて行くか。そうかベランダからの見張りはもう必要ないだろう。沢田、代田を呼び戻してもかまわないだろう。代田、戻って一緒に祝杯をあげよう。大丈夫だよ、広間から見てれば十分だ、すぐ降りてこいよ。

沢田  (FAX手にしながら)おい、みんな聞いてくれ。フランス大統領から祝辞とともに、国防軍が手薄なら、外人部隊を派遣するにやぶさかではないと言ってきてるぞ。(歓声が上がる)さすがフランス、言うことが粋だなあ。

山内  外人部隊ですって、まあ素敵、モロッコ、ゲーリークーパー、デイトリッヒ。あらいやだわ私としたことが、齢が知れちゃう。

井沢  そんなことありません、俺たちだってあの名画は知ってますよ。

山内  あら、ほんとに井沢さんておやさしいのね。

 

代田、皆と握手を交わしながら祝杯の輪に合流。そこへお手伝いが二階から降りて来る。

 

原田  皆さん、子供たちは興奮も収まりやっと眠りにつきました。あすか共和国の国旗のデザインで、もう夢中でしたからね。

昭島  それは良かった。農林水産大臣ご苦労様でした。

原田  あら、大臣だなんておっしゃって、恥ずかしいですわ。主人が聞いたら何ていうか


あすか共和国の興亡 十一

2014-10-27 03:38:29 | あすか共和国の興亡

 

秋田  (毅然と立ち)昭島さん、警察に電話を掛けて下さい。私が出ます。

 

(秋田と署長の電話のやり取り)

 

秋田  もしもし、あすか署長ですか。

署長  そうですが、あなたは。

秋田  秋田です。

署長  (咳き込んで)秋田次官の奥様、ご無事ですか!  

秋田  あすか共和国大統領秋田智子です。(皆一斉に歓声を上げる)

署長  はあっ、電話口が騒々しくてよく聞き取れませんが、なんとおっしゃいましたのでしょうか。

秋田  私はあすか共和国大統領秋田智子です。

署長  大統領?なんの事です。側でだれか脅迫して言わせてるのですね。

秋田  お黙りなさい。一国の大統領に対して無礼ですよその言辞は!謹みなさい。

署長  はあっ?あの、次官夫人落ち着いてください、お気を確かに。

秋田  署長、いまから私の言う事を心して聞きなさい。

署長  どうなってるんですか次官夫人。

秋田  直ちに雑音放送を取りやめなさい。

署長  犯人の指示ですね次官夫人。

秋田  犯人とは誰を指して言ってるのですか。ああ、彼等を指しているのですね。あなたがたはとんでもない間違いを犯しています。彼等は突然の前触れなしでの誕生日パーティ会場への訪問でしたが、その問題はすでに解決済みです。彼等と私たちはいま堅い絆で結ばれ、一つの目的のために力を結集して邁進しているのです。これから、ここあすか共和国では重要会議が持たれます。雑音を齎さないようあすか署、並びに日本政府に警告します。あすか共和国に対しいわれなき中傷放送を直ちに止めなさい。警告を無視した場合起こり得る、いかなる事態の責任は全て日本政府にあることを肝に銘じなさい。以上です。(秋田、電話を悠然と置く、皆一斉に拍手を送る)

昭島  お見事です。もっともこの段階では署長、狐につままれた思いでしょうが。

沢田  おいおい時間の経過とともに事の重大さに気づくでしょう。では外が静かになったところで国民会議を開催しましょう。子供諸君はそれぞれのお母さんたちの側に立ち、会議に参加して下さい(子供たち歓声をあげ喜々として所定く位置につく)

 

舞台暗転 下手半分溶明。ここはアメリカ大統領の執務室。大統領物思いにふけっている。そこへ大統領補佐官、部下を伴い入室する。

 

補佐官 (にこにこしながら)閣下、只今東京から珍妙なメールが飛び込んで参りました。

大統領 補佐官、ばかに嬉しそうじゃないか。何事だね。

補佐官 (紙片をちらつかせながら)東京の一角に日本政府から離反して「あすか」という独立国家が誕生したのです。僅か9917平方メートルという超ミニ国家であります。

大統領 それで、

補佐官 アメリカ大統領にあすか共和国の速やかな承認を求めてきております。

大統領 ほう、

補佐官 閣下、日本時間四月一日付けです。

大統領 四月一日付けだ?ほう、そうか。それで君の意見は?

補佐官 あははっ、お気づきになりましたか。エイプリルフール。ジョークですよ、人騒がせな。暇人がいるもんですな世間にゃ、あはははっ。ではおくつろぎのところお邪魔しました。(笑いながら退出しようとする)

大統領 待ちたまえ。何がジョークで、あはははっ、だ。 

補佐官 はあっ?、

大統領 それでよく大統領補佐官が務まるな。そのメール、アメリカ大統領だけに発信されたのではあるまい。

補佐官 おそらく主要国の元首に軒並み送られていると推測されますが…

大統領 そうだろう。勿論イギリス首相にもな。彼はどう対応する、いいか、ユーモアはイギリス人だけの専売特許じゃない。アメリカ人だってユーモアやウイットに富んでいるという事を世界に先駆けて証明しなくてはならない。またとない絶好の機会ではないか。

補佐官 しかし事実関係を、もう少し把握してからのほうがよろしいのではありませんか。大統領 きみい、四月一日は待っててはくれんよ。ほかの国々もおそらく手を叩いて承認す   るに違いない。この事は二十一世紀最初の微笑ましいニュースとして世界中を駆け巡る。アメリカはその尻馬に乗るわけにはいかん、アメリカ合衆国はなんでも一番だ。世界に率先して範を垂れねばならんのだよ。

補佐官 そういう事で、では至急在日大使に訓令を送ります。

大統領 何言ってるか。直々にあすか大統領に承認書を送るのだ。直ちに草案を作りたまえ、署名をするから。(補佐官、部下を走らす)それから補佐官、明日招集される国連総会での演説文を書き換えたまえ。あすか共和国誕生の祝賀演説にするのだ。アメリカが世界の指導者であることのなによりの証明になる。さすがアメリカ合衆国は懐が大きいと、世界各国の称賛の嵐を呼ぶこと間違いなしだ。

補佐官 はい、わかりました。早速に。

大統領 それでよしだ。(そこに補佐官の部下が飛び込んでくる)

部下  大統領閣下、ただいま東京のアメリカ大使館から電文が入りました。

大統領 それより承認書は。(部下慌てて紙片を差し出す。大統領それに目を通し)うむ、    よしこれでいいだろう。(すらすらっと署名をし)発信したまえ。

 

補佐官、部下の差し出した東京のアメリカ大使館からの電文を見ながら、部下と困惑げに首をかしげている。

 

大統領 なにを愚図愚図しておる、エイプリルフールは待っててはくれんぞ。(部下、大統領の一喝に部屋を飛び出していく)

補佐官 大統領、東京からの電文ですが。

大統領 読みたまえ。

補佐官 はい、テレビや新聞のニュースでもその片鱗は入ってきておるのですが…

大統領 何だね?

補佐官 電文は長いので要点を説明させていただきます。昨日東京で強盗事件が発生しまして、強盗団が人質をとって民家に立て籠もり、警官隊と対峙するという事態に至ってるそうであります。そしてその後犯人は奪った金を銀行に返し、銀行側との交渉で事件はなかったものとして免責を主張、銀行側もこれを了承、マスコミを通じて世間の諒解を訴えたそうであります。

大統領 ふうん、それがどうかしたのかね。

補佐官 実は強盗団の立て籠もった場所が、東京都下あすか市あすか町一丁目一番地日本外務省事務次官秋田成人の邸宅であります。ということは、

大統領 言わんでもわかっておる。メールやFAXはそこから発信されたと言いたいんだろう。結構ではないか。

補佐官 はぁっ?

大統領 いいかね、これがテロとか過激派とか、ゲリラ集団や日本政府の転覆を企てる政治結社の所業なら問題は別だが、強盗団とはかえってユーモラスではないか。日本政府の慌て振りが目に見えるようだ。近ごろとんとお目に掛かれない痛快事だよ補佐官。

補佐官 大統領がそうお考えならば一向に差し支えありません。ですが一応日本政府に打診してはいかがなものでしょうか。両国間になにかと悶着が起きてはなんですので。

大統領 ほうっとけ、君は案外肝っ玉が小さいの。

補佐官 しかし相手は強盗団ですよ。それに議会に諮らず承認しては、野党は何かと手ぐすね引いてますので。

大統領 君もしつこいね。強盗団ではないよ、銀行側は免責を謳っているというではないか。

補佐官 しかし法的にどうかと、

大統領 そんなことは日本の内政問題だ、知ったことかね。それより議会だが、議会がなんか言って来てもエイプリルフールのジョークだと言えば済む事だ。千歳一隅のチャンスだよ補佐官、

補佐官 ええっ、

大統領 わからんのかね。日本政府はこのところ何かと我々の要求を躱している。検討するとか、真摯に受け止めているとか言葉を濁し、巧みに話をうやむやにしてしまう。日本企業ばかり真綿で包んで外資系企業の、とりわけアメリカ企業の進出を拒んでいる。一向に規制を緩和して市場を開放しようとしない。不届きの一語に尽きる態度だ。ここで日本政府の足元をすくって慌てさせ外交攻勢をかけるのだ。


あすか共和国の興亡 十

2014-10-26 04:22:48 | あすか共和国の興亡

 

沢田  (声を強め)そのために緊急に、国際的に秋田国の承認を得るんではありませんか。勿論おっしゃるような心配は皆無です。人間は親を自分で選ぶ事は不可能ですが、国を選ぶ事は自由です、努力は必要ですが。幻滅を感じたどうしようもない国からの亡命することも可能なのです。希望の国に移住するとか、その国に帰化するとかするではありませんか。我々は自分たちで国を作り、独立し世界の国々から承認を得るのです。日本国に対して日本人として銃を向けるわけではないのです。平和裡に秋田国の独立を勝ち取るのです。

秋田  仮にですよ、秋田国が国際的に承認されたとして秋田国に将来はあるのですか。

昭島  ですから先程から申してます。夢を見るのです、お互い夢を語るのですよ。秋田国から日本国に対し警鐘を鳴らし、日本国民に啓蒙を促し共により良い日本の改革を薦めるのですよ。いかがですか秋田夫人、どうしてもあなたがたの賛同が欲しいのです。ご一緒に独立の花火を打ち上げようではありませんか。愉快ではありませんか。秋田国の将来は自ずと見えてまいります。

春島  (興奮した面持ちで)なんですか、お話を伺っていると、こう、ぼうっと目の前が明るくなってきたような気がしてきましたわ私。(秋田に向かって)奥様、私夢を見たくなりました。皆様はいかがですか。

山内  (立ち上がり)私賛成します。考えてみたら日本て随分と出鱈目な国ですわ、どうしようもない国ではありませんか。未練なんかありませんことよ。

昭島  そうです。どうしようもない国です。経済政策一つ見ても絶望的です。この国の借金はこともあろうに六百六十六兆円ですよ。この金額がいかに膨大なものか考えた事ありますか。仮に毎日ですよ、百億円返済したとしても百八十年かかるんす。この返済をこの国の子供たちに背負わせる羽目になってるんです、許されていいものでしょうか。すべて国の舵取を誤った悪行数々の政治屋の仕業です。景気回復策とかいってその場限りの大手銀行やゼネコン、大企業への公的資金の投入。全て日本国民の血と汗の結晶ですよ。呆れ果てて言葉にもならないとは正にこの事ですよ。

高梨  私も子供の未来のためにも、いま行動に移らねばとひしと感じてまいりましたわ。

神宮司 ロマンチックではございません日本からの独立、素敵よ。

石神  革命闘争に馳せ参じる。ヘミングウエイの世界だわ。

山内  夫からの独立戦争でもあるわけよ。

高梨  日ごろ子供の教育家事に横着を決め込んでいる夫たちからのですわよね。

神宮司  自分たちで国の方針を図り将来を決め、より良い国造りに邁進するなんて夢のようだわ。

山内  まいりましょう、まいりましょう。皆さんして。

原田  私は奥様方に付いてまいります、もろ手を上げて。

秋田  私もなんですか皆さんの熱意に感化されそう、いえその気になったとはっきりと言えます。(男たち感極まって手を握り合い、夫人たちの肩を叩いて廻る)

春島  (おもむろに)さっき国の名前を仮に秋田国とかおっしゃいましたが、これは提案です。いかがでしょう、独立発祥の地秋田様のお屋敷の地名に因んで国名はすんなりと「あすか」としては、(夫人たち一斉に歓声を上げ、あすかあすかと連呼する。男たちもそれに唱和する)あすかは飛鳥に通じ日本の古代文化発祥の地でも御座いますわ。

石神  明日香の村にも通じ、ロマンの香を漂わすではありませんの。ロマンチックだわ。    

夫人たち、歓声を上げる。

 

昭島  (皆を制して)我々も国名をあすかと最初から第一候補に上げていたのです。皆様の感性には脱帽します、挙国一致の賛同を得て光栄です。国制は大統領を軸に共和制を布き正式に国名をあすか共和国と命名しましょう。ご異存ありませんか。

 

全員口々に異議無しを唱え顔面紅潮させ万歳を叫ぶ。二階から子供たちがにこやかな顔の井沢に先導されて駆け降りて来る

 

沢田  井沢、ご夫人たちの賛同を得たぞ、喜べ。いよいよ独立に向かって一直線だ。

井沢  (喜色満面で)そうか、やったな。みんなご苦労さん。

 

子供たちをそれぞれの親たちが抱えるように出迎え、はしゃぎながら耳打ちしている。

 

翔太  じゃ僕たちこれからもずっと井沢のお兄さんに勉強教えて貰えるんだ。みんなと一緒に。わあ凄い。(子供たち歓声をあげながら井沢の回りを手を繋ぎ廻り始める)

昭島  代田、ご苦労だが事の顛末をベランダの田代に伝えて、見張りを代わってやってくれ(代田、躍るように二階へ行く)皆さんご静粛にねがいます。只今から独立の第一歩を踏み出します。その前にご異存はなかろうかと思いますが、いかがでしょう。あすか共和国初代大統領に秋田夫人に就任して頂く事を提案します。

 

一斉に賛同の拍手が沸き起こり、秋田夫人が顔を赤らめながらも粛然と身を引き締めて立つ。

 

昭島  ありがとう御座います。ではあすか共和国大統領秋田智子の名において独立宣言を世界に向けて宣言します。沢田、島元、代田、元井、資料を持ってパソコンに向かってくれ。在京の外国大使館の大使。各国の政府官邸に元首、国連本部の事務総長宛てに宣言文を送る。いいな。「200X年日本時間4月1日我々あすか共和国国民は極東の国、日本国の首都東京都下あすか市あすか町一丁目一番地に9917平方メートルの国土を平和的手段をもって確保、日本国と決別してあすか共和国を建国し、ここに独立を厳粛に宣言いたします。貴国ならびに国連の速やかな承認を懇請いたします。200X年日本時間4月1日あすか共和国大統領秋田智子」

 

沢田ら四人パソコンのキーを機関銃のような早さで叩きメールやFAXを発信する。子供たちはその背後に群がり口々に驚愕の声と歓声を上げる。

 

子供たち 「わあっ、これは英語だ」「あたしこの字わかんないわ」「フランス語だよ」「わっ、この字虫が這ってるみたいだわ」「アラビヤ語かな」「これヘブライ語だよきっと」「これはドイツ語よ」「これロシヤ語だ」「凄おい、韓国語、ハングルだよね」「漢字がずらっと並んで、これ中国語よね」

 

秋田  さあさあみんな、お兄さんたちの邪魔になるから少し静かにしましょうね。みんな感激でしょう。今にみんなもお兄さんたちのようになるのよ。これからは世界のあちこちで活躍しなければね。

昭島  大統領閣下、仰せの通りです。子供たちにはいい刺激になりますね。

秋田  あらいやですわ大統領閣下なんて。

昭島  いえ、今後そう言わせて頂きます。ご主人が外務次官であられたのが幸いいたしました。ご主人のお部屋に国際的な資料が山積みされておりました。いまその資料を元に独立宣言文を各国に発信しているのです。

秋田  よろしいように。

沢田  (立ち上がってくる)俺の持ち分は終わった。みんなもそろそろ終わるだろう。

島元  (立ち上がって来る)俺も終わった。(残る二人も戻る)

秋田  この後はどう事態は進展するのですか。

昭島  各国の承認を待つのみです。その前にあすか共和国の政治体制綱領を確立せねばなりません。我が国としてはあくまで国民合議制がモットーですので、国民会議を開催せねばなりません。発議の権利は国民が一人一人持ちます。(夫人たち、三人のやりとりを真剣な面持ちで見守っている)

秋田  素晴らしい事です。

沢田  緊急に各分野の担当を決めねばなりません。国民全部がなにかしらの責務を担わねば小国であるあすか共和国は運営していけません。私としては大統領に国民会議の招集を提言いたします。どうかご許可をお願い致します。

秋田  勿論。許可します。国民会議の招集をどうぞ。

 

いきなりハンドマイクで警察の呼びかけが始まる。

 

犯人たちに通告する。わたしはあすか署長である。君達がかよわい女性子供を盾に、無慈悲な立て籠もりを始めてから二日目を迎えている。我々は人質の安全を第一に考え君達の要求を受け入れてきた。しかし警察の忍耐にも限度がある。あらゆる手段を講じて人質の無事解放を実行せねばならぬ責務がある。いまからでもおそくはない、君たちには逃走の手立ては皆無である。周囲は完全に包囲されているのだ、すぐ人質を解放し武器を捨てて投降しなさい。全国民が君達の出方を注視している。テレビで一部始終を注目し、人質の無事解放を願っているのだ。君達の肉親も今ここに集まっている。世間の厳しい非難の眼差しに身を細め、君達の犯し罪に心を痛めて、君達の投降を願ってここにいらしてる。その血を吐くような呼びかけに素直に耳を傾けなさい。

 

テレビの中継放送。「皆さんのお耳に肉親たちの涙交じりの呼びかけが達していると思います。林立した水銀灯で真昼を凌ぐ邸内に、次々に息子を兄を弟を懸命に説得する悲痛な声がこだまし消えていきます。果たしてこの説得の声が犯人たちに届くのでしょうか、聞き入れられるのでしょうか。屋敷は水銀灯の明かりの中、無情に立ち尽くしたままです。反応はいまのところ全くありません。説得の声は空しく夕闇に溶け込まれていくようです。警察の次の手が待たれます」


あすか共和国の興亡 九

2014-10-25 02:16:41 | あすか共和国の興亡

                              (6)

 

                      舞台暗転 

 

テレビの中継放送の声が流れる「春の一日もようやく暮れかかっています。人質の親子の姿は邸内に消え、いま屋敷の窓という窓は厚いカーテンに覆われ、物音一つ響いて来ず静まりかえっております。警官隊のみが屋敷を囲んだ土塁に等間隔で配置され、水も漏らさぬ警戒を続けております。今後警察はどんな行動に出るのでしょうか、犯人たちはいかなる要求を出してくるのか、人質の早期解放はあるのか、警察の実力行使は果たしてあるのか、予断は全く出来ません。陽はいま完全に沈み、夕闇が足早に近付いております。人質親子は銃口の下で初めての夜を、いかなる気持ちで迎えるのでしょうか。肉親たちの気遣いはいかばかりか、犯人たちに全国民は一刻もはやく人質を解放する事を訴えております。あっ、いま広大な庭園に水銀灯が一斉に点灯されました。まばゆいばかりの明るさです。昼間と見まがうほどです。邸宅が暗く霞んで浮き上がってみえます。おそらく邸内からは敷地の隅々まで一望出来るのではないでしょうか。地面を這う虫一匹でも見逃さないでしょう。勿論、警官隊の動きは逐一識別可能でしょう。果たしてこの状態下、警察はいかなる行動が出来るのでしょうか、憂慮は果てしありません。空しく今日は暮れるのでしょうか」

 

                       舞台溶明 

 

二日目。秋田邸の広間、大テーブルが置かれ、七人の人質が横並びに正面を向いて椅子に掛けている。井沢、田代を除いた五人が左右に立つ。いずれも緊張した面持ちである。反面婦人たちはリラックスしている。笑みさえ浮かべ互いに何事か囁き合っている。

 

昭島  改めて先程秋田夫人にお願いがあるとお話しした件でお集まり頂きました。最初は秋田夫人を通じて皆さんに是が非とも承諾して欲しかったのですが、事態は緊迫しておりますので、一挙みなさんにご一緒に話を聞いて頂きます。

秋田  何でしょう改まって、重要なお話しのようですがお二人欠けていますわね。子供たちは出席させなくてもよろしいのですか。

沢田  田代は見張り、井沢は子供たちの勉強の時間で二階に出張させました。

春島  井沢さんて、本当に聡明そうな方のようですね。なによりやさしくていらしてますわ。

山内  ほんとうに、昨日今日と僅かな時間に子供たちすっかりなついて。

高梨  ほんとう。一日で子供たちの人気者です。学校の先生もああでなくては。

神宮司 無理に塾になんか通わせませんわ。

石神  当分ここで勉強見ていただきたいぐらいですわね。

山内  合宿して受験勉強しているみたい、願ってもないことですわ。

高梨  おまけに母子共々ですもの、環境もすこぶる良好ですしね。

神宮司 なんたって先生がT大出身ですし、それも優秀な成績で卒業なさったとか。ねえ、    みなさん。

石神  ここはひとつ秋田さんにお願いして、ずうっと置いていただきたいわ。

春島  みなさんもそう思います?それよりうるさいだけで役立たずの亭主は居ないし。

山内  宅なんか、勉強してるか?それだけですもんね。

高梨  (改まって)私、こんな事言っていいかしら、不謹慎かもしれませんけど、昨日ベランダで手を振ったときなんかこう、興奮しちゃって。

神宮司 あら奥さん、あたしもそうなのよ。体が顫えてきちゃって止まらないの。

石神  あのう…ほらお正月に皇居参賀ってあるじゃありません、皇族の方々がお揃いでお出ましになって、お手を振るわれるじゃありません、なんですかそんな気分になっちゃって。

山内  昨夜テレビで「人質親子は銃口の下で初めての夜を、いかなる気持ちで迎えるのでしょうか」なんて言ってましたけど、なんかピンときませんでしたわ私。

高梨  この方たち、それほど悪人には見えませんしね。子供たちのいいお兄さんて感じですもんね。ねえ皆さん、秋田さんにこの状態をずっと続けて頂けないかお願いしましょうよ。

神宮司 せっかくリーダーのお骨折りで教材や運動用具も届けられた事ですし。

春島  秋田さんどんなものかしら。皆さんもああおっしゃってるんですし。

秋田  (しばし呆然として言葉もなし、昭島と沢田そんな夫人を見てにんまりと笑みを交わしている)ちょっとお待ちになって、みなさんの気持ちも分からないではないではないですけど…

春島  そんなら話は早いではございませんか、ご主人の秋田さんにお電話差し上げて、警察にそっとしておいてくれって、言っていただくのよ。私たちは安全で全く身の危険を感じてなんかいないと。子供たちも昨日半日ですっかり強盗さんたちと打ち解けて、喜々として勉強スポーツに励んでいるって。いかが皆さん。(夫人たち一斉に賛同の拍手をする。秋田、目が点になる)

山内  この方たち、お金は返したんですし春島さんのお義父様も銀行には被害がなかった、罪は問わない、なにより事件そのものもなかったっておっしゃってるではございませんか。

高梨  それに私たちはべつに監禁とか脅迫されているわけではないし、人質って意識は全然ないんですから。

風見  加害者も被害者も居りませんはここには。

石神  強盗事件も人質事件もないってことですわね。

山内  この状態で子供たちに受験勉強を続けさせてはいかがでしょう。

高梨  勿論いろいろ費用はかかりますけど、秋田さんだけにご負担はおかけしませんことよ。

神宮司 みんなして相応の負担させいただきます。

石神  私も早速主人に連絡させて頂いきますわ、なんの心配もないって。(皆それぞれ頷きあい秋田を見る)

秋田  しかし現実には警察はここを包囲していて、この方たちを捕まえようとしているのよ。(しかしその言葉には力が失われている)  

昭島  そこです秋田夫人、(昭島、ここぞとばかり身を乗り出す。頬を紅潮させ眼差し

    は真剣である)警察に包囲を解かせるのです。

秋田  そんな事出来るんですか。

昭島  出来ます。策は練りに練ってあります。

沢田  まあ、昭島の話を聞いてやって下さい。

秋田  昭島さん、警察の包囲を解かせるってどういう事でしょうか。

昭島  前から言ってましたよね、俺たちの提案要請懇願を聞いて頂きたいと。

秋田  そうでしたわね。一体どういう事なんですか。

昭島  我々は、我々とは俺たちそれにあなたがた、お子さんも含まれます。勿論ご家族の皆さんもです。

原田  (不安げに)私もでしょうか。

昭島  むろんです(お手伝い、にっこりして夫人たちを見回す)よろしいですか、この秋田邸を日本から分離するのです。日本国から独立するのです。日本国から袂を分かち新しい国を建国するのです。国名はこれから合議で決めます。

秋田  何ですって。(みな一応に驚愕の声を上げるが、その面持ちは真剣そして興味一杯である)

昭島  我々は、これは仮の国名ですが秋田国が日本から独立したという宣言を世界に発信します、高らかに。そして全世界の国々から承認をかちとります!

秋田  そんなこと可能なんですか。日本から別れるなんて、戸籍や子供たちの将来はどうなるんです。

昭島  夢を語る、そうお考え下さい。子供たちの将来、それが一番重要なことです。その前に我々が犯した事件につきましてお話します。アメリカを介して国際的な司法取引で免罪をかちとります。簡単とは申しませんがこれは根気よく交渉をつづけます。その後で日本との友好条約締結に持っていきます。それに付則して種々、より良い生活環境を維持するために交渉を続けます。その中にはもちろん秋田さんの心配されてる子供たちの将来もふくまれます。具体的な事柄は事態が進展していく中でお話しし諒解を得ていきます。よろしいですか。皆さん今の日本の現状をみてどうお考えになりますか。この国に未来が見えますか……子供たちの将来を考えるならば、ここで日本に警鐘を鳴らすのです。日本脱出を謳うのです。お家大事保身第一と右往左往する為政者たち、官僚、大企業、銀行等に鉄槌を下すのです。そして安穏と不甲斐なく、綿々とそれらのいうままにに従う日本国民に目を覚まして貰うのです。

秋田  興味はそそられますわ。(夫人達を見回し)でも皆さんそううまくいくと思いますか。

春島  でも昭島さんは夢を語るって言われたわよね。そんな夢なら一度は見てもよろしいんじゃないかしら皆さん。(みなそれぞれ隣を見やり賛否を言い兼ねている)

沢田  そこです。昭島は皆さんの賛同協力を第一に掲げ懇願しているのです。もう一度よくお考え下さい、日本の今の現状を。子供たちにこんな有り様の日本をこのまま託せますか。無責任もいいとこです。

秋田  それで日本から離れて私たちだけでも、生き甲斐のある国に子供たちを住まわしたいという事ですか。

昭島  いえ、夢は大きく持つのです。秋田国を基盤に日本国に揺さぶりを、国際的な視野で改革を迫るのです。成功するかしないかは未知です、ですから夢を語ろうと皆さんに申しているのです。

原田  薄ぼんやりとは分かってきたような気もしますが、反乱とか謀反とかにはならないのですか。法廷に引き出されて全員銃殺刑なんてことにはならないんですか。