うたのすけの日常

日々の単なる日記等

うたのすけの日常 山頭火の世界 六十四

2009-09-29 05:57:57 | 日記

山裾あたたかなここにうづめます<o:p></o:p>

ご主人でしょうか、あるいは息子ですか、無言の凱旋をした戦没者の遺族たちが、これもまた黙々と土を掘ります。古里の山を朝な夕なに眺められる格好な場所です。おまけにここは日当たりも良さそうです。遺骨を埋め土をかければ、長い冬がつづくのです。<o:p></o:p>

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凩の日の丸二つ二人も出してゐる<o:p></o:p>

木枯らしが村々を吹き抜けていきます。農家の身も凍る庭先に、日章旗が二つも寒空にはためいていました。そうです、この家からは兄弟で、二人して召集令状を受け、大陸を転戦しているのです。<o:p></o:p>

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冬ぼたんほつと勇ましいたよりがあつた<o:p></o:p>

庭先に冬牡丹が凛々しく咲き誇っています。一軒の農家の囲炉裏端は、いつにない明るさに満ちていました。両親、妹たちが、或は夫を召集された若妻ですか、一枚のはがきを手廻しで何度も読み耽ります。僕は元気でお国のために戦っています。お決まりの文面ですが、元気でいることは確かです。家族にほっとした安堵の色が浮びます。<o:p></o:p>

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雪へ雪ふる戦ひはこれからだといふ<o:p></o:p>

北国に熄むことなく雪はふりつづきます。冬はまだ先が長いのです、春はまだまだです。棚のラジオが戦勝ニュースを声高に報じています。新聞の紙面には連戦連勝の活字が躍ります。そして両者とも、戦いはこれからだと、国民に滅私奉公、一億一心、撃ちてし止まん、と戦意高揚を促しています。<o:p></o:p>