たちどまると水音のする方へ道<o:p></o:p>
道が二手に別れています。さてと立ち止まれば、このあたりの呼吸は旅人の面目躍如たるものがあります。二手の道に目をやるまでもなく、行く道は決まりです。美味しい水の期待に胸は膨らみ足が軽くなりました。<o:p></o:p>
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ほんのり咲いて水にうつり<o:p></o:p>
森閑とした空気の中に岩水が流れ落ち、それに手を差し出し口へ運びます。水好きの旅人にとっては至福のときです。おまけに背後に咲く花々が水面に影を作ります。<o:p></o:p>
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ふるさとの土の底から鉦たたき<o:p></o:p>
故里での行乞にはどこか緊張を覚える山頭火です。叩く鉦もいつもと違う音色です。足元の地面の下から聞こえてくるような、陰にこもる音色です。<o:p></o:p>
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風は何よりさみしいとおもふすすきの穂<o:p></o:p>
秋が深まり、風も木枯らしに近く肌身にこたえます。秋を月とともに演出したすすきも既に峠を越して、吹く風にそよぐこともなく穂を重たげに傾けてしまいます。<o:p></o:p>
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産んだまま死んでゐるかよかまきりよ<o:p></o:p>
冷めた眼で自然界を見る山頭火です。かまきりの体はすでに枯葉のように変色しています。それでも草の葉にしがみついていますが、すでに生きてる兆しは見られません。それでも子孫を植えつけられていました。<o:p></o:p>
山頭火の昆虫記です。<o:p></o:p>