自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

銃で民主主義を守るアメリカと民主主義崩壊を放置する日本

2015-05-01 15:13:26 | 自然と人為
 深尾葉子著『魂の脱植民地とは何か』の『まえがき』には、ゲリー・ラーソンの風刺画(1コマ漫画「レミングというネズミ目の小動物が集団自殺するという寓話」)を引用し、「先に死が待っていても、無表情なまま次々と集団に付き従って、死への行進をする。・・・たった1匹だけ気付いていても、誰かにそれを伝えるわけでもなく、また流れに逆らうわけでもなく、自分だけ助かるように浮き輪をつけながら、見かけ上は集団のながれに歩調を合わせてついていっている。それはあたかも危機を感じつつ、何の警鐘もならさず、みずからの保身のみを図る姿を連想させる。本書の問いは、まさにこの絵に凝縮されている。自分自身の置かれている状況、自分自身のありかた、についてフィードバックがなく、何ものかにとりつかれたように目の前の変化にのみついてゆく。これを本書では『呪縛』と呼び、その状態にある人間を『魂が植民地化された状態』と呼ぶ」としている。

 ゲリー・ラーソン風刺画
  レミングの集団自殺 (レミングの集団自殺映像

 アメリカは民主主義の国とされているが、人種差別、銃社会、そして「世界の警察」と民主主義はどうつながるのであろうか。「現代の民主主義は、すべての人の尊厳と平等、人権尊重のうえに成り立つ」と信じてきたが、『アメリカの民主主義』には自由を求めるあまりに他者を尊重しない『自我の呪縛』があるのであろうか。

 子供の頃は豊かな国、日本より50年~20年進んだ国、自由の国、努力すれば報われる国としてアメリカに憧れていた。しかし、ヴェトナム、アフガニスタン、イラク戦争、そしてパキスタンに潜入してのビンラディンの暗殺(「過去に死亡」説もある)に疑問を感じ、日本の占領を70年も続けたあげくに沖縄の願いを日本政府とともに無視し、かつて武力放棄させた日本の自衛隊をアメリカに従軍させて世界で戦わせようとし、TPPで経済だけでなく制度までアメリカ化させようとしている『アメリカの民主主義』に嫌悪すら感じるようになってきた。これでは『魂の植民地化』ではなく、あからさまな『日本国の植民地化』ではないか。安倍首相が日本の国民にとって重要なアメリカとの関係について、国会で誠実に論議をしないで、アメリカの議会で恥ずかしい英語の植民地化宣言全文英文邦訳)をしたことは日本の恥辱であるが、アメリカの傀儡政権と化した政府(官僚)は国民を支配して満足し、国民は戦後の憲法で与えられた国民主権と民主主義の崩壊を気にしないで、「レミングの集団自殺」に向かうのであろうか。

 アメリカと今いかにつきあうか ――日・米・韓で、今、考えたこと――  
皆さんはこの論説をご存知だと思うが、小田実の遺言の一つとして多くの方々と共有したい。 作家 小田実のホームページ
 『アメリカの民主主義』については、トクヴィルの『アメリカにおけるデモクラシー』第1巻(1835)以来、多くの論考がある。民主的国家:トクヴィルの功罪もその一つでネットで読むことができる。

 最近のアメリカ史については、『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史』が豊富な史実をまとめて、アメリカを愛してきたアメリカ市民の良心を伝えてくれる。
『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史』を観て(1)
『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史』を観て(2)
『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史』を観て(3)
     ジャーナリスト 土井敏邦 土井敏邦 Webコラム 目次

 アメリカの法律家の視点から、アメリカの民主主義の危機を訴える学者もいる。
ローレンス・レッシグ: 皆で共和国本来の国民の力を取り戻そう
ローレンス・レッシグ:法が創造性を圧迫する
松岡正剛の千夜千冊 719夜『コモンズ』ローレンス・レッシグ

 日本にも植民地時代の朝鮮半島で生まれ、戦争の悲劇を経験したことから、抑圧的な権力を批判し、悪化の一途をたどる世の中に対して抗議し続けた学者、西川長夫がいたことを誇りにしたい。
西川長夫『増補版 国境の越え方 国民国家論序説』
西川長夫,『<新>植民地主義論』
『 国民国家論の射程 [増補版]』 -あるいは<国民>という怪物について-
ポナパルテイズム論から国民国家論へ -

戦後70年を迎える年に日本の平和主義を大きく変換させ、国民を支配しようとする権力という妖怪が蠕いている。明治憲法(帝国憲法)発布の1889年2月11日からわずか66年(現在は戦後70年)でお国のためと言いながら、他国を侵略し、沖縄を犠牲にし、おびただしい人命と都市を失い破壊しつくして敗戦に至った原因はどこにあったのか。その反省は何故放置され続けて今日を迎えるのか。世間と社会の視点から考え続けているが、「明治維新史研究の現況と国民国家形成論について」や、揺らぐアメリカ民主主義を始め、「空気を読む」日本人の研究やアメリカで生まれた「反知性主義」等勉強材料は山ほどある。

初稿 2015.5.1




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