自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

エコノミーとエコロジーについて考える(1.古代ギリシャの共同体と学問)

2017-03-31 17:40:55 | 自然と人為

 1.言葉の意味と語源

 私はこれまで経済学もギリシャ哲学も関心を抱いたことはなかったが、人間を知るにはこれらを勉強することが大切ではないかと、古希を過ぎて思い始めた。正確に言えば「瑞穂の国の歴史に、牛の放牧による里山管理の文化創造を加える」ことについて提案してからである。
 農業を大切にした戦後、高度成長期までは農家は牛を家族の一員として大切に飼育したが、今では利益を求めて牛を飼う。戦後50年にして「経済」で求めていたもの、大切にするものが変わったように思う。

 そもそも「経済」とは一体何者だ。ここでは参考文献として、Webで皆さんに確認してもらえるものを提示しながら考えた。言葉の語源をWebで探し、自分なりに得られた関連する様々な情報を編集し、理解して発表することは、緊張感をもって自らの生きる姿を見つめ直すことでもある。これまでは仕事を通じて考えてきたことを発表してきたが、そのことの意味の根拠をこれからは探してみたい。

2.エコノミーとエコロジーの共通語源「エコ」

 エコノミー(経済)とエコロジー(生態)は同じ「エコ」を頭に持つが、このエコは「オイコス(すみか,家)」の意味を持つそうだ。それなのになぜ、現代においては対立的な立場で使われることが多いのだろう。
 また、エコノミーを意識して2000年以上も遅れて造語されたエコロジーが、今ではエコと略して呼ばれるのも、言葉は時代とともに意味を変える興味深い現象とも言えよう。
 参考: エコの語源
      エコノミーとエコロジーの語源


3.古代ギリシャ共同体(オイコス)の維持・発展と学問の誕生

 古代ギリシャのエーゲ文明地図)はBC2000年頃に始まる。日本の三内丸山遺跡は、今から約5500年前~4000年前の縄文時代の集落跡とされているのでほぼ同時期であり、中国最古の夏王朝殷王朝の時期とも重なる。
 オイコスが共同体として有名なアテネスパルタポリスと呼ばれるようになったのは、古代ギリシャ暗黒時代後のアルカイック期(BC800-BC480)であり、タレス(BC625年頃-547年頃)ソクラテス(BC470/469―399)プラトン(BC427-BC347)アリストテレス(BC384-BC322)等の学問は共同体の維持・発展の過程で誕生した
 さらに時代は古代ギリシャ北方の古代マケドニアから勢力を拡大したアレクサンドロス大王(前356~前323年)(2)ヘレニズム時代(B.C.334~B.C.30)へと続くが、アリストテレスはアレクサンドロスを若い頃教えたことがあり、アレクサンドロス大王の死の翌年に没した。

4.オイコス + ノモス = オイコノミア

 「オイコス」について調べて、共同体は「ポリス」に至ることを知った。興味深くて深追いするとテーマから逸脱してしまいそうなので、「オイコノミア」の「ノモス」の意味について調べることとする。
 ノモス【nomos】については次の説明がある。「(法律〉〈礼法〉〈習慣〉〈伝統文化〉を意味するギリシア語で、元来ネメインnemein(〈分配する〉の意)という動詞から派生し、〈定められた分け前〉という原義をもつ。そこからモイラ(運命)と同じように、神々または父祖伝来の伝統によって必然的に定められた行動規範という意味を担うようになった。さらにそこから転じて、前5世紀後半には意味のない因襲、自由を束縛する強制力と受け取られるようになり、ソフィストたちはノモスからの解放を主張した。」 さらに次の説明もある。「古代ギリシャで、法律・習慣・制度など人為的なものをいう語。ソフィストが、ピュシス(自然)に対するものとして取り上げ、これによって人間の認識や生活の相対性を指摘した。」また、「ノモスは規範と訳されますが、これは、カオスから脱するルールを創る事で、コスモスから落ちこぼれたものを管理するという意味があります。つまり、これが、人間存在なのです。」という興味深い説明もある。

5.オイコノミアとは

 P. L. バーガー (「カオス/ノモス/コスモス」)や ハイエクの「ノモス」と「テシス」のように、言葉は後の時代に説明されることが多いので、共同体が「ポリス」と言われていた時代に「オイコノミア」という言葉はどう使われていたのか調べてみた。
 ソクラテスの弟子であるクセノフォン(BC.430-354ごろ)の著書『オイコノミコス』(オイコノミアの形容詞)の越前谷 悦子訳「オイコノミコス―家政について」が出版されているが、その解説がWebにあり、アリストテレスの『政治学』第1巻も訳していただいている。
 
 経済学者ではない私が経済の語源を説明することは難しいので、これらを参考に皆さんに「オイコノミア」とは何かを考えていただきたいが、私なりにオイコノミア=家政を「善を求める共同体の(経済的)規範」と一応は理解している。荒谷氏の経済をあらためて考える~過去・現在・未来~や柳沢ゼミナールの古代ギリシャの経済思想は分かり易くまとめられている。

 今回はエコノミーの語源を古代ギリシャまでWeb資料で調べるのが精一杯であったが、京都弁証法認識論研究会のブログ「古代ギリシアにおける学問の誕生を問う」を紹介して次回に続きたい。
(1)古代ギリシアは学問の発祥の地である
(2)なぜ古代ギリシアにおいて学問が誕生したのか
(3)エーゲ文明はオリエント文化を継承しつつも独自の文化として形成された
(4)ミケーネ文明はエーゲ文明を継承しつつも独自の文化として発展した
(5)暗黒時代を通してポリスの土台が形成された
(6)植民活動によりギリシア勢力圏が拡大した
(7)労働から解放される階級が誕生した
(8)普遍性を求める認識が形成された
(9)一般民衆が社会的な地位を向上させた
(10)討論による対象の究明が行われるようになった
(11)究明の対象が自然から社会へと移り変わっていった
(12)学問はあくまでも共同体の維持・発展の過程で誕生した
(13)現代日本こそ本物の学問が求められている


初稿 2017.3.31





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