「日本国憲法」の三原則を「国民主権」、「基本的人権の尊重」、「平和主義」と説明する教科書等,(2)が多い。しかし「平和主義」は主義、主張に使われるように、「考え方を表現」する言葉であり、国民・国家の「権利と義務」を表明する法律用語としてはきわめて曖昧であり、国民・国家の行為としての「戦争放棄」と明確に説明すべきだと思う。
日本国憲法の3つの柱
[1] 国民主権 (主権在民)
[2] 基本的人権の尊重
[3] 戦争放棄 (平和主義)
憲法制定当時の新聞の一面には、
象徴天皇、主権在民、戦争放棄、
いわゆる三原則が踊っていたという。
戦後の民主主義教育を受けてきたものとして、なぜ憲法を変えたい人がいるのか、しかも人類の理想の行為を目指す憲法9条をなぜ変えたいのか、さっぱり分からない。
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1947年 中学校教科書
私は憲法学者ではない。憲法について勉強しておく責任と義務を自覚している国民の一人である。国民には他者に厳しく自分には優しい人、他者に優しく自分に厳しい人、他者に優しく自分にも優しい人、いろいろいるが、私は他者にも自分にも優しい(甘い)と思っている。集団の一人として生きている我々は、「競争」という教育を受けるが、「競争」とは他人に勝つことではなく、ある目的に対して自分に勝つことだと思っている。しかし、集団で生きていくとき、人は他人に勝ち、他人を従わせることを競争に勝つと思いがちだ。それは人が人間ではなく動物であることの証であり、私は人間でありたいと願っている。
なぜ憲法を「戦争放棄」ではなく、曖昧な「平和主義」で説明するのか、なぜ自民党は「憲法の自主的改正」を結党以来の「党の使命」とするのか、前回は憲法について考える資料のみを紹介したが、ここではNHKの放送した憲法に関する番組を集めて、もう少し考えてみたい。
今年(2018年)は憲法施行から71年だが、安倍晋三首相は2020年の東京オリンピックまでに憲法9条を改正したいと表明している。これまでも、1949年から1964年(東京オリンピック開催)の15年間、改憲論議があったことを、NHK「憲法と日本人~1949-64 知られざる攻防(動画)は教えてくれる。
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憲法9条
(1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又(また)は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
(2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
なぜ1949年から「憲法の自主的改正」の動きが始まったのか? まず、1948年、A級戦犯の東條英機ら7人が処刑され、翌日には岸信介らA級戦犯容疑者19人をGHQは釈放した。
1948/12/23 東條英機・広田弘毅ら7人、絞首刑執行
1948/12/24 GHQ、岸信介らA級戦犯容疑者19人を釈放と発表
そして1949年10月1日、北京で「中華人民政府協商会議」が招集され、ここで中華人民共和国が成立する。
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さらに1950年から朝鮮戦争,(2)が始まる。これらが「戦争放棄」の日本の憲法を、アメリカに従い戦争ができる憲法に変えようとするアメリカの動きにつながる。
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岸信介とCIAの密接な関係,(2)が噂されているが、戦後の日本はアメリカの産軍複合体,(2)に支配され続けてきているようだ。すなわち、一方では戦後の憲法はアメリカに押し付けられたと言いながら、一方ではアメリカの圧力で戦争が出来る国になるように「憲法の自主的改正」と称して憲法9条を変えようとしている。
1950年6月、朝鮮戦争が勃発し、アメリカの要望により警察予備隊が発足し、1952年に保安隊(現在の陸上自衛隊)に、そして1954年に国防を任務とする自衛隊に改組された。
国防のために自衛隊があるのは当然だと考える人もいるだろうが、戦争を予期した備えではなく、戦争を放棄した未来に貢献すべきだ。
したがって、世界で戦争をしているアメリカに従属して海外派兵への道を開く自衛隊ではなく、世界の災害の救助に貢献する災害緊急救助隊に、さらに改組するか職務を変更べきだと私は確信している。
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広瀬久忠 公職追放(1946年8月-1951年8月)改憲派
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憲法はアメリカに押し付けられたものではないと報告し解散
2016年2月25日放送の報道ステーション『岸時代の調査会』の内容を文章にした「憲法9条は日本人の発案だった!」とその一部の動画「岸時代の憲法調査会の肉声テープ」も貴重な資料である。NHK「憲法と日本人~1949-64と合わせてご覧いただきたい。
また、1993年2月5日に放送されたNHK「日本国憲法を生んだ密室の九日間」は、ポツダム宣言を執行するために日本で占領政策を実施したGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が毎日新聞のスクープ記事(1946年2月1日)、日本政府の「憲法問題調査委員会試案」に関する「ホイットニー・メモ(1946年2月2日)によりGHQ憲法草案を作成した経緯を知らせてくれる。
なお、ポツダム宣言では、「日本に平和と安全と正義の新秩序が確立され、戦争能力が失われたことが確認される時までは、我々の指示する基本的目的の達成を確保するため、日本国領域内の諸地点は占領されるべきものとする」とし、第10条「・・・日本政府は日本国国民における民主主義的傾向の復活を強化し、これを妨げるあらゆる障碍は排除するべきであり、言論、宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重は確立されるべきである」と明文化している。また、第11条「日本は経済復興し、課された賠償の義務を履行するための生産手段、戦争と再軍備に関わらないものが保有出来る」ともある。
また、「日本国憲法の誕生」では、日本国憲法の制定過程に関する概説と貴重な資料を公開していて、「GHQ草案と日本政府の対応」,「極東委員会の設置とGHQとの会談」,「極東委員会の関与」等、参考になる資料が多い。
昨年(2017年4月30日)に放送されたNHKスペシャル「憲法70年 平和国家はこうして生まれた」(動画),論評(NHKが“日本国憲法はGHQの押し付け”を真っ向否定する検証番組)や2007年2月10日放送のNHK「日本国憲法の草案はメイドインジャパン」(動画),(紹介)、そして日本国憲法誕生 全編(2007年4月29日)(動画)もあるので、参考にしていただきたい。
戦争で国家を動かすものは利益を上げるかも知れないが、戦争するどちらの国民も殺し合う悲惨な現場がある。戦争はいかなる国民も不幸にする。憲法の問題は戦後の問題というよりも、戦前の問題、さらには明治から150年の日本の歴史まで考えてみる必要がありそうだ。そのことは今後また、考えて見たい。
初稿 2018.6.12
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