自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

「個ー集団ー国」と自然の関係~内山節とスノーデン

2017-01-28 23:27:58 | 自然と人為

 我々は自然の中で集団で生きてきたし、今でも自然と国の中で生きている。人が生きることの意味を自然との関係で考え続けているのが内山節氏で、国の中における個人の尊重を何よりも大切にしているのがスノーデン氏だと思う。私は日本人とは何かを問い続けてきたが、その問いに自然との関係で答えてくれるのが内山節氏で、これまでそこまでは考えなかった個人の尊厳について教えてくれたのがスノーデン氏だと言っても良い。

 人は様々な価値観を持って生きている。それが個人を大切にする時代になると、人と人の関係がバラバラな社会になるのではと心配な面もある。一方、政府の方針で周囲を敵視した愛国心に国民が煽られるのも心配だ。「この国のみっともない政府は自国の弱者には目も向けない」ことを、私も声を大にして叫びたい。
 個人を尊重することは他者を尊重することでもある。我々の未来を考えることは、自然との関係と他者との関係を想像することでもある。
 ここに内山節氏の「自然と人間の共同体、伝統的な生き方」等を考える「未来についての想像力~農ある世界への構想」と、自らの自由と命を危険にさらしてまで内部告発をしたスノーデン氏に関するWeb資料を紹介したい。

内山節氏に関するWeb資料: 
 「地域とは何か」内山節(哲学者、立教大学大学院教授):  (動画)
 内山 節「経済のゆがみ、社会のゆがみを正していく時代」 (動画)   講演レジメ
 「WISE FORUM 2016」
 シンポジウム『日本の希望』:基調講演『日本人の希望』内山節 (動画)

 戦後70年、生活スタイルはサラリーマンが普通になり、農業や自営業で生活する地域社会は急速に変貌していった。個人より集団を大切にする我々は、地域社会(世間)から会社(組織、団体)に従属するようになった。他者を尊重する個人の人格が育たないままに、競争の中で育ち組織の人間として利己的に自分の立場を考えるようになった。地域共同体という関係性を失った個人は、組織の中のポジション取りに生きがいを見出すようになった。かつては社会を監視することに誇りを持ったジャーナリストまでも、組織の中でエリートを意識する職業になった。

 我々人類はアマゾン先住民の「すべてが一つの世界」のように自然との共存の生活から始まり、18世紀の生活を維持し電気も自動車も生活から排除したアーミッシュの人々が一部残ってはいるが、文明の利器に憧れる一方で協働で生活システムをつくることを忘れ、社会から分離した経済の勝者によるシステムに支配されることを当然と考え、そのシステムが変わったら困るという意味で保守的になった。バラバラになった生きる世界から、我々は一つになって生きる社会をつくれるか? 自分の生活をどうデザインするか。バラバラになった要素をデザインしていくという意味で、農民はデザイナー。自ら何かを作る、モノづくりからシステムつくりに参加することが、生きるという意味で大切なこと。地域の生活を自然との関係で守るのは、行政だけでなく住民参加のNPOの仕事。幸せとは自然や他者や死者との了解可能、納得可能な関係のことで、お祭りや年中行事が維持されていることは、死者を含めた地域の関係性が健全な証拠。お金は劣化しないで増えるので、現代人にとっては魅力ある交換手段。お金に支配される経済から生命循環の社会に戻すことができるか。利益の追求が目的ではなく、社会的役割を仕事とするソーシャルビジネスが一部では始められている。しかし、社会的に人々がバラバラになることで、現代社会の目標としてきた自由、平等、博愛や議会制民主主義の建前の世界の限界も見えてきた。私たちの生きる社会をどうつくるか。自然を含めた地域関係性のある社会を作っていくデザイン力が問われている。
 参考: カール・ポランニー :経済人類学、経済が社会に埋めこまれている。経済の起源には言語にも見られるようなソーシャル・コミュニケーションの本質が関与している。
      シルビオ・ゲゼル :お金は増殖する商品 お金に特殊な権威を与えない
                  劣化するお金 --> 地域通貨
      玉野井芳郎 :経済を生命循環に戻す
      レヴィ・ストロース(2)(3) :文化人類学者 居場所の無い現代人


スノーデン氏に関するWeb資料:
 亡命中エドワード・スノーデン氏、日本の危機を生中継で指摘
 あなたも監視されている~スノーデンの暴露とは
 スノーデン独占インタビュー・小笠原みどりさん帰国講演会(1)講演 講演資料
 スノーデン独占インタビュー・小笠原みどりさん帰国講演会(2)質疑応答
 オリバー・ストーン監督が明かした“衝撃情報” 2017年1月18日23:38
 アメリカはスパイプログラムを日本のダム、駅、病院、原発、銀行などに組み込んだ!
 スノーデンの暴露 𝟐𝟎𝟏𝟒 映画 フル
 ビン・ラディンはCIAの保護下で生きている!スノーデン氏が暴露
 スノーデンの暴露本,やりたい放題の米国、スノーデンの暴露本の内容


 内山節氏の講演はバラバラになる人の生活を自然との関係で一つにしようという話だった。スノーデン氏の内部告発は、バラバラになる人の社会で情報のグローバル化が進み、人の情報を知らぬ間に一方的に集める米国NSA(国家安全保障局)の監視システムが世界に張り巡らされていることを警告した。テロ対策を口実にテロとは関係ないNSAの盗聴。スノーデンは怒っていた。日米関係は、米が日を指導する立場。日本社会は個が育っていないので、文化的にも歴史的にも監視が働きやすい素地がある。
 「プライバシーは何かを隠すためにあるのではない。プライバシーは何かを守るためにある。それは個です。個人には自分が信じることを決定して表現するまでに他人の偏見や決めつけを逃れて、自分自身のために考える時間が必要だ。そういう意味でプライバシーは個人の権利の源なのだ。プライバシーがなければ表現の自由は意味をなさない。プライバシーがなければ言いたいことを言い、あるがままの自分でいることはできない。プライバシーがなければ、自分は個として主張することはできない。プライバシーは個人の権利の源だ。(スノーデン)」
 彼の内部告発の動機は、オバマ大統領はこの諜報活動にブレーキを掛けると期待したが、全くそのような動きをしてくれなかったことによるそうだ。どの国でも、いつの時代にも支配者は支配している大衆の逆襲を恐れている。監視システムは支配者の保身のために使われる。バラバラになる人の社会では、国の支配者は国民の為に働かないで自分たちの利益と保身のために制度をつくり運用する。

 米国NSA(国家安全保障局)の監視システムとは
1. グーグル、マイクロソフト、ヤフー、フェイスブック、アップル、スカ
イプ、ユーチューブなど大手IT企業9社のサーバーから情報転送
2.テロを止めることができないのに、監視プログラムはなぜ存続するのか? 答えはテロ対策以外のことに役立つから。
 外交スパイ、経済スパイ(ターゲット・トーキョー)、世論・社会心理操作、調査報道/ジャーナリスト・内部告発の妨害、私的濫用。
 「監視は最終的に、権力に抗する声を押しつぶすために使われていく。反対の声を押しつぶすとき、僕たちは進歩をやめ、未来への扉を閉ざす(スノーデン)。」
3. 米国のユニラテラル(一方的)優位のための監視システム
 ターゲット・トーキョー(被害者としての日本政府)、欧州首脳への盗聴。「特定秘密保護法は、実は米国がデザインしたもの(スノーデン)」米国の監視システムの共犯者となっていく日本政府=日本の市民にとっては二重の災厄。

初稿 2016.1.28