口蹄疫に関する対談が酪農雑誌「デーリィマン」11月号に掲載されました。11月号(1冊、送料込み2100円)だけでも購入できます。連絡先はデーリィマン管理部です。電話(011)209-1003(直通)、メールアドレスはkanri@dairyman.co.jp です。
なお、同じ時期に「ピッグジャーナル」の9,10月号に対談が掲載されています。各号とも送料込みで2100円です。電話(03)3818-8501(直通)、メールアドレスは nagano@animalmedia.co.jp です。
後者の豚の業界紙には獣医学の大学教授、準教授も参加されていますが、ワクチン接種して殺処分することを初動の段階から主張されています。この初動の段階から殺処分を前提にしたワクチン接種に対して、知事が健康な家畜まで殺処分することに抵抗したことを批判していますが、私は知事の抵抗の方が正常な反応だと思います。なぜ、専門家はワクチン接種と殺処分を切り離して考えなかったのでしょうか。
牛と豚の考え方の違いもあるのでしょうが、このブログで主張している「殺処分を少なくするためのワクチン接種」と、もう一つの「殺処分のためのワクチン接種」の考え方の違いを、比較して理解していただくためにも、ご一読をお勧めします。
なお、ワクチン接種に関しては人のインフルエンザや鳥インフルエンザについても同じような問題があるようです。
「インフルエンザウイルスの生態(蛋白質・核酸・酵素Vol.42,145-153.1997)」で喜田宏 北大教授は次のように述べています。
「インフルエンザワクチンの効果と意義を多くの人々が疑いもなく否定し、それが半ば常識のように通用しているのは、世界中で日本だけであろう。どうしてこんな誤解が生じたのであろうか。『インフルエンザウイルスは利口だ。どんどん進化し、姿を変えて攻めてくる。だからワクチンは効かない。』新聞、テレビや本で専門家が言っているとのこと。舌足らずの説明は誤解と混乱をもたらす。専門家としての発言は責任を伴うものである。一方、このような根拠を欠く情報を鵜呑みにして、未消化のまま、あるいは誤解と誇張を加えて報道する姿勢に、ワクチンに対する不信をこれほどまでにまん延させた責任がある。
この後半部分につきましては、当ブログでも、「動衛研の国際重要伝染病研究チームと疫学研究チームをつなぐ防疫対策室を設置し、検査数の増加に対応するとともに、海外の重要伝染病対策(発生状況、検査方法、防疫対策等)に関する情報をWEBサイトで国内に紹介して、関係者が我が国の置かれている状況を日頃から理解できるようにしておく必要がある。」と具体的に提案しています。この防疫対策室こそがオーガナイザーとして機能し、的確な国際疫学情報を国内に提供していく役割を果たしてくれるでしょう。
なお、その同じ獣医学の教授が鳥インフルエンザについてはワクチン接種に反対し、次のように述べています。「なぜ、ワクチン依存が起きてしまったのか。国際獣疫事務局(OIE)が、『高病原性鳥インフルエンザは摘発、淘汰を基本とすべきだが、これに加えてワクチンも1つのコントロールの手段として使うことができる』とコードに書いてしまったのです。これが免罪符のようになり、これらの国ではワクチンで高病原性鳥インフルエンザを制圧しようとなってしまっているのです。――― 鶏に対するワクチンの乱用は、ウイルスの拡散を導くということが明らかです。」
しかし、OIEが摘発・淘汰を基本としながらも、これにワクチン接種を加えて殺処分を少なくする方向を示したのは、科学技術の向上でそれが可能になったと科学的に判断したからです。同じ獣医学の教授が、人に対してはワクチン接種を促し、家畜に対しては反対するという混乱を見ていると、どうも我が国の獣医界は家畜へのワクチン接種を理解しようとせず、むしろOIEの方針に反対しているようです。このワクチンアレルギー体質は世界の常識からかけ離れてしまっていると思いますが、どうしてこうなったのでしょうか。
健康な地卵の生産にこだわってこられた養鶏家が、これを批判する意見は傾聴に値します。
2010.11.1 開始 2010.11.7 更新1(文献のリンクを削除)