珍しいでしょ~~
じい、大抵はレンタルで済ませるので映画館に赴くことは滅多にないことなのですが、どうしても気になって行ってきました
今日は水曜日!レディースデーだったし
以下、ネタバレありで勝手語りを
見に行く予定のある方はご注意ください。
あらすじは
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主演のケイト・ウィンスレットがアカデミー賞を取ったニュースは知っていたのですが、原作は読んだことがなくて、朗読が愛のツールの恋愛物か?とか思いながら軽い気持ちで行ったのですが……いや~~重かった
深かった
こんなにも多くのものを問いかけられた映画は久しぶりでした。めちゃめちゃ良かったですわ~~ホント、行って良かった
いろんな見方ができる作品だと思いますが、じいは学生時代の専門に絡めて歴史学的なものを中心に受け止めました。15歳のマイケルが始めて女性を知ったその女性は36歳のハンナ。ひと夏の関係となり、ある日突然ハンナは姿を消すのですが、その後再会したのは法廷。マイケルは法学生で傍聴し、そこでハンナの秘密が明かされ、彼女は戦前ナチスの親衛隊でユダヤ人収容所の看守をやっていたことを知る……この裁判のシーンは正直なところ辛くていたたまれなかったですね~~ユダヤ人虐殺の罪について尋問する裁判官、ハンナ一人に罪を着せようとする他の看守仲間だった被告人たち、収容所の実態を証言するユダヤ人女性のマーサー、この裁判を素材に学生たちに問題提起をする教授、自国の過去の罪を糾弾する、あるいは嫌悪感を示すゼミの学生たち、そしてハンナの言い分。もちろん戦時中の罪について許されるものではないし、それに対して裁きを下すのは当然のことだと思います。悪いものは悪い、ハンナたち被告にどんな事情があろうとも有罪になることに弁護のしようはないし、彼らが懲役刑を言い渡された時に「でも、殺された人たちは戻ってこない。この人たちは刑務所に入っても生きているんだ」とやりきれない気持ちになったんです。
でもね~~すっぱり良い/悪いでは拭いきれない部分があったんですよね~~罪を一手に被せられてハンナが反論しなかった理由、、、読み書きができないということだったんです。見た目判断ですが、他の元看守の被告たちはソコソコの暮らしをしていておそらく教育も受けていて?立ち回る術を知っているようだし、ユダヤ人虐殺を世間に知らしめたのはマーサーが執筆した本。。。公判中に収容所で殺されるべく選別していた行為を書類にする話が出てきた時、これをハンナの所業ということにされて筆跡鑑定をすることになって彼女はその鑑定を拒み罪を認めた……文盲ということを明らかにされたくなかった彼女のプライドとマイケルは言っているんだけど、そこに恵まれた育ちをしていなかったのであろう(想像ですが…)ハンナの人生が悲しかったし、そのハンナがかつてマイケルに本を朗読してくれることを頼んだ彼女なりの「思い」が詰まっているようで切なくてねぇ。。。
で、結局ハンナは無期懲役の刑を言い渡され20年以上服役した後、出所前に自殺してしまうんですわ。服役中にマイケルはハンナに自分が朗読したテープを送り続けるんですけど、やがてそれは彼女が独学で文字の勉強をすることに繋がっていく……最後、マイケルがハンナの遺書を読むシーンがあるのですが、じいはここで大号泣
1つ1つの文字を書くまでにあった壮絶な学習過程、それも自分がかつて関係を持った男の朗読によって学んだこと、その男への思い……言葉ではとてもじゃないけど軽々しく表せないようないろいろなものが詰まっていると感じたんですわ。昔、高校時代に「illiterate」という単語を覚えた時は単に暗記しただけだったんですよね~~でも、この言葉にここまで重いものが詰まっていることが分かったような。。。
ただし
この涙は複雑でして……その涙を流す自分の欺瞞
泣くことで突きつけられた問題に目をつぶつことになるのではないかと思ったんです。ハンナは「自分が残したお金は生き残ったユダヤ人母娘(娘=マーサ)に渡してほしい」と遺言に書いているけど、結局マーサーは外の箱は受け取ったけど中身のお金は受け取らなかった。それほどに背負った、、、いや背負っている歴史は重いんです。泣いて済む話じゃない
泣いて答えを出してスッキリする問題ではないわけで。。。ホント、重い作品。
マイケルの行動も考えさせられることが多々ありました。単に惚れたの何のっていう話じゃない……もちろんそういう感情はあったと思うけど。でも、ハンナの秘密が明らかになった時に負の気持ちが湧き上がったんじゃないかな?と感じたし、朗読テープを送り続けたことに「ただならぬ思い」が存在したのは本当だと思うし。。。でも、自分だけが知っている彼女の秘密=文盲であることを法廷で証言しなかった&何らかの行動を起こさなかったこと、面会に行ったのに会わずに帰ったこと、出所直前に何十年かぶりに会った時にハンナが差し出した手を一度は握りながらもすぐに引っ込めたこと……それは自分に繋がる歴史を真摯に受け止めようとしながらも、いざ向こうから近寄ってくると拒んでしまう正直さであると同時に罪でもある、まさに今生きている自分たちに繋がる姿なのではないかな~と。
そんなわけで、、、邦題は「愛を読むひと」となっているけど、じいは男と女の話としては捉えられませんでしたね~~もちろん
マイケルとハンナ、本当の恋愛感情なのか?と言われると首をかしげるところがあるんですが、まったくそういう感情がなかったとも言えないし……でも、朗読=愛と単純に結びつけることはできないと思うんですよね~~そこに込められたいろんな視点。歴史であったり、純粋に人間の営みであったり
マイケルがハンナについて語ろうとした時に、二人の間に男女関係があったことから始めた時に、マーサーは話を遮った。よく歴史観の問題だったり国際関係云々の話で、国レベルの大きな歴史があって、それとは別に個人の人生があって一人の人間としては…と語られることがありますけど、マイケルが知るハンナの人間性も本当、でもそれが説得力がないこと、その人間性でマーサーが知る罪の弁護をしてはいけないことも本当。適切かどうかは??ですが、軍人だった家族がいたら、空襲を受けたり被爆者等々の家族がいたら、あなたはどんな風に考えますか?ということに共通しているのかな~~と。答えがないのよね~~作品が与えた問いかけであり余白部分。
いや~~この手の話をし始めるとエンドレスに綴ってしまうのでこのくらいに。ハンナを演じたケイト・ウィンスレット
素晴らしかったですね~~かなり年齢幅のある役ですが見事に演じてました。じい、やっぱり思い出すのは「タイタニック」ですが、その時も“レオ様”とのシーンよりも年老いてからのシーンに引き込まれましたし。。。
この作品を見ながら……さて、日本ではここまでの作品を作り、受け止めるだけの素地があるだろうかと
特定の立場から見た作品は結構あるんですけどね。。。でもね~~これはドイツの話だから良くも悪くも他人事というか、冷静に受け止められましたが、日本に置き換えたらどうだろうか???日本も同じ問題を抱えています。じいはそれを本当の意味で受け止める自信がありません。この映画を見て、かつて自分が研究したことを本気で理解していたのか、、、考えれば考えるほど苦しくなります。でも、大事なことです……本当に