

種を蒔いた覚えも、
ましてや苗を植えなどは決してしていないカヤツリグサなのだが、
一本だけ、すっくと伸びている。
蚊帳を吊ってみることにした。

茎が三角形なので、両方から引っ張ると蚊帳の天井の形をつくる。
一本しかないので失敗は許されない。
恐る恐る引っ張ってどうやら形ができた。

野に伏せば蚊帳吊り草も頼むべし 一茶
ネット上で知ったこの句からも、少なくとも江戸時代から、蚊帳を吊って遊んでいたことがわかる。
手持ちの「現代俳句歳時記」には、次の句が載っていた。
淋しさの蚊帳吊草を割きにけり 富安風生
手折らんとすれば萱吊りぬけて来し 杉田久女