人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

沖澤のどか「『フィガロの結婚』におけるテンポ設定」について語る ~ 日本モーツアルト協会主催講演会より / 小澤征爾の思い出 ~ ジャズからクラシックへの回帰を促した記念すべきコンサート

2024年02月11日 06時48分21秒 | 日記

11日(日)。すでに新聞やテレビでの報道の通り、戦後日本のクラシック音楽界を牽引した指揮者の小澤征爾氏が6日、心不全で亡くなりました 享年88歳でした。1959年に若手の登竜門と言われる仏ブザンソン国際指揮者コンクールで日本人初の優勝を果たし、その後、松尾葉子(82年)、佐渡裕(89年)、沼尻竜典(90年)、曽我大介(93年)、阪哲郎(95年)、下野竜也(01年)、山田和樹(09年)、垣内悠希(11年)、沖澤のどか(19年)と優勝者が続いています このこと一つ取ってみても、いかに小澤氏が世界に向けて日本のクラシック界の新しい道を切り開いてきたかが分かります

小澤征爾氏で思い出すことはいくつかありますが、忘れられないのは1981年4月6日に東京文化会館で開かれた「新日本フィル特別演奏会」です 演奏はピアノ独奏=マルタ・アルゲリッチ、小澤征爾指揮新日本フィルで、プログラムは①ショパン「ピアノ協奏曲 第2番」、②ラヴェル「クープランの墓」、③同「ピアノ協奏曲 ト長調」でした

当日のチケット(下の写真)をあらためて見ると、座席はS席の1階6列6番で、10,000円となっています 当時としてはかなり張り込んで席を取っています

81年1月に入った頃だったと思います 当時はまだCDが登場しておらず、クラシックのLPレコードを500枚くらい持っていましたが、不遜にも「もうクラシックは十分聴いた」と思い、たまたまどこかで阿川泰子のジャズ・ボーカルを聴いたのをきっかけにジャズにのめり込みました それ以来、ジャズのLPレコード ~ モダン・ジャズ・カルテット、オスカー・ピーターソン、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、ソニー・クラーク、キャノンボール・アダレイ etc・・・を60枚くらい一気に買い集めて片っ端から聴く一方、ジャズに関する書籍を5~6冊買って読み倒しました そんな日々を過ごしている中、前年にチケットを購入しておいた4月6日の「新日本フィル特別演奏会」を迎えました

ショパンの「ピアノ協奏曲第2番」ももちろん素晴らしかったのですが、最後に演奏されたラヴェル「ピアノ協奏曲ト長調」が神がかり的な演奏で、とくに第3楽章がアルゲリッチと小澤 ✕ 新日本フィルによる超高速演奏バトル のような白熱の演奏で、最後の音が鳴り終わった瞬間、会場の空気がふわっと浮き上がり、温度が2度くらい上昇したような熱気を感じました  それまで聴いたことのない大きな拍手とブラボーが飛び交いました    何度もカーテンコールが繰り返され、小澤とアルゲリッチは阿吽の呼吸でアンコールにラヴェルの第3楽章を演奏しました    これもまた凄い演奏で、聴衆は興奮の坩堝に引き込まれました    聴衆の熱い反応にアルゲリッチは「もう一回やりましょう」と小澤に呼び掛けたように見えましたが、小澤はユニオンとの関係からか、さすがにこれには応えず、アルゲリッチと共に舞台袖に引き上げていきました

この時の演奏がジャズ中心の音楽観を覆しました この日の演奏を聴かなければ、クラシックLPレコード約2000枚(現在1500枚)、CD約4000枚まで達しなかっただろうし、今頃このtoraブログはジャズ音楽を中心に書いていたと思います その意味では、この日の公演はクラシックからジャズへ一時的に浮気した私の音楽生活を、クラシックへ引き戻した記念すべきコンサートだったと言えます

あらためて、小澤征爾さんのご冥福をお祈りいたします

 

     

 (チケットに演奏曲名が表記されていないので、余白に へたくそな字で書きこんであります)

 

ということで、わが家に来てから今日で3315日目を迎え、ジャーナリストの伊藤詩織さんが、SNSでの自身への中傷に「いいね」を繰り返したとして、自民党の杉田水脈衆院議員を訴えた裁判で、2月8日、杉田水脈議員の敗訴が確定したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     人権意識が全くない国会議員は辞職すべきだ! パー券問題といい自民党は弛んでる

 

         

 

8日(木)午後2時から、豊島区立舞台芸術交流センター会議室で日本モーツアルト協会主催「沖澤のどか講演会 ~ 『フィガロの結婚』におけるテンポ設定」を聴講しました    定員70名の先着順ですが、満席でした。普段は同協会の会員を対象に開いているようですが、今回は一般にも公開されたので申し込みをしておきました 一般用の受付名簿をチラ見したら20人以上の名前が掲載されていたので、少なくとも参加者の3分の1程度は一般参加者と思われます

 

     

 

沖澤のどかは1987年青森県三沢市出身。東京藝大大学院、ハンス・アイスラー音楽大学でそれぞれ修士号を取得 2018年東京国際音楽コンクール(指揮)優勝。2019年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝及びオーケストラ賞と聴衆賞を受賞 2020ー2022年ベルリン・フィル・カラヤン・アカデミー奨学生及びK.ペトレンコ氏のアシスタントを務める ミュンヘン響2022-23年シーズンのアーティスト・イン・レジデンス。2022年サイトウ・キネン・オーケストラへデビュー。2023年から京都市交響楽団常任指揮者

本講演の趣旨は「モーツアルトの歌劇『フィガロの結婚』を、指揮者にとって最も重要と言えるテンポ設定を軸に、時代に沿った演奏形式、登場人物のキャラクター設定、レチタティーヴォから音楽への繋がりなど、様々な要素を考慮しながらどのように楽譜を読み込み、適切なテンポを導き出していくのかを、教えを受けたムーティ氏やペトレンコ氏とのエピソードを交えながら解説していく」というものです

講演は沖澤さん作成によるレジュメ(A4・3ページ)と、アリア・重唱などの楽譜(抜粋)の縮小コピー(A4・18ページ)をもとに、2022年8月に松本で開催された「セイジ・オザワ 松本フェスティバル2022」で上演された沖澤さん指揮による「フィガロの結婚」のライブ録画映像を交えながら解説していきました

最初に「テンポを決める要素」として、①作曲者のテンポ表記、②主要キャラクターの性格、③レチタティーヴォからの繋がりを含めた場面の状況、④オーケストラの流れ、⑤歌手の意向ーを挙げました ①で沖澤さんは「指揮者の役割は楽譜を研究することとテンポを決めること」と言い切りました テンポ設定がいかに重要かということが分かります

「オペラ公演におけるリハーサルの流れ」については次のような段階を踏むことを解説しました

①出演者を決める、②各自譜読み、③コレペティコーチング、④指揮者音楽稽古、⑤立ち稽古、⑥オーケストラリハーサル、⑦オーケストラ+歌手(+合唱)リハーサル、⑧舞台ピアノリハーサル、⑨舞台オーケストラリハーサル、⑩ハウプトプローベ、⑪ゲネラルプローベ、⑫公演

上記のうち「コレペティコーチング」とは「オペラ歌手が必要とする音楽的側面を1対1でサポートする専門職による指導で、オペラの舞台作りにおいて歌手が本番に向けて稽古をする際、ピアノ伴奏をしながらアドヴァイスしたりすること」とのことです また「ハウプトプローベ」とは「ゲネプロの前の段階の稽古で、幕ごとに通してリハーサルすることを指すことが多い」とのことです 「ゲネプロ」は「衣装を着けて行う最終稽古」のことです

沖澤さんは上記の流れを踏まえて、「オーケストラのコンサートでは2,3日のリハーサルが普通ですが、オペラの場合は半年から1年位かかります」と語っていました

「フィガロの結婚」におけるテンポ設定で一番印象に残ったのは、第1幕と第2幕の最初と最後のテンポ設定です 沖澤さんの解説によると、

「『序曲』は『プレスト(急速に)』の速度指定になっている そして第1幕、第2幕で歌われるアリアや重唱はほとんど『アレグロ(速く)』になっている そして第2幕のフィナーレにおけるフィガロ、スザンナ、伯爵、伯爵夫人、アントニオ、マルチェリーナ、バジリオ、バルトロの八重唱は『プレスティッシモ(極めて急速に)』となっている したがって、「序曲」をあまりにも速く演奏するとフィナーレの『プレスティッシモ』が生きてこなくなる

ということになります 指揮者はオペラ全体の流れを把握したうえでテンポ設定しなければならないことが良く分かります

ここまで書いたことは沖澤さんの話のほんの一部です 残りのほとんどの時間はオペラの登場人物のアリアや重唱の譜面に書かれた速度指定や拍子(4分の4とか4分の2とか)を見ながら、その場面の映像で確かめるといったやり方で解説していきました これは音大出身者でもアマオケの団員でもない、単なる音楽好きの私には厳しいものがありました 講演の冒頭、沖澤さんが「ここにお集まりの皆さんはモーツアルトの音楽には相当詳しい方々だと思いますので、それを前提に話を進めさせていただきます」と語っていたのが気になっていましたが、モーツアルト協会の会員でない一般参加者にとっては音楽大学の授業のようで、困難を極めました 協会事務局の担当者は事前に沖澤さんに「今回は会員でない一般参加者も含まれているので、そういう人にも分かるようにレクチャーしてほしい」と説明したのだろうか? 極めて疑問です 以上、犬の遠吠えでした

 

     

 

この日は夜7時から2024都民芸術フェスティバル参加公演(ピアノ三重奏曲)もあり、座っている時間がいつもより長くなりました それもあってか、昨日の朝、起きる時にぎっくり腰のような激しい痛みを感じました 2年前の1月の時の腰痛が再発したようです 腰痛で一番良くないのは座る時間が長いことです。こう毎日のようにコンサートや映画館通いを続けていたら腰痛になるに決まっています。これは身体を休ませろというサインです そのため昨日は家で大人しく過ごしました 幸い今日も明日もコンサートの予定が入っていないので、家でベッドで横になり 読書をして過ごそうと思います    来週火曜日の「読響名曲シリーズ」は当日の体調をみて判断したいと思います

 

     


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