人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「ゴジラ」でお馴染みの作曲家 伊福部昭著「音楽入門」を読む

2016年08月09日 08時02分35秒 | 日記

9日(火).昨日,左の奥歯に被せてあった金属が取れてしまったので,歯科医に行きました 昨年までは勤務先に一番近い歯科医に通っていたのですが,交通費が初診料と同じくらいかかるので,自宅から歩いて行けるS歯科医に14年ぶりに行きました 診療用の椅子に座る時に 目の前に設置されていたテレビ・モニターの角に 心ならずも 頭をぶつけ,モニターが傾いて画面が消えてしまいました 歯科衛生士の女性が「あら,消えちゃいましたね 大丈夫かなあ」と不安そうな声を出します.こちらも不安になって「大丈夫ですかね」と言っていると,先生が来て「モニターがいかれちゃったかもしれないなあ」と止めを刺します しかし,画面に「しばらくお待ちください」という表示が出て,テレビ番組が再び映り始めました これがホントのハイシャ復活線,なんちゃって 関係各方面には多大なご迷惑をおかけいたしました 本人になり代わってお詫び申し上げます (本人はお前だろ の声あり).

ということで,わが家に来てから681日目を迎え,相変わらず空中浮遊する白ウサちゃんと戯れているモコタロです

 

          

            茶色のカーペットの上にある茶色の丸い玉は何? ぼくの・・・

 

  閑話休題  

 

息子が高校生の時,どこかのガラス工房の体験製作で作ってきた風鈴を窓に飾りました 「風鈴の音がうるさい」という理由で事件が起こったニュースが過去にあったので,「寝る前には窓を閉めるか,風鈴を外す」と決めて取り付けました.風が吹くとチリンチリンと良い音がします 風鈴とは風流な鈴と書きますね

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

伊福部昭著「音楽入門」(角川ソフィア文庫)を読み終りました 伊福部昭(いふくべあきら)と言ってもピンとこない人でも映画「ゴジラ」の音楽を作った人と言えばすぐに分かるでしょう 1914年,北海道生まれ.北海道帝国大学農学部林学実科卒業といった変わった経歴の持ち主です.1935年に北海道庁の林務官として勤務する傍ら作曲した「日本狂詩曲」でチェレプニン賞第一席入賞を果たしています.アイヌなどの民族音楽を研究し独自の作風を確立,43年に「交響譚詩」を発表しました.戦後は東京音楽学校(現・東京藝大音楽学部)で教鞭をとり,芥川也寸志,黛敏郎,矢代秋雄などを育てました また,「ゴジラ」シリーズや「ビルマの竪琴」などの映画音楽を数多く作曲し,2006年に死去しました.今年は没後10年に当たります

 

          

 

この本の初版は何と65年前(1951年)で,作曲者が37歳の時に出版されました.作曲家の書いた「音楽入門」という点に照らしてこの本を読んで驚くのは,譜例を一つも用いず,文章だけで高度な音楽論を分かり易く展開しているところです この本は,第1章「音楽はどのようにして生まれたか」から第11章「音楽における民族性」まで11の章から構成されています

65年前に書かれたことから,「なんじゃこりゃ?」という単語が出てきたりします 例えば第1章「音楽はどのようにして生まれたのか」の中に,「律動」「旋律」「和声」という単語が出てきます.これは言うまでもなく,音楽の3要素「リズム」「メロディー」「ハーモニー」のことを表しています この3つの要素のうち,伊福部昭が作曲する上で最も重視していたのは「リズム」だということが分かります

第8章「音楽観の歴史」の中でバッハとヘンデルを比較していますが,興味深い分析をしています 伊福部によると,ヘンデルは「作品にむらのある作曲家で,非常に優れた作品と,あまり優れない作品とが平気で配列されています」としています それに対しバッハは「あまりに完全に出来ているのです.その作品も数多く,もし文献が不十分であったら,恐らく一人の人間によってなされた業績として考えることができ得なかったほどなのです・・・バッハの音楽は古典的,浪漫的,印象派的,形式主義的,また写実的等々すべての特徴を完全にもっているといってもいいのです」と最大限の評価を加え,後世の作曲家に大きな影響を与えて来たことを指摘しています

そうした中で,伊福部が65年前にすでに,リヒャルト・シュトラウスの誇大妄想的な音楽よりも”家具の音楽”で有名なエリック・サティのシンプルな音楽を評価していたことには大いに驚きます

この本には41年前のインタビューが新たに付け加えられていて,映画音楽の裏話が語られています  その中で「『ゴジラ』(1954年)の音楽ではご苦労なさいましたか」という質問に対して,伊福部は次のように答えています

「そうなんですね.結局 ハ虫類のでかいのが出てくるもんですから.まあ困ったんですけど,どういう風に苦しんだか今憶えていないんですよね.ただ,ゴジラの鳴き声というのは,コントラバスの絃を糸巻きから離して,皮の手袋に松ヤニをつけて引っ張る『ヴァ―』ていう音が使ってある訳です 私だけでなく擬音の人も居たんですが,何で作ってもそれらしい音が出ないですから色々怪物の声を合成しても,本来ハ虫類というのは声出さないですからね それから江戸川さんという方が今の東宝におられますけど,音を増量する不思議な機械を持っておられて,それが故障が来て,たたくとバーンバーンとなかなか良い音がするので,その音をゴジラの足音にしたんです.あれもう一度作れといわれても,出来ないですねえ

さらに,「『ゴジラ』の音楽は力強い繰り返しの音ですね」と訊くと

「そうなんですね.音っていうのは繰り返すことによってだいたい力というものが出てくるんですからね 音楽的に言えばひとつの音に沢山の楽器が集まって,セーヴというんですが,声を少なくして沢山の楽器を使い込むという,書く方の技法ですけど意識してやってます.それでないと,オルガンみたいに音を沢山分けて,いろんな楽器でいろんな音を出すと,幅は広くなるけど力は弱くなりますね

と答えています.このあたりにも伊福部の作品の秘密がありそうな気がします 私は伊福部昭の「交響譚詩」他のLPレコードを数枚持っていたのですが,探しても見つけられませんでした どこにいってしまったんだろう

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