人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「コロナ禍の『第九』 楽団の葛藤 」~ 朝日の記事から / 小林沙羅、横山幸雄、チェ・ムンス他で「第3回 哀しみのモーツアルト」を聴く~ピアノ協奏曲第24番」「ピアノ・ソナタ第14番」他

2020年12月04日 07時17分02秒 | 日記

4日(金)。昨日の朝日朝刊 社会面に「コロナ禍の『第九』  楽団の葛藤」という見出しにより、編集委員・吉田純子さん他の記事が載りました 超訳すると、

「満席がほぼ約束される『第九』公演は、日本の楽団にとって今や欠かすことのできない『年末の餅代稼ぎ』。特に今年はベートーヴェンの生誕250周年。音楽業界では春先から『第九はできるのか』と心配する声が出ていた プロの合唱団であれば、少ない人数でも質の高い響きを聴かせることが可能だ 新国立劇場合唱団は例年、この時期は2つの楽団の『第九』公演で共演しているが、今年は4楽団に増えた しかし、アマチュア団体や自治体、劇場主催の公演は多くが早々に中止を決めた。なぜ難しいのか? 合唱団は初心者を含む一般から募ることが多く、準備期間も長い 37回目を迎えるはずだった熊本の『県民第九の会演奏会』も中止に。熊本交響楽団の運営委員長、梅田雄介さんは『250人もの合唱団の練習場所が確保できなかった』と語る。アマチュア演奏家の交流サイト『オケ専♪』の協力で朝日新聞が10月に実施した『第九』に関するアンケートには、『高齢者が多いため休団状態』『演奏に前向きなメンバーと慎重なメンバーが対立した』など深刻な声も寄せられた プロでも、入国後に2週間の自主隔離が必要な外国人指揮者やソリストの招聘を断念した楽団は少なくない 11月初旬に来日したウィーン・フィルが隔離を免除されたことなどを受け、音楽関係者の業界団体が近く、規制緩和に向けての要望書を政府に提出する予定だ 日本オーケストラ連盟の桑原浩専務理事は『第九にまつわる今年の各オーケストラの試行錯誤は、日本の音楽界全体の今後の方向性を定める分水嶺となるはずだ』と語る 外国人の招聘や、地域の人々との交流の在り方から、第九が頼みの綱となる厳しい運営状況まで。コロナ禍で響く『第九』も消えた『第九』も、各楽団の個性や地域の実情をくっきりと映し出す鏡となった

ちなみに、主要在京オケの「第九」公演の合唱団をクラシック音楽情報誌「ぶらあぼ」他で調べてみると、次の通りでした

読売日響  (15日、16日、18日、19日、20日、26日):新国立劇場合唱団

新日本フィル(17日、18日、19日、20日):二期会合唱団(従来は栗友会合唱団)

東京フィル (18日、19日、20日):新国立劇場合唱団

東京交響楽団(20日、23日、28日、29日):新国立劇場合唱団(従来は東響コーラス)

日本フィル (20日、22日、23日、26日、27日):未定(同楽団のHP上に「調整中」)

NHK交響楽団(23日、25日、26日、27日):新国立劇場合唱団(従来は東京オペラシンガーズ)

東京都交響楽団(24日、25日、26日):二期会合唱団

日本フィルはこれまで、音楽大学の合唱団を使っているケースが多いようですが、コロナ禍のもと調整が難航しているのでしょうか

なお、東京シティ・フィルは コロナ禍の影響で、結び付きの強い合唱団「東京シティ・フィル・コーア」との共演が叶わないため「第九公演を中止する」としています

記事の中にある「11月初旬に来日したウィーン・フィルが(2週間の)隔離を免除された」という事実は日本の音楽界にとって大きな希望だと思います 「音楽関係者の業界団体が近く、規制緩和に向けての要望書を政府に提出する予定」とのことなので、動向を注視すると同時に、政府には 総合的・俯瞰的な見地 から是非 隔離免除措置の対象範囲を拡大してほしいと思います

ということで、わが家に来てから今日で2255日目を迎え、トランプ米大統領は12月1日、ホワイトハウスで開催されたクリスマスパーティーの会場で、今年の選挙結果を覆すための彼の努力が失敗した場合、「4年後に戻ってくるだろう」と発言し、これまでで最も明確な2024年の大統領選への再出馬に向けた意思表明を行った  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     その前に セクハラや納税問題など 多くの訴訟を解決しなければ 誰も相手にしない

 

  昨夕は、娘が「ど~しても 銀だこ のたこ焼きが食べたい」と言うし、私もコンサートがあるので、夕食作りはお休みにしました  

 

         

 

昨夕、サントリーホール「ブルーローズ」で「第3回  哀しみのモーツアルト」を聴きました プログラムはモーツアルト①ピアノ・ソナタ第14番ハ短調K.457、②歌劇「ポント王ミトリダーテ」K.87より3曲、③ピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491、④レクイエム  ニ短調K.626 より「イントロイトゥス」から「ラクリモサ」まで 演奏は①と③のピアノ独奏=横山幸雄、②のソプラノ独奏=小林沙羅、②③④の弦楽四重奏=チェ・ムンス(Vn)、ビルマン聡平(同)、篠崎友美(Va)、植木昭雄(Vc)、④のソプラノ独唱=稲村麻衣子、アルト独唱=野間愛、テノール独唱=金沢青児、バス独唱=押見春喜、エレクトーン=清水のりこ、指揮=初谷敬史。お話=三枝成彰です

 

     

 

自席は13列5番、左ブロック右から2つ目です。会場は8割方埋まっているでしょうか コロナ禍の中でもモーツアルト好きは集まりますね

最初に作曲家・三枝茂彰氏からこのコンサートの趣旨について「本来は12月5日のモーツアルトの命日に合わせて開催したいのだが、会場が取れなかった この公演では、モーツアルトの全作品の4.8%しかない短調の作品の中から数曲を聴いていただく ヨーロッパのキリスト教社会では、人の心を動かす短調は”いけない音楽”と考えられていた。だから短調の曲は少なかった」旨の説明があり、演奏に入りました

1曲目は「ピアノ・ソナタ 第14番 ハ短調 K.457」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が28歳の時=1784年に作曲、「幻想曲K.475 」とともにウィーンで出版されました 第1楽章「モルト・アレグロ(ハ短調)」、第2楽章「アダージョ(変ホ長調)」、第3楽章「アレグロ・アッサイ(ハ短調)」の3楽章から成ります

横山幸雄は強弱を明白につけ、快速テンポで演奏を進めました モーツアルトの光と影を聴いたように思います

次の曲は「歌劇『ポント王ミトリダーテ』K.87」からアリア3曲(岩井美貴・編)です この歌劇は1770年(モーツアルト14歳)9月末から12月までかけて作曲した3幕もののオペラ・セリアで、同年12月にミラノの大公営宮廷劇場で初演されました 物語は紀元前3世紀のアナトリア地方(現在のトルコの一部)の独立国ポント 攻め寄る強大なローマ帝国に戦いを挑んだ王ミトリダーテと2人の息子たち、そして彼らを取り巻く女性たちが織り成す愛と裏切りが描かれています 歌われるのは①第1幕第4番・アスパージアのアリア「心は悲しみにふるえています」(嬰へ短調)、②第2幕第14番・アスパージアのアリア「耐え難い苦痛の中で」(ホ長調~嬰へ短調)、③第3幕第22番・シーファレのアリア「情け容赦ない運命が苛酷に」(ハ短調)です

小林沙羅が黒地に紅いバラを配した鮮やかな衣装で登場、チェ・ムンス率いる新日本フィルメンバーによる四重奏団のバックでアリアを歌います 3曲とも超絶技巧を要する難曲で、とても14歳の少年が作曲したとは思えないインパクトのある作品です 小林沙羅は力強いコロラトゥーラ・ソプラノで難曲を歌い上げ、会場を圧倒しました 先日観た「フィガロの結婚~庭師は見た」で「スザ女」を歌った同じ歌手とは思えない変貌ぶりです 小林沙羅の底力を見せられたような気がしました

 

     

 

休憩後の1曲目は「ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 K.491」(岩井美貴・編)です この曲は1786年(モーツアルト30歳)に作曲されましたが、「ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466 」と並び、モーツアルトが残した2つの短調のピアノ協奏曲の1曲です 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「ラルゲット」、第3楽章「アレグレット」の3楽章から成ります

チェ・ムンス率いる弦楽四重奏団のバックで、横山幸雄が演奏に入ります オーケストラではなく弦楽四重奏によるサポートなので、音の厚みには欠けますが、楽器が少ないことが幸いし、透明感が増します モーツアルトの時代には少人数による演奏だったと思われるので、当時の演奏スタイルに近いのではないかと思いました 演奏を聴いていて「おやっ」と思ったのは第1楽章のカデンツァです 今まで聴いたことのないダイナミックな曲想で、どちらかと言えばベートーヴェン的です 演奏後、三枝氏の説明によると横山氏自身が作ったそうです モーツアルトの時代には演奏者が自由に(即興的に)弾いていたので、許される演奏法です

最後の曲は「レクイエム  ニ短調 K.626」から「ラクリモーサ」までです この曲はモーツアルト最晩年の1791年に作曲されたものの未完に終わり、弟子のジュスマイヤーが完成させました

演奏するのはソプラノ独唱=稲村麻衣子、アルト独唱=野間愛、テノール独唱=金沢青児、バス独唱=押見春喜、弦楽四重奏=チェ・ムンス他、エレクトーン=清水のりこ、指揮=初谷敬史で、指揮者を含めてたった10人という小型編成です しかし、実際に演奏を聴いてみるとビックリです 独唱者の4人は40人の合唱団に匹敵するほど迫力ある歌唱力で会場を圧倒しました さらに、エレクトーンが侮れない存在でした これまで私はピアノと比べてエレクトーンなんて・・・と小馬鹿にしていましたが、この日の演奏を聴いて考えを改めました 1台のエレクトーンで、金管楽器を、木管楽器を、パイプオルガンを、ティンパニを、ほとんどすべての楽器の音を再現して見せます この「レクイエム」ではエレクトーンによるティンパニの音が一番印象に残り、感動さえ覚えました

大きな拍手の中、カーテンコールが繰り返されましたが、文字通り少数精鋭の演奏者による素晴らしい演奏でした

なお、当日配布されたプログラム冊子が比類のないほど充実していて驚きます 「曲目解説」は当たり前で、日本モーツアルト協会会員・小澤純一氏による「モーツアルト 短調作品一覧(全48曲)」、「モーツアルト 長調作品における短調楽章一覧(計29楽章)」、「モーツアルト・オペラにおける『ソプラノの短調アリア』一覧」、「モーツアルトの死因」が充実しています よくぞここまで調べた、と驚くしかありません。ほんの一例を挙げれば、オペラ「ドン・ジョバンニ」「コジ・ファン・トゥッテ」「皇帝ティトゥスの慈悲」には短調のアリアは1曲もありません ちっとも知りませんでした

また、三枝成彰氏による「長調と短調に隠された秘密」は、簡単明瞭に長調と短調の違いが語られており、とても参考になります 三枝氏は書きます

「長調に対してヨーロッパ人は光のイメージを持ち、短調に対しては闇や翳りのイメージを持っていた 音に対しても、同様である。いにしえのヨーロッパ人たちは『神がもたらす調和』を第一義に考えた。長調は英語ではメジャー・コードと呼び、短調はマイナー・コードと呼ばれる。メジャーに対するマイナーである。つまりヨーロッパ人に言わせれば、マイナー・コードは少数派であり、非正当であり、光に対する影であり、神のもたらす調和に対して、悪魔のもたらす調和に乱れであったということなのだ フランス革命以降、作曲家が惹きつけられたのは、それまで少数派で非正当で翳りである短調の音楽だった ロマン派の音楽の登場は、中世まで、人々に常に意識されていた『闇』が、新しい形で復権を遂げたものであるとも言えるだろう

その上で、自ら調査した「名作曲家の交響曲における長調・短調の割合」を紹介します それによると、モーツアルトの全作品における短調の割合は4.4%、ベートーヴェンは22%、ブルックナーは64%、ブラームスは50%、チャイコフスキーは83%、マーラーは50%、ラフマニノフは100%、ショスタコーヴィチは67%となっています 三枝氏は、この結果から「不安な時代に求められるのは短調の音楽なのかもしれないと思った」と書いています

明日12月5日はモーツァルトの命日(1791年没)です。モーツアルトを聴いてみませんか

 

     

 

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