人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

阪田知樹「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 全曲演奏会」を聴く ~ 大井剛史 ✕ 東京フィルのバックで「ピアノ協奏曲第1番~第4番」 & 「パガニーニの主題による狂詩曲」

2023年09月18日 00時02分06秒 | 日記

18日(月)。わが家に来てから今日で3170日目を迎え、中国海軍の測量艦1隻が15日、鹿児島県周辺の接続水域から日本の領海に侵入したが、侵入は2021年11月以降相次いでおり、今回で9回目となる  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     習近平政権のモットーは 自国の領海は中国のもの 他国の領海も中国のものだからな

 

         

 

昨日、サントリーホールで阪田知樹「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 全曲演奏会」を聴きました プログラムは①ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第1番 嬰へ短調 作品1」、②同「同第2番 ハ短調 作品18」、③同「同 第4番 ト短調 作品40」、④同「パガニーニの主題による狂詩曲 作品43」、⑤同「ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 作品30」です

セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)は最初ペテルブルク音楽院に入学しましたが、従兄でリストの高弟の一人、A.ジロティの勧めでモスクワ音楽院に転じ、N.ズヴェレフとジロティからピアノを、タネーエフやアレンスキーから作曲を学びました チャイコフスキーの影響を強く受けたモスクワ楽派の様式を守り、ピアノ曲を中心にしたあらゆる分野の作品を残しました ロシア革命でスイスに亡命、その後はもっぱらピアノ・ヴィルトゥオーソとしてヨーロッパ、アメリカで活躍しました(以上、三省堂「クラシック音楽作品名辞典」より)。

ソリストの阪田知樹は2016年フランツ・リスト国際ピアノコンクール(ブタペスト)第1位、6つの特別賞を受賞。2021年にはエリザベート王妃国際音楽コンクールピアノ部門で第4位入賞。パウル・パドゥラ=スコダ氏に10年間師事。東京藝大を経て、ハノーファー音楽演劇大学で学士、修士首席修了、現在同大学院ソリスト課程に在籍

 

     

 

私がラフマニノフの「ピアノ協奏曲 全曲演奏会」を聴くのは2度目です 1度目は2011年8月6日にサントリーホールで開かれた清水和音のピアノ独奏、高関健指揮東京交響楽団によるコンサートでした

予想通りと言うか、この日は多くの女性客が殺到しました 在京オケの定期演奏会とは雰囲気が全く違います

腰痛防止用腰ベルト着用で座った自席は1階13列12番、左ブロック右から4つ目です 会場はかなり埋まっている模様です

拍手の中、オケのメンバーが配置に着きます 弦楽器は12型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの東京フィルの並び。コンマスは三浦章宏です

1曲目は「ピアノ協奏曲第1番 嬰へ短調 作品1」です この曲はラフマニノフがモスクワ音楽院の学生だった1890年から翌91年にかけて、同音楽院の卒業試験のために作曲、1892年にモスクワで初演されました ラフマニノフはこの曲の前に20曲の作品を作曲していましたが、作品番号をつけず、このコンチェルトに「作品1」を付けたほどの自信作でした しかし彼はそれに満足できず1917年に全面的に改訂しました 昨今のコンサートで演奏されるのはその改訂版によるものです 第1楽章「ヴィヴァーチェ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります

大井の指揮で第1楽章がファンファーレで開始されます この楽章では阪田の情熱的なカデンツァが見事でした 第2楽章では弱音によるピアノ独奏が印象的です そして第2楽章から第3楽章への「静」から「動」への切り替えが鮮やかでした 若きラフマニノフの意欲が伝わってくるような素晴らしい演奏でした

2曲目は「ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18」です この曲はラフマニノフが28歳の時、1900年から翌01年にかけて作曲、1901年に初演されました 彼はこの曲を作曲する前、第1交響曲の不評が原因で強度のノイローゼになっていましたが、この曲はノイローゼから立ち直った彼が最初に作曲した作品で、作曲家としてのラフマニノフの名を世界に知らしめる最初の成功作となりました 第1楽章「モデラート」、第2楽章「アダージョ・ソステヌート」、第3楽章「アレグロ・スケルツァンド」の3楽章から成ります

阪田のピアノ独奏により教会の鐘を模した和音が静かに、そして徐々に力強く会場に響き渡ります 次いでオケが加わり情熱的な音楽が展開します ロマンティシズムの極致をいく演奏とはこういう演奏を言うのでしょう 第2楽章ではアレッサンドロ・ベヴェラリのクラリネットが良く歌い、ソリストに華を添えます フルート、ファゴットも素晴らしい 第3楽章では、力強いピアノとオケとによりスケールの大きな演奏が繰り広げられ、ラフマニノフらしい追い込むような音楽で曲を閉じました

1回目の休憩時間(20分)には、「若手男性ピアニスト公演における女性トイレ長蛇の列の法則」が適用されました

 

     

 

3曲目は「ピアノ協奏曲第4番 ト短調 作品40」です この曲はラフマニノフがロシア革命を逃れてアメリカに亡命した後の1926年に作曲、1927年3月にレオポルト・ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団により初演されました 第1楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」、第2楽章「ラルゴ」、第3楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります

大井の指揮で第1楽章に入りますが、第2番を聴いた後では、冒頭の音楽を聴く限り、何となく気の抜けたような印象を受けます しかし、阪田はそうしたことを払拭するかのような情熱的な演奏を展開します 第2楽章はノクターン風の美しいメロディーで阪田の弱音が美しく響きます 第3楽章に入ると一転、切れ味鋭い阪田のソロによりアグレッシブな演奏が展開します 高橋臣宣の素晴らしいホルンが華を添えます。ピアノ協奏曲の中で目立たない位置にある第4番に光を当てた素晴らしい演奏でした

4曲目は「パガニーニの主題による狂詩曲 作品43」です この曲は1934に作曲、同年ボルティモアで初演されました 「主題」はパガニーニの「無伴奏ヴァイオリンのためのカプリース」の第24番から採られています この作品は序奏と第1変奏から第24変奏までの曲から成ります なお、第7、第10、第24変奏では、ベルリオーズの「幻想交響曲」でも採用された「怒りの日」のメロディーが登場します

大井の指揮で演奏に入りますが、阪田による「変奏」に応じた変幻自在の演奏に舌を巻きます 一番有名な「第18変奏」一つとっても、理知的なアプローチにより抑制の効いたノーブルな演奏を展開しました 完璧と言ってもよい素晴らしい演奏でした

ここで2回目の休憩(10分間)に入ります 相変わらず女性トイレには例の法則が適用されていました

 

     

 

最後の曲は「ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 作品30」です この曲は1907年から09年にかけて作曲、1909年にニューヨークでラフマニノフ自身のピアノにより初演されました 彼はアメリカで演奏旅行を行い、マーラーの指揮で独奏しています 第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」、第2楽章「間奏曲:アダージョ」、第3楽章「フィナーレ:アラ・ブレーヴェ」の3楽章から成ります 

大井の指揮で第1楽章が開始されます。淡々と独奏ピアノが奏でられますが、徐々に情熱を帯びていきます。阪田はロマン溢れる演奏を展開します 第2楽章ではオーボエやホルンがソリストの抒情的で美しい演奏に華を添えます 第3楽章に入ると一転、力強い音楽が超絶技巧のピアノ独奏によって繰り広げられ、オケとの丁々発止のやり取りで圧倒的なフィナーレを飾ります

演奏が終わるや否や、会場から「ウォー」という会場を揺るがすかのような声援が起こり、盛大な拍手とブラボーとともに会場総立ちとでも言いたくなるようなスタンディングオベーションが起こりました おそらく聴衆の3分の2以上の老若男女が立ち上って拍手を送ったのではないかと思われます これほどのスタオベはここ数年見たことがありません

全曲を通して、大井剛史 ✕ 東京フィルはしっかりとソリストを支え、立派な演奏を展開したことは特筆に値します

今回、阪田知樹がラフマニノフの「ピアノ協奏曲 全曲演奏会」にチャレンジし、終始 暗譜で演奏し切り 偉業を達成したことは、彼の音楽人生に大きな足跡を残したことになります われわれ聴衆は、その場で演奏を聴いた”証人”として、この日のことは忘れないでしょう

これまでも何度か当ブログで書きましたが、若手ピアニストの中で一押しは阪田知樹です この日の演奏を聴いて増々その感を強くしました


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2 コメント

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Unknown (むしめ金)
2023-09-21 10:19:34
はじめまして。素敵なブログ拝見しました。ラフマニノフのピアノ協奏曲講座のようで、ためになります。ありがとうございます。同じ演奏会聴きました。耐久レースのようでしたが、聴いてみればあっという間でした。良い演奏家がいっぱいいて嬉しいですね。
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コメントありがとうございました。 (tora)
2023-09-21 13:24:27
むしめ金さん コメントありがとうございました。

コンサートのブログは、会場に居ない人にも分かるように、雰囲気を伝えることを心がけています。

最近は若手、特に男性ピアニストの台頭が目覚ましく、良いことだと思っています。このブログはX(旧ツイッター)にもアップしていますが、阪田さんご本人からも「いいね!」をいただきました。

これからも気軽にコメントいただけると嬉しいです
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