人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

パーヴォ・ヤルヴィ+N響でマーラー「千人の交響曲」を聴く/藝大モーニングコンサートを聴く

2016年09月09日 07時59分17秒 | 日記

9日(金).わが家に来てから712日目を迎え,リオ・パラリンピックの開会式が始まったのを喜ぶモコタロです

 

          

           パラリンピックでもメダルを取ったら リオ・ブラボーと叫ぶよ!

 

  閑話休題  

 

昨日,午前11時から上野の東京藝大奏楽堂で藝大モーニングコンサートを聴きました プログラムは,前半が修士課程3年の高橋慧一君のバリトン独唱によるマーラーの歌曲集「さすらう若人の歌」,後半が大学3年在学中の桑原志織さんによるラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番ニ短調」です バックを務めるのは梅田俊明指揮藝大フィルハーモニアです

入場はチケット記載の受付番号順で,全自由席です.私の番号は287番です 開場時間の10時半を5分ほど過ぎたところで会場に着いたら,ちょうど280番までの人が入場していました.ピアニストの指使いを観たい人が多いせいか,会場は左サイドの席から順番に埋まっています 私は12列24番,センターブロック右通路側席を確保しました.会場は最終的には8割以上埋まった感じです

オケがスタンバイします.バリトンの高田慧一君が相当緊張した面持ちでステージに登場,指揮者,コンミスと握手します 「こんなにアガっていて大丈夫かいな」と思うほどカチカチになっていましたが,第1曲目「彼女の婚礼の日」の演奏に入ると,すんなり声が出て来たので聴いている方も安心しました

マーラー「さすらう若人の歌」は①彼女の婚礼の日,②朝の野原を歩くと,③燃え盛る短剣を心に持ち,④彼女は二つの青い眼がーの4曲から構成されています マーラー自身の体験をもとに詩を付けたと言われていますが,②「朝の野原を歩くと」のメロディーは交響曲第1番第1楽章に転用されています

和歌山県出身の高田慧一は山田和樹指揮によるメンデルスゾーン「聖パウロ」で歌うなどソリストとして活躍しているとのことです この曲は,曲想からバリトンにはキーが高く,本人にとっては一つの挑戦だったと思います 私は「彼女の婚礼の日」が一番良かったと思いますが,全体的に今一つ歌に深みが出ると より良いと思いました

 

          

 

プログラム後半は1995年東京生まれの桑原志織によるラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番ニ短調」です 2014年第83回日本音楽コンクール第2位,2016年第62回マリア・カナルス・バルセロナ国際音楽コンクール第2位を受賞している実力者です

この曲はラフマニノフの書いたピアノ協奏曲のうち亡命前にロシアで書かれた最後の曲です 初演は1909年秋,ニューヨーク・カーネギーホールで彼自身により挙行されました この曲を世界的に有名にしたのは天下の大ピアニスト,ウラディミール・ホロヴィッツです 第2番のコンチェルトは一度も取り上げなかったのに,第3番は「私の曲」と呼んで愛奏したといいます

桑原志織が明るいブルーのドレスで登場,スタインウェイに向かいます この曲は第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」,第2楽章「インテルメッツォ:アダージョ」,第3楽章「フィナーレ:アラ・ブレーヴ」から成りますが,桑原の演奏は全体を通して,パワー溢れる力強い演奏で,説得力があります 彼女は藝大で伊藤恵に師事しているとのことですが,分かるような気がします とくに第1楽章中盤におけるカデンツァは鮮やかでした

最後の音が鳴り終わるや否や,会場のそこかしこからブラボーがかかり,大きな拍手が送られました.将来が楽しみなピアニストです

         

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日午後7時からNHKホールでN響90周年記念演奏会「マーラー:交響曲第8番『一千人の交響曲』」を聴きました 出演は,ソプラノ=エリン・ウォール,アンジェラ・ミード,クラウディア・ボイル,アルト=カタリーナ・ダライマン,アンネリー・ペーボ,テノール=ミヒャエル・シャーデ,バリトン=ミヒャエル・ナジ,バス=アイン・アンガ-,合唱=新国立劇場合唱団,栗友会,児童合唱=NHK東京児童合唱団,パーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団です

 

          

 

ヤルヴィ人気でしょう.3600人収容のNHKホールは満席です 自席は2階C11列14番,センターブロック左通路側です.まず男声合唱がステージ奥にスタンバイします.その手前に女声合唱が,そしてその手前に女声合唱の一部が児童合唱を左右から挟む形でスタンバイします その後,オケのメンバーが配置に着きます.弦楽器は低弦を左にして,ヴァイオリン・セクションが左右に分かれる対向配置をとります コンマスはマロこと篠崎史紀です.大きな拍手の中,ソリストたちとヤルヴィが入場しスタンバイします

この曲は第1部:賛歌「来たれ,創造主である聖霊よ」と第2部:「ファウスト」の終幕の場 から構成されています 第1部の賛歌は,マインツの大司教だったラバヌス・マウルスの作とされてきたラテン語による聖歌ですが,マーラーはテキストを自由に変更しています 第2部は言うまでもなくなくゲーテの「ファウスト」の最終場面をテキストにしています

この曲は1906年の夏には完成しましたが,初演は4年後の1910年9月12日を待たねばなりませんでした ミュンヘンの興行主エミール・グートマンは,大規模なこの作品を『ミュンヘン博覧会1910』の一環として企画し『一千人の交響曲』というキャッチフレーズを付けて宣伝しました 初演のプログラム冊子によると,弦楽器は第1ヴァイオリン24,第2ヴァイオリン20,ヴィオラ16,チェロ14,コントラバス12の計86名で,児童合唱350名,2つの合唱団合計で500名という大人数がミュンヘン博覧会の舞台に乗ったということです

目の前のフル・オーケストラと合唱団を見渡すと,壮観です

 

          

 

ヤルヴィの指揮で,第1部の賛歌「来たれ,創造主である聖霊よ」が,オルガンと低音の木管と弦楽器,混声合唱グループによって力強く歌われます この冒頭部分は衝撃的です それ以降,合唱とソリスト陣によって神を讃える歌が歌い継がれていく訳ですが,約30分間,最初のハイテンションを維持して音楽が流れます マーラーは,とんでもない音楽を作ったものです 1906年8月18日にマーラーは指揮者メンゲルベルクに手紙を送っていますが,彼はその中で,

「ちょうど『第8番』を書き終えたところです.これは今まで私が作曲した中でもっとも大きな作品です 内容も形式も比類なきものなので,言葉で書き表すことができません・・・・思い浮かべてください,宇宙が響き,鳴り始めるさまを それはもはや人間の声ではなく,公転する惑星や太陽の声なのです

と書いています 私がマーラーの交響曲を聴くと感じる「宇宙的な広がり」はこういうことろから来ているのだと思います

終始ハイテンションな第1部が終わり,しばし”しじま”が訪れた時,2階か3階の右サイドの席からリリリーンというケータイの着信音が聞こえてきました あの大きさはステージ上のヤルヴィやオケの面々にも届いたのではないかと危惧します すぐに止んだものの,とても信じられない思いがしました.N響90周年記念特別演奏会を聴きにくる人が,演奏時間内にケータイの着信音を鳴らすなど誰も予想できないでしょう N響をはじめ在京オケの定期演奏会では”あり得ない”出来事です.今回は特別演奏会ということで,普段コンサートを聴く慣習が無い人も多数混じっているのでしょうが,生で演奏を聴く場合,どこの会場でもケータイの電源を切るのは10年以上前から常識なのです さらに付け加えると「マナーモードならいいだろう」もダメです.演奏中の「ブ―ブ―」という音は良く響きます.絶対に電源を切らなければいけません

 

          

 

第2部「『ファウスト』の終幕の場」の演奏に入ります まず管弦楽だけで,山峡,森,岩場,荒れ地の場面が静かに演奏されます.ここではオーボエやフルートの木管楽器が郷愁を誘うメロディーを奏でます そして,再びソリスト陣や合唱の出番がやってきます.終盤で,栄光の聖母が歌いますが,ステージ右上方のパイプオルガン席の傍らにソプラノ歌手が登場して,「お出なさい!より高い天空へお昇りなさい!あなたを感じたら,その人もつき従っていきます」と栄光の聖母の歌を歌います そして,2階席右ブロックにスタンバイしたブラスのメンバーを交えて,「神秘の合唱」が大管弦楽の伴奏により混声合唱で歌われ,感動的なフィナーレを閉じます

ヤルヴィがタクトを下ろすと,一瞬の間を置いて,会場いっぱいの拍手とブラボーが舞台に押し寄せました 106年前の初演の興行主エミール・グートマン同様,現代の興行主も舞台裏でほくそえんでいたことでしょう

歌手陣は全員が好調でした N響の熱演は言うまでもありません ステージ上の多くのアーティストたちを統率するヤルヴィは頼もしく見えます

どうでもいいことですが,ヤルヴィが指揮している姿を見ていると,ロシアのプーチン大統領によく似ていると思えてきて困ってしまいました 「4島とは言わないから2島返還してちょ!」と叫びたくなるのを,ジッとこらえました 

コンサートの帰りは代々木公園側に出て,原宿駅まで歩きましたが,公園の広場で「ポケモンGO」をやっているらしき若者たちがたむろしていました こちらはNHK交響楽団を聴きに行った訳ですが,彼らはNHK(日常的にヒマな気まぐれ集団)の活動をしていたわけですね

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